橋ガール

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#10 外津橋

橋をつくり続ける会社の橋好き女子、その名も「橋ガール」! 「橋好き女子」が勝手に橋の魅力を紹介しちゃうプチプロジェクト。 『お橋見』のためなら日本全国、いや世界の果てまでいってきまーす!

あーーー、限界だ限界だっ、この生活!!もう限界だ!

「ど、どうしたんですか?センパイ、急に。」

そうだ!玄界灘行こう!!

「えっ、なんでそうなるんですか?(まさかそれが言いたかっただけ?)なんか鉄道会社のCMみたいになってますけど、そこになにかあるんですか?」

「あたぼうよ、相棒。肥前の国は唐津、これを知らずして『橋ガール』にあらず!」

「もしかして橋ガールのお仕事?九州初上陸ですか!?」

「そう、人生初の九州上陸っ!」

「え!そうなんですか、センパイ。どうりでテンションもあがるわけだ。」

ということで今回の橋ガール、またまた飛行機で九州、福岡空港へ。

 

橋の概要

名称
外津橋(ほかわづばし)
位置
佐賀県東松浦郡玄海町外津~唐津市鎮西町串
橋長
252.0m(アーチ支間170.0m)
形式
RC2ヒンジ上路橋アーチ
架設工法
トラス張出し架設工法
竣工年
1974年

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MAP

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福岡空港 到着ロビー

「着きましたばい!」

「さっそく博多弁・・・それってあってます?」

「いいじゃないの。雰囲気、雰囲気。」

「それもそうですね。じゃ・・・着いとうよ!」

「なになに、その『好いとうよ!』的な。」

そんな『いつもと変わらない二人』を待っていたのは・・・

 一般の乗客A 「何だよ、橋ガールって?バンド?芸人?」
 一般の乗客B 「有名人かな?でもそれっぽいオーラある人誰もいないけど。」

(ザワザワザワ)

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橋ガーーーール!!!!!

「きゃああああ、ミヤジュンさん!!!熱烈歓迎、ありがとうございます!!」

「福岡までよう来たね~、遠かったろ~」

「来たとですばい!!!」

「ん?何かヘンやけど、まぁいいたい。」

「まるでガガ様が来日したみたいな熱烈歓迎ぶりじゃないですか!芸能人気分味わえました。」

「わたしたちのためにこんなにお迎えしていただいてありがとうございます!『お橋見』のほうもぜひよろしくお願いします。」

この博多ガール(?)にまかせときぃ!!

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ということで、地元の愉快な仲間が加わった橋ガール。

早速、お橋見ポイントに向かいます。

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空港から都市高速を利用して福岡市内を抜けて海沿いの国道202号にでると玄界灘が目の前に拡がります。海沿いに車で走ること1時間半、目指す外津橋が見えてきます。

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「♪ 海よ~、俺の海よ~。フォ~!!!」

「センパーイ、うるさいです!ひさしぶりのすてきな海の景色で『優しい気持ち』になれたのに・・・」

「何いってんの、荒波寄せる玄界灘だよ!そんな気持ちじゃ負けちゃうじゃないのよ」

「負けちゃうって、何に負けちゃうんですか。しかもこんなに穏やかなのに!」

「ホント、今日はお天気よくて、とっても穏やかでよかったね。ほら、もうすぐ外津橋つくよー。」

「あっ、あれですね!きれいなアーチ!!」

「ほーかーわーづ、まーよーわーず、とーちーゃーく。まずは、真下へゴー!」

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「到着しましたよ!。迫力満点~!」

「それにしてもおおきいよね、アーチの間が170mかあ。前に見た御岳橋は80mだったから、ここは倍以上の長さがあるんだね。」

「建設当時は日本でも最大の長大コンクリートアーチ橋だったそうですよ。」

「橋ができる前は、この外津浦のこちらからあちらまで渡し舟で行ったり来たりしとったらしいよ。」

「そりゃそりゃあ、この橋は随分と切望されて完成を待ち焦がれてた人が沢山いたんでしょうね。」

「なになに・・・施工方法はトラス張出し架設工法ね。」

「さすが、橋ガール!ちゃんとわかるとね?」

「聞いたことあるような、ないような・・」

「え!?」

「こんなときは~」

「いつものあれ!」

せーのっ、ハッカセー!!ノックノックピンポーン!

「どうもどうも~、ハカセですたい。」

「ハカセー、よぉーきんしゃった!」

「すごかー。本当に橋ガールが来るところにハカセ現れるんだ。」

「ははは、いつも無理やりですけどね・・・どうもはじめまして、ミヤジュンさま。今日はご案内ありがとうございます。」

「こちらこそ、どうぞよろしくお願いします。」

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「じゃあ、ハカセ、さっそくお仕事、お仕事!」

「はいはい!まずはトラス張出し架設工法についてですよね。」

「これまでにも張出し架設はいくつも見てきたと思うんですけど・・・」

「確かに『トラス張出し』は初めてですね。まず、トラスというのは簡単に言えば三角形が連続した形の構造です。それでトラス張出し架設工法は、アーチ橋を張出し架設工法でつくる方法のひとつで、コチラ(下図)のようにアーチリブ、鉛直材、補剛桁、PC鋼材の斜材の4つの部材でトラスの形を形成しながら張出し架設する施工方法です。お分かりになりますか?」

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「なるほど、上向きと下向きの三角形が繰り返し出てきますね。これがトラスってわけだ。」

「えっ、ガールは今のでわかるの?さすがね!」 

「でも、ハカセ。ほかの3つの部分は残っているけど、斜材っていう部分は今は残っていないですよね。」

「はい、鋭い指摘ですね。斜材は施工時に張り出したアーチリブを斜めに吊って支えている部材です。アーチは完成してしまうと安定した構造になりますから不要になるんです。なので完成すると斜材は撤去してしまいます。」

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「このトラス張出し架設工法は、大きな支間のアーチに用いられることが多いのですが、この工法を世界で初めて採用したのが外津橋です。」

「そういえば、今思い出しましたが、当時の工事記録がビデオになっていたのを見たような気がします。作業員の皆さんが体を大きく広げて、高い場所で作業していて、本当に命掛けの緊張感溢れる作業なんだなぁと。」

「当時の国内のアーチ橋の最大支間が100mでしたから一気に70mも延びたんですよ。当時は張出し架設のアーチ橋自体も、世界にまだ数橋しかありませんでしたから、この橋の施工がいかにすごいかよく分かりますよね。」

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「170mアーチを真下からー、やっぱりすっごい迫力!!」

「これを支える足元がここ。大きくて力強く踏ん張ってる感じ。あれ?ココ。アーチの根元の下のところに大きな穴が開いてる!何ですか、これ?」

「ほんとだー、どれどれ・・・」

「ミヤジュンさんも立派な橋ガールですね。中を見てください。大きな蝶番のかたまりみたいなのがみえませんか。橋の形式がRC2ヒンジ上路橋アーチってなっていたでしょう。それがヒンジです。」

「あった、あれだ!ヒンジ君!!」

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「わー私も見たいです。どれどれ、暗くて見えません。」

「これまで見てきた張出し架設の橋たちは中央接合部でヒンジがありましたが、この橋はアーチの両端にヒンジがあります。ヒンジにするとアーチの根元に『曲げモーメント』と呼ばれるアーチを曲げる力が発生しません。この橋の大きな特徴の一つですね。」

「曲げモーメント?あー、橋ガールって結構むずかしいこと知っとかないかんっちゃね~。」

「大丈夫大丈夫、私をみんしゃい。なんも問題なかと。」

「センパイ、そこ威張るところじゃありません!」

「じゃぁ、そろそろ上からの景色を見てみましょうか」

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橋上からの眺めを楽しむガール三人とハカセ・・・

 

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「きれーい」

「ほんと、今日は最高の景色よね。」

「あれ!あそこに記念プレートみたいなのがある。」

「おお!田中賞受賞!」

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「もうひとつ、確かこの裏にすごいものが・・・」

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「あ、すごーい。担当した方の名前入り!」

「うわぁー、知りませんでしたね!」

「もう皆さんは知らない名前ばかりでしょうけどね。お一人を除いては・・・」

「あれ、あそこにいる方・・・」

「だれだれ?」

あっ・・・・・

 

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「いやぁ、今日は最高の『お橋見』日和だね。ハカセは、この橋のいいところをちゃんと説明してくれているかい?」

「!!!!!」

「あれ?ハカセが固まってる。」

「って、しゃー、社長!!どうなさったんですか??」

「天気もよかったからね。ちょっとそこまで来たついでに、橋の様子を見に立ち寄ってみたんだよ。」

「社長、ご無沙汰しております。今日は『例のお打合せ』ですね。」

「あれ?ミヤジュンさんご存知だったんですかぁ?」

「橋ガール、いつも楽しみに読んでいるよ。がんばってくれているみたいだね。ミヤジュンさんも、今日は案内のほうごくろうさま。」

「ありがとうございます!」

「これもハカセがいてくれるお陰で・・・」

「あれ???ハカセ、どこかへ消えてしまいましたよ。」

「そうか。まぁ、この橋のことなら私のほうがよくわかっているからね。ほら、ここに名前があるだろう。」

「あ、私たちが知っているお一人って、社長!!関わった方の名前を残してもらえるなんてステキですよね。」

「たしか設計を担当されて現場にも赴任されていたんですよね。この橋のことなら知り尽くしている。なるほど、ハカセ消えちゃうわけですね。」

「まぁそういうことだね。今年は外津橋が完成してからちょうど40年経ったんだけど、私にとっては大変思い入れの強い橋でね。いまだに関わっていたころのことは鮮明に覚えているよ。」

「折角の機会なので、当時の様子とか聞かせてもらっていいですか?」

「もちろんだよ。」

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「私はこうやって立っているだけでも高くて足がすくみますが、工事はかなり大変だったのでしょうね。いかがでしたか。」

「そうだね。何もかもが始めてのスケールで、どんな構造にしてどういう風に設計しなければならないか、かなり考えさせられてね。実際にやるときには、想定外のリスクに気を使わなければならなくて大変だった記憶があるね。」

「こちらで採用したトラス張出し架設工法はアーチでは世界で初めてと伺ったのですが、どんな苦労があったのですか?」

「さっきトラス張出し架設をしている写真を見ただろう。これだけ見ていると、先のほうを延ばしていくと、海のほうへ倒れこみそうな形になってしまうだろう。でも陸地側の橋の端部に下側に凸の形をした幅20mの大きな橋台を造っていてね、陸地側の岩盤に力を伝えてふんばっているんだよ。」

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「なるほど、本当だ!引っかけるような感じですね」

「今の時代ならPC鋼材を利用したグランドアンカーというもので固定することもできるんだけど、当時はまだここにあるような岩盤に対応できるような技術は確立していなくてね。最大4400tもの力がかかるものだからあんなに大きな橋台になっている。」

「見えないところでそんなすごい工夫があったんですね。」

「構造計算も大がかりだったので、当社でも初めて現場に計算機を持ち込んでいたね。今のパソコンとは違って大きな計算機で、昼間は工事で電力がめいっぱい使われていて電圧が安定しなくてね、計算機を使うのは皆が寝静まった夜だった。そんな毎日だから、うとうとして橋が落ちる夢を見て、何度か冷や汗をかいたことがあったね。」

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「この橋はアーチの根元のところに大きなヒンジがあって2ヒンジアーチって呼ばれるのは知っているね。」

「あ、そこはさっき確認できました。張り出した先端で結合するヒンジは見たことがあったんですが(#01 後楽園北歩道橋)、アーチの根元にヒンジがある橋は初めて見ました。」

「実は、いまのアーチ橋は固定アーチと言って根元を固定するのが大半なんだけどね。そのほうが安定するし、ヒンジなんて金物のつなぎ目がないから管理は楽なんだけど、その場合には計算が複雑になる。当時はこのような張出し架設の事例も無かったし、計算機の能力も貧弱だったから、確実にできるヒンジの採用を選んだんだよ。」

「ヒンジにもそんな熱い物語があったんですね。まるで、スク○ルウォ○ズ の山下ヒンジ的な!!

HG_hokawazu_hinji山下ヒンジ?ミヤジュン(画:タノちゃん)

「そういえば、今日は晴れていて穏やですけど、冬のころの玄界灘なんていったら厳しくて大変だったのでは?」

「そうだね。実は開通前年の年末12月29日、吹雪の中でアーチを閉合する作業をしたのは忘れられないね。アーチ橋というのは、実は閉合前が一番大きな力がかかっていて不安定な状態なんだが、そのままの状態で正月休みを迎えるわけにはいかないと、職員・作業員一丸となって必死に間に合わせのを思い出すね。」

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「皆さんが命掛けで仕事していたんですね。仕事に向き合う真剣な姿勢を見させていただいた気持ちです。ありがとうございます。」

グーグーグー(おなかの音)

「っておいおいおーい!!だれだ?緊張感無い人!!しっかりしなさいよ!」

「もー、自分じゃないんですか?」

「そうか、もうこんな時間だね。そろそろお昼にしたらどうだろう。ここ辺りはイカが有名でね。みんなも一緒にどうだい?」

「ありがとうございますー!」

「それでは、わたくしめも・・・」

「あっ、ハカセ、いつのまに!」

 

タノちゃんの絵日記

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2014年8月 行った場所:外津橋

 「社長 ~!
 わたしたち、ゲンカイでーす!」
 人と人の想いをつないだ、
 思い出の橋

 

―つづく