橋ガール

見出し

#06 Nhat Tan 橋

橋をつくり続ける会社の橋好き女子、その名も「橋ガール」! 「橋好き女子」が勝手に橋の魅力を紹介しちゃうプチプロジェクト。 『お橋見』のためなら日本全国、いや世界の果てまでいってきまーす!

前回に引き続き、ベトナムハノイ市。とある場所で取材を続ける2人。

「ひょえ~~~、ちょっと待ってぇ・・・(泣)」

「センパーイ!もしかしてビビッてたりしませんか~!!」

「だってこれ、ビビるに決まってるっしょ。『橋好き』だって怖いもんは怖いっつう話よ。ここまでは必至に登って何とか辿りついたけど、冷静に回りを見たらとんでもなく怖いじゃない・・・」

「ふぅー、ようやく着きました!」

「怖すぎるけど、お約束のヤツいくよ!せーのっ」

パイローン!

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ここはハノイ市内を流れるRed Riverに架かるニャッタン橋パイロン(主塔)のてっぺん。
地上高さ約110メートル、なんとかたどり着いた二人は「橋ガール」お約束のキメポーズ。
いつも元気な二人でもこの時ばかりは若干のヘッピリ腰・・・
初めての海外取材で初めて挑戦する施工現場取材。
果たして二人はこの試練をどう乗り切るのか!!

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橋の概要

名称
Nhat Tan 橋(ニャッタン橋)
位置
ベトナム社会主義共和国 ハノイ市

<ニャッタン橋(日越友好橋)パッケージ1>(主橋部)

橋長
1500m(150m+4@300m+ 150m)
上部工
6径間連続合成2主I桁斜張橋

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<ニャッタン橋(日越友好橋)パッケージ2>

橋長
675m (39m+40m+39m+79m+120m+79m+47.5m+3@60m+47.5m)
上部工
3径間連続PC箱桁橋+3径間連続PC2室箱桁橋+5径間連続PC箱桁橋

 

ニヤッタン橋 パッケージ1、パッケージ2を含む全体完成予想図Nhattan_07_overview (640x360)

MAP

 

「何だか私達、「スー●ーヒトシ君」みたいですね!!首を揺らしちゃったりして。」

「かもね。ちゃんとキマッてるかなぁ・・・。」

「作業着もヘルメットも初めて!!何もかもが初めてづくしですからね!」

「それにしてもこんな格好して何気なく来ちゃってるんだけどさ、改めて見ると・・・」

スケール でかっ!!

「川幅も恐ろしく広いし、こりゃ海と言っても過言じゃないですよね?」

「まぁそれは大げさかもしんないけどさ、川幅は1,200mくらいあるらしいから、日本の川に比べたら相当大きいよね。小学校のプールなら20往復以上ってことでしょ。果たして泳いで渡りきれるかどうか・・・」

「いや、いまその心配はいらないんじゃ・・・(しかもなんで小学校?)」

「ちなみにね、この川は水位が高いときと低いときの差が8mもあって、流れの速さが大きく変化するんだって。そんな川は日本にはないし、橋脚を施工するのは相当大変なことだったんだろうね。」

「8mの差って、確か前回のNga Tue So 高架橋の橋桁の位置がそんなもんだったような・・・、やっぱり大きいですね」

「ちなみに、このニャッタン橋は、そのとき話題になったハノイの2大プロジェクトの1つ。ハノイの中心部とノイバイ空港の移動時間が大幅に短くなるっていうことで、とっても期待されている日本のODA(政府開発援助)によるプロジェクトなのよ。」

「なるほどーODA、海外の土木プロジェクトではよく耳にしますね。ニャッタン橋は、その中でも目玉プロジェクトってことですね。確かに目立ってるし、形もキレイだし、何と言ってもこの橋が開通したら渋滞がなくなって便利になるんだから、皆さんお待ちかねの注目橋でしょうね。」

「このプロジェクトのスケールのデカさはほかにもあって、工事に関わっている人達の国籍は多種多様なのよ。ちなみに、大体何カ国の人達がかかわっていると思う?」

「そうですねー。ベトナム周辺の国々から4、5カ国くらいかな?」

「ハズレー!正解はその倍以上、9カ国!国際的なビックプロジェクトって感じでしょ。ベトナム、マレーシア、インドネシア、タイ、バングラディシュ、フィリピン、シンガポール、スペイン、そしてジャパーン。ここでは5本のパイロンを建設してるけど、一本仕上げてはそのノウハウを次のパイロンに生かすって具合に、各国の職員、職人の方々がそれぞれの経験や技術、コミュニケーションを駆使してここまで形にしてきたんだよ。実に、amazing!!

「各国の人達が一丸となって作り上げる力の結晶ですね。東京の事務所にいるとなかなか肌では感じられないグローバル感ですよね。」

「そうだね。日本国内の工事とは違う苦労を、現場の皆さんはたくさん体験されているみたい。なにしろ言葉と文化は、それぞれの国で大きく違うから。ちなみに、このプロジェクトの公用語は一応英語なんだそうだけど。」

「それにしても、こんな高いところで、身じろぎもせずに、仕事をチャキチャキこなす皆さんはカッコイイですね、そう思いませんか?」

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「偉すぎよ。この高さじゃいつも危険と隣あわせ、私なんか下を見ただけで足がすくんで何もできないよ。ここにいる皆さんの命掛けの作業で、ようやくここまで形になってきたのかと思うとジーンとくる。」

「そうそう、だから現場では作業員の皆さんと慰労パーティーなんかも企画してたりするんですって。この写真を見てください!豚の丸焼き!!美味しそうでしょ。

『モッハイバー(1・2・3)!!』

って乾杯したりして、かなり盛り上がるみたいですよ。」

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「うわぁ、美味しそう!!こんな風に色んな国の人達が集まってワイワイやるのって楽しそう。私も加わりたかったなぁ・・・」

「そうですよね、センパイ。(きっと違和感なく溶け込んでただろうなぁ)」

「え、なんか言った?」

「あ、いえ、なにも・・・ということで、それそろ隣のパイロンに移動してみましょうか。」

「そうね、あと4本もあるからね」

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モーターボートに乗って、次のパイロンへ向かう二人。

「こんなのに乗って移動するなんてイカス!!なんか007 ジェームス・ボ●ド的な。橋脚の真下を通れるなんて思ってなかったー。」

「何となくセンパイの言いたいことはわかります。『できる男』になった気分ですよね?」

「そう、わかってるじゃない・・・あれ?そうこうしてる間に天気が一気に悪くなってきちゃったみたいね。そういえばルナちゃんは聞いてる?ハノイの雷ってそりゃあ恐ろしいって。」

「雷ですか?そもそも普通に苦手なんですけど・・・」

「ここのは特にすごいらしいんだけど、この巨大パイロンの場合はね、頂上に鉄筋が立ち並んでるでしょ。それが雷を受けとめる避雷針の役割をしちゃうんだって。だから雷が鳴ったら皆一斉に避難するのがここでの大事なルールなんだって。これだけ大きなパイロンだと、落ちる雷のパワーも半端じゃなさそうだよね。」

「うわぁ、いまからもう怖すぎです。なんか帰りたくなってきちゃいました。でも、これだけ大きなモノだと、ほかにも普通じゃありえないようなこと考えて管理しなくちゃいけないんでしょうね。自然の力には勝てないですから。」

「聞くところによると、一番過酷な季節では温度40度以上、湿度は98%以上にもなるらしいからね。ほっといたら蒸し焼きになっちゃうみたいな。」

「やっぱり現場って大変だなぁ。ところで、ずっと気になっていたのですが、工事のことでひとつ質問させてもらってもいいですか?」

「今日は工事担当の現場のみなさんがお揃いだから、ハカセがいなくてもいろいろお話し聞けるんじゃない?いいですよね、ヤマジ所長?」

「もちろんいいですよ。遠慮なくどうぞ、ルナちゃん。」

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「じゃあお言葉に甘えて・・・あの・・・こんな川のど真ん中、しかも水の中に橋脚を立てるって、いったいどうやってるんですか?『モーゼの十戒』みたいに水がばあーっと水面が避けてくれたら簡単に施工できるんでしょうけど・・・」

「なるほど、いい質問だね。それじゃ、この橋の基礎工事について説明しましょう。この橋は、主塔の足元を 「鋼管矢板基礎」 という基礎で支えています。この基礎は、直径が1,200mmの鋼管矢板という筒状のものを連続で地盤に打ち込んで(写真左)大きな小判型の基礎形状壁を作り(写真右)、全部打ち終わったら鋼管の内側と、その壁の継ぎ手部分をコンクリートやモルタルで中詰めしていく工法で造っています。」

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「これで周りがしっかり囲まれたら、小判型の囲い壁の内側にコンクリートを打設して水を遮る「底版」をつくるんです。このとき中には水が残ったままなんですが、トレミー管という漏斗みたいな管を使って比重の重いコンクリートを底のほうから流し込んで施工していきます。このコンクリートが固まったら小判型の枠の中の水を抜きだして基礎の上部になる「頂版」のコンクリートを打設します。どうです、ここまでの説明わかりました?」

「ええ、なんとなく。」

「この鋼管矢板基礎っていう構造は本発”の技術で、水を止める仮設壁と本体基礎が兼用できて工事費を抑えるのに有効なんです。それに軟弱な地盤でも基礎の大きさをコンパクトにできて省力化やスピード施工も可能になるということで、ベトナムでの施工は初めてなんだけどここで採用になったんですよ。」

「なるほどー。実は今まで私達が取材した橋は、水の中に橋脚を施工しているものが無かったんです。勉強になりました。」

「所長、せっかくなので『橋ガール』っぽく使えそうなネタをもうちょっとご披露してもらえませんか?例えば、この中に隠し扉があって秘密基地みたいになってるとか・・・」

「秘密基地って、そんな訳はないでしょ!うーん?『橋ガール』っぽいマニアックなネタねぇ・・・。あっ、こんなのはどうかな。実はね、水の中から見ないとわからないんだけど、パイロンの形状は下のほうから6角形でスタートして途中7角形に変化して、最後は5角形になってたりするんだよー。」

「へぇ、それは気が付きませんでしたね。なにか構造上必要だったりするんですか?」

「そういうことよりデザインに対するこだわりなんだろうね。施工するほうは、型枠に流し込むコンクリートをむら無く仕上げるのが大変だったんだけど、やっぱりこうしてみると美しい。」

「そういう誰にも気づかれないような部分に苦心するってどんな気持ちなんでしょう?」

「そうだなぁ。でも、無駄なことをしてるとは思わないし、誰に気づかれなくても、こんな風に話したことで誰かが少し気にして注目してくれたら面白いと思うし。説明なんかなくても「美しさ」だったり「力強さ」だったりはきっと見て感じてもらえると思うからね。」

「ニャッタン橋への愛が溢れてますね、所長!そう言えば、所長がニャッタン橋への想いを絵に表現されたって聞いたんですが、是非それ見せていただけませんか!!」

「えっ、恥ずかしいじゃないか!!」

「お願いしますよー!!見せて下さーい!」

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「わー、センパイの絵とは全然違って・・・」

「何よ??」

「素晴らしいー!!」

「何さ、私のじゃダメみたいな言い方!!

おい、ルナ!!
私はお前を絶対許さない!
10倍返しだっ!!

「出たー、何を10倍返しされるんですか?所長がびっくりして引いてるじゃないですか!」

10倍返しのイメージ(画:タノちゃん)Nhattan_18_tanoillust (640x414)

 

「あ、所長、冗談です、冗談。一度やってみたかったもので(そっか、日本のドラマ見てないか)。にしても所長の絵、本当素敵ですー。」

 

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「と、地上に戻ってきたわけだけど、今日はこれで「美味しいもの」取材にはいけないのよね。実はニャッタン橋ってこれで終わりじゃないって知ってた?」

「えっ、どういうことですか?」

「ほら、ここ。ニャッタン橋は、川の工区のほかに地上部分の仕事もかなりたくさんあるのよ。」

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「すごーい、支保工、足場が見事に並んでますね。これもまた日本じゃ考えられないスケール!」

「あ、キタガワ所長だ、お世話になりまーす!!」

「いらっしゃい、遠いところよく来てくれたね。作業服、結構似合ってるじゃない。」

「ありがとうございます。今日はよろしくお願いします!」

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「こちらの工区は、川のほうとはずいぶん様子が違ってるんですね。早速なんですが、こちらでは今どんなことをされているんですか?」

「いまこちらの工区では、地上に支保工を組んでコンクリートの橋桁を施工してるところなんだよ。上下線が同じ形なので、片側の施工が終わったら支保工をいっぺんに横移動させて、高いところの作業を軽減して工期も短縮させているんだ。川の工区は上に上にだけど、こちらは地上の広さ生かして横に横にかな。この支保工、実は日本製なんだよ!」

「力強い感じですよね。なにか南国ならではのご苦労ってあるんじゃないですか?」

「そうだね。日本と比べると、コンクリート工事なんかではかなり苦労してるかなぁ。ここでは生コンクリートの温度が32度を超えては使えないことになってるんだよね。そのために屋根付きの骨材置場で水をまいたり水タンクを冷水機で冷やしたり、それから氷塊を投入したりなんかして、色んな高温対策をしなければならないんだ。」

「なんかジェラート屋みたい?」

「南国ハノイは、冬の一時期を除いて一年の大半で気温が高いままだからね。だから、日中はコンクリート温度が基準を超えてしまうんで、コンクリート工事は夜間作業になってしまうんだよ。」

「常に気温と闘っているんですねー。」

 

Nhattan_24_verryhot (640x427)日中はとにかく暑い。

「そういえば、さっきフルーツをお供えしてたみたいですけど、あれってどんな意味があるんですか?」

「さすが、ルナちゃん。フルーツのことは見逃さないね。」

「ははは、こっちのフルーツはみんな美味しいからね。こちらの現場では、基礎杭工事を始めるときや掘削工事を始めるとき、最初にワーゲンを組み立てる初作業の時なんかに、地面にお供えをして、作業区域に線香を立てて囲ったりするんだ。日本でも酒、塩で清めることをするけど、工事の安全と無事を祈る気持ちは日本もベトナムも共通。そういえば、今日もそうだった。これはお供えフルーツのお裾分け。美味しいからどうぞ食べてください。」

「あ、ありがとうございます!じゃぁ、こちらの現場にいるといつもフルーツが食べられたりするんですか???」

「いやいや、さすがにそんな訳には・・・こちらでは毎月1日と15日は先祖を祭る習慣があるんですよ。それで事務所でもそれにならってお供え物をするっていう感じかな。」

「ルナちゃん、目が輝いてる!でも、食べに来ようと思ってもそうは簡単には来れないからね。」

「ですよねー、残念(泣」

「所長、いろいろありがとうございました。さて、いい写真いっぱい撮れたところで、そろそろこの橋の『ベスポジ』決まりそうかな・・・」

「センパイ、ここはあえて私に決めさせてもらえませんか。」

「お、なにかひらめいた?このダイナミックなスケールと異種文化の混ざり合った感じ伝わりそうかなー?」

今回のベストポジションはこんな感じNhattan_25_bestposition (640x427)

Nhattan_27_ending (640x427) 完成したら、また来ようね!

タノちゃんの絵日記

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2013年8月某日 行った場所:Nhat Tan 橋

 「 この美しさ 水中で必死に支えるものがあるからこそ!! 」

―つづく