橋ガール

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#08 御岳橋

橋をつくり続ける会社の橋好き女子、その名も「橋ガール」! 「橋好き女子」が勝手に橋の魅力を紹介しちゃうプチプロジェクト。 『お橋見』のためなら日本全国、いや世界の果てまでいってきまーす!

都内某所、ランチにて

「最近どうよ?」

「どうって・・・元気にやってますけどー。ってセンパイ、人の調子聞いてる場合じゃないですよ!!『青梅の橋』のこと、もう忘れちゃってるんじゃないんですか??」

「おぅ、そういえば行ったねー。山深い渓谷に架かる素敵な橋。ああ、あれは秋だったね~。そういえばどうなっちゃったんだろうか。」

「どうなっちゃったもこうなっちゃったも。センパイがとぼけてるから、もう秋どころか冬も終わって春になっちゃいましたよ!ちゃんと皆さんに『お橋見』報告しないとじゃないですか!!」

「だって私にはまだ春が来ていないし~。だからこんなにダラダラしちゃって・・・。」

「そうこうしているうちに『ベタ踏み坂』(江島大橋)はハカセひとり旅編になっちゃってるじゃないですか。このままだと『教えて!橋ハカセ』のコーナーになっちゃいますよ(泣」

「いかんいかん、そろそろ思い出しながら回想劇を綴っていかなきゃだね。」

「そういうとこですよ!センパイ。がんばりましょう!」

ということで、いつのまにかすっかり春休みモードになっていた橋ガール。気を取り直していつもの『お橋見』レポート、スタートです!

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橋の概要

名称
御岳橋
位置
東京都青梅市御岳本町
橋長
80.0m(アーチ支間57.0m)
形式
RC上路変形ローゼアーチ橋
工法
アーチセントル工法
竣工年
1971年

C C

MAP

それは10月、秋深まるとても晴れた日のこと

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「センパ~イ。ハイキング気分でやっほ~いやっほ~い♪おいしい空気、深く吸っちゃいましょうね」

「深く吸い込みましょー、この大地のエナジーを!ってさー。ノリノリの割には山ガールファッション、完全に間違えてない??!!私は自分の目を疑いましたよ!そのピアスといい。何だそのキュロット!!貴族か??ビックリしたわ。私たちは山に挑む革命児だよ!!敵は渓谷だよ。大自然だよ!ナマヌルイお嬢ちゃんは帰りな!!」

「こっわ~い。センパイ、いつからそんな山男みたいになったんですか?しかも、『革命』とか山に関係無いし・・・。そういうセンパイは、首にタオルなんか巻いて、山ガールって言うより、風呂上りのオ○サンって感じじゃないですか。おまけにテニスシューズとか、山をナメてるのはセンパイの方でしょう!」

「あーそこねー。他にスニーカー無かったんだよ!フンッ!この際格好のことは言うのはよそう!さぁ、レッツラゴーゴーゴウ!!」

「緊張感無ーい!!」

都心から電車を乗り継ぎ、青梅線「御嵩駅」を降りると、目と鼻の先に「その橋」はあります。大きな岩間を白波をたてて多摩川が流れる美しい御嶽渓谷に架けられた橋で、古くから山岳信仰の山として知られる御岳山(標高929m)への入口として、多くのハイカー、観光客が利用する場所にあります。

 

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風格のある造りの「御嶽駅」

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橋のたもとにある御嶽神社参道の石標

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御岳橋越しに御嶽駅を見る、御岳山上にある武蔵御岳神社への参道入り口にあたる

「おい、この景色、よくミタケよ!!!」

「出たー、オヤジギャグ!!巷じゃ『橋ガール』ってオヤジがやってるんじゃないかって噂されてるらしいですよ!もっとガール感出さないと・・・。それにしても今日はハイキングみたいで最高ですね!」

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橋のよく見える場所を探して御岳渓谷を進む二人。

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「ちょっと見て!!!44年前に施工したとは思えないくらいコンクリートがキレイだと思わない?真っ白だよ。」

「ホントですね。まわりの緑にも映えますね!」

「そうだなぁ、私達もこれくらい美肌を保ちたいね~。

「そ、そこですか。それにはまず日頃の『心がけ』から整えないとですね!!」

「心がけって・・・言ってくれるなー。気持ちだけなら自信があるんだけどなぁ。」

「はいはい、確かに気持ちではセンパイにはかないません。(気持ちだけじゃだめなんですけど・・・)」

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「本当にすてきな橋、なんだかージブリの主人公になった気分。皆さんにも、是非是非見に来て欲しい橋です!!センパイ、また来ましょうよ。」

「うん、また来たいね。青梅っていうくらいだから『梅』の季節なんかいいんじゃない?絶対来よう!お弁当持って。」

「ところでセンパイ、このキレイなアーチってどうやって施工したんですか?」

「なーにーぃ、ルナちゃん!何も勉強してこなかったりするわけ?」

「す、すみません・・・ちょっとこのところ仕事が立て込んでて~」

「じぁー何かい、わたしが暇しているとでも?私だっていろいろと忙しいんだから。ってことで、いつものように“となりのハカセ”呼んじゃう??」

「えー、結局センパイだって調べてないんじゃないですか!でも、もうそれしかありませんね!では・・・」

♪となりのハカセ、ハカセ ハカセ、ハカセ、森の中に昔から住んでる ♪

「どーもこんにちはー、ハカセです。森には住んでませんけどね。いつもガール達の傍に。そうです、私が“となりのハカセ”です。」

「こんにちは!!ハカセー」

「早速なんですが、小耳にはさんだところによると、この橋の施工には他ではめったに見られない“セントラル”を使ってたらしいじゃないですか?」

「お、タノちゃん、ちゃんと予習してきましたか?でも・・・セントラル??巨人式とか阪神式とか?って一応乗っておいたほうがいいでしょうか。でも違いますよ、“セントル”です。ほら、概要にある通り、正確には『アーチセントル工法』です。」

「もー、センパイ、にわか知識でハカセを困らせないで下さいよ!で、その『アーチセントル工法』って、私たち初めて出会う工法ですよね?」

「そうですね。今までの取材ではありませんでした。」

「そうだ、『橋ガール』にとってはアーチ橋だって初めてよね!!!じゃぁここに書いてある『RC上路変形ローゼアーチ』っていうのも、堂々と聞いていいですよね!」

「お二人とも。『本家・橋ガール』なんですから、そろそろちゃんと勉強してから来ていただかないと・・・。と言っても橋の世界は奥が深いですからね。では、いつものように解説させていただきましょう!」

「よろしくお願いしまーす!!」

「まず、RCは鉄筋コンクリートのことですよね。で、アーチは真ん中が高い弓なりの形で古代ローマの橋なんかでも、お馴染みの形ですよね。この形は、こんな風に(※イラスト参照)、荷重が主に圧縮力となって両端に伝わっていくんです。コンクリートは圧縮される力には強いけど、引っ張られる力に弱いというのを前に勉強しましたが、アーチ部分全体に圧縮力がはたらく構造なのでコンクリートの特徴が生かせる形式です。」

「そうですね。その辺までは・・・。で、この『上路変形ローゼ』って?」

「上路は路面がアーチに対して上にあるから、上路です。ちなみに、真ん中なら中路、下なら下路ですね。ローゼとあるのは、アーチ橋形式のひとつで、橋にかかる力をアーチ部分だけでなく、その上にある補剛桁と呼ばれる部分でも負担する形式のことです。」

 

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「なるほど、ひとことにアーチ橋と言ってもいろいろな形式があるんですねー。」

「じゃ、さっき言ってた架設工法の『アーチセントル』って?」

「これが当時の施工写真です。アーチセントルは、施工中の橋本体を支えるために組み立てたアーチ状の支保工(枠)のことです。左がセントルを組み立てている時の写真で、右は橋が完成してそのセントルを解体しているところです。」

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「なるほど。アーチの支えの上にアーチ作ってるんですね。そもそもアーチってみんなこういう作り方なんですか?」

「それがまた違うんです。アーチ橋の架設方法は、橋梁規模だけでなく、架橋する位置の地形や作業スペース、大きな建設機械などの使用などの架橋位置の条件に加え、さらに工期や安全性、経済性を考えて決定されるので、色々な方法 があるんですよ。セントル工法はアーチの支間が大体100m以下のものに用いられます。」

「へぇ、『アーチセントル』を使うのって、なんか特徴とかいいことあるんですか?」

「そうですね・・・まずこの橋みたいに川があって地面から直接支保工を立てられない時に役立ちますよね。それに、当時は同じような橋が他でも計画されていたらしく、このセントルを転用することで工費を削減できたようです。また、構造的にはセントル上で型枠にコンクリートを打設して、アーチ構造が完成されて完全に圧縮力だけになった後にセントルを外すので、補強のためのPC鋼材は不要になります。」

「あれ?逆にアーチ構造の場合でもPC鋼材入ることがあるんですか?」

「はい、前に紹介しているような『張出し施工』などで橋を架設する工法だったりすると、アーチが完成するまでは、アーチリブに引張の力もかかりますからPC鋼材が必要になったりします。」

「そうかぁ。アーチができるまでの施工期間の構造も考えなきゃいけないですものね。」

「なるほど、セントルさまさまやわ~」

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セントルさまさまやわ〜、の図(タノちゃんイメージ)

「セントルを組み立てたり解体してるところ見てみたかったですね。特に、本体ができあがってから、その重さを支えてるセントルを解体するのってなんだか難しそうじゃないですか?」

「そうよね。このセントルって重いコンクリートのアーチを支えたままでいて、最後うまく解体できるんですか?」

「さすが、橋ガール。するどいところ突いてきますね!橋本体のほうはコンクリートが固まればきれいなアーチが形成されてますから、セントルが無くなっても安定します。一方でセントルのほうはというと、アーチの重さを、組み立てた時から変形させながらギューギューに支えていて、その重さを取り除かないとうまく解体できない状態になってるんですね。そこでうまく解体できるように、実はセントルの根元は砂の上に置かれていて、この砂を取り除いてセントルを下げていくことで本体の重さから開放されるように計画されているんです。」

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砂を使ってジャッキダウン

「なるほどー。砂を使って高さを調整しているんですかー。考えるもんですねー。」

「まるでシークレットブーツみたいだねー。本当よく思いつくよねー。ルナちゃんじゃあ想像もつかないでしょ。」

「ですね(ってセンパイもでしょ)。やっぱりみなさんプロですもんね。ちなみに、そんなこんなの作業はどのくらいかかるんですか?」

「作業日数で6日間だったと聞いてます。」

「あっという間ですね。6日間あっても私はそうそう変われない。なのにセントルは跡形もなくなる。すごいわー、画期的だわー、しかも40年以上前にー!!」

「ですねー。(って、いつものことだけど、これがどのくらい早いかやっぱりよくわかんないなぁ・・・。センパイ、ほんとにわかってんのかしら???)」

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「どうですか、アーチ橋。こうして眺めるとやっぱりきれいですよね。」

「そうですね。アーチ橋って、橋を思い浮かべると一番最初に浮かぶ形ですし、景色にも溶け込みますよね。そういえば今までの取材では橋脚が無い橋って初めてじゃないですか?」

「そうですね。実は、この橋で得た技術がその後のアーチ橋の設計や施工に非常に役立ったんだそうで、当社にとっても忘れられない橋のようですよ。」

「そうだ、ひとつハカセに聞かなきゃと思ってたこと、思い出しました!さっきセンパイと話してたんですが、この橋は40年以上経過しているのに何でこんなにコンクリートがキレイなままなんですか?」

「私たちみたいに!」

「え!橋ガールたちも40年?!と、まあ冗談はさておき、コンクリートは打設して固まりながら強度が出てくる数日間が重要です。『初期養生』といって、保湿したり風が直接当たるのを防いだりします。特にこの場所は冬場には氷点下にもなりますから、冬季に施工した時は温風機を使うなどしてコンクリートが固まるときに水が凍っらないように気をつけたりして手間をかけたんだそうです。そういった努力の結果でしょうかね。」

「じゃあダメですね、センパイ。ちっとも養生せず、毎晩飲み歩いてますからね!!」

「んなことないわい!私だって大丈夫だと確信したよ、40年後も。冬でも春でもスチーマーあててるしー、プラセ○タ飲んでるしー、それに同窓会に行っても私だけ時間が止まってるって言われるようになったしー。」

「センパイ、それちょっと違うかも。やっぱり、この橋が今でもキレイに保たれてるのには、ちゃんとした下地があったからってことですから。」

「作る際のひと手間があればこその美しさか。(私にはあっても)コンクリートの美しさには効薬は無い!と、まとまったところで、今回のベスポジはこの辺でどうかな?今日はここで例のやついっちゃいますか!せーのっ・・・」

美白アーチ!

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今日のレポートはひとまずここまで。
(つづく)

タノちゃんの絵日記

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2014年4月18日 行った場所:御岳橋

「アーチを誉める賛歌! アーチーチー、アーチ!燃えてるんだろうか♪へーい」

―つづく