橋ガール

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#18 舞の橋

橋をつくり続ける会社の橋好き女子、その名も「橋ガール」! 「橋好き女子」が勝手に橋の魅力を紹介しちゃうプチプロジェクト。 『お橋見』のためなら日本全国、いや世界の果てまでいってきまーす!

東京郊外
とある住宅街の一角にあるパン屋さん

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「ふぅ~、集合のパン屋さんってここだよね?あぁ~遠かったぁ~」

「そうね、でも住宅街の中にあっていい雰囲気のお店だよ。」

 

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「結構お客さんが来てるし、地元では人気のお店なんだ。。香りも良いし、どのパンもうまそうだぁ〜 お!イートインできるんだ!これは楽しみだ!」

「ほんと美味しそうだね!でもカンジンのざきぱんはまだ来てないよ。人を呼び出しておいてまさかの遅刻!?」

「遅刻は許さん!!って、あっ、来た来た。でもなんか知らないオジさんが一緒だぞ。今日は3人でいつもの『パン屋de同期会』じゃなかったっけ?」

「ゆかぱ~ん、あみぱ~ん、お疲れさまぁ!迷わずに来れたぁ~?」

「ざきぱん、遅いよ!!私はもう、このパンの素敵な香りに誘われてよだれが止まらないよ!」

「まぁまぁ、ゆかぱん落ち着いて。ところで隣のお方はどちら様?」

「いやぁ、ごめんね。駅でゲストと待ち合わせをしてたら遅くなっちゃって…。じゃ、早速ご紹介するね。。みんな驚いて!!この方はーは・・・な、な、なんと!」

「・・・」

「かの有名な『ハカセ』さまです!!はい、みんな、拍手~!!」

「・・・」

「あ、あのー、そうですよね。急にハカセと紹介されてもですよね。お気づきではないみたいですが、一応ハカセです。そして今日はぜひハカパンと名乗らせていただきます!みなさん、どうぞよろしくお願いします!!」

「はぁ、よろしくお願いします・・・」

ということで、まだよく状況が呑み込ないようですが・・・
今回登場するのは、建築設計部門で活躍しているこちらの同期3人組です。

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橋の概要

名称
舞の橋
位置
東京都八王子市
橋長
主橋部 55.476m、スロープ部 66.0m,81.3m
形式
主橋部 PC片ラーメン箱桁橋、スロープ部 PRCスラブ橋
架設工法
固定支保工架設工法
竣工年
1991年

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MAP

「お、来た来た。おまかせパンセット!もう見るからに美味しいよ。間違いないよ!」

 

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あぁ~、超うまい(°Д°)(°Д°) 芳醇な香りと、外はカリカリ、中はモチモチしっとりな食感・・・あぁ、幸せだぁ・・・」

「ホント、こりゃ人生ベスト3に入るうまさだよ。
で、ところで、なんでここにハカセがいるのさ?」

「え?女子が集まってハカセがやって来ると言えば、もう決まってるじゃん。。」

「もしかして・・・まさか?」

「もちろんここのパン屋さんが美味しいから来たかったんだけど。この前、建築家 大高正人さんの展覧会があって、都市計画の中で橋もデザインしていたことを知ったのよ。その橋がこの近くでしかもうちの会社が施工した橋だったから、これはもうお橋見しなきゃ!ってことでハカセ改めハカパンさんをお呼びしたんだー。」

「 ・・・ face01  face02   」

「はい!それでは今日はたくさん歩くし、とりあえずパンをたくさん食べて腹ごしらえしよ~」

「 ・・・ face01  face02  (しかもたくさん歩くのかよ・・・)」

「よし!、お腹も一杯になったし、さぁみんな一緒に~、『レッツゴー!お橋見!!』 」

「・・・れっつ、ごぉ~・・・」

「はぁ・・・帰りたい・・・」

 

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「では、ハカパンさん!さっそく解説をお願いします!」

「おっといきなり振りましたね。今日ご紹介するのは“舞の橋”と言いまして、南大沢駅と首都大学東京のキャンパスを繋ぐ歩道橋です。「福祉のまちづくりの象徴」、「周辺景観との調和」、「大学と地域のイメージの連続性」をデザインコンセプトにしていて、ここの地区計画にも携わった建築家の方が、単なる学生のアクセス道路に留まらない重要な施設としてデザインした、いわば土木と建築がコラボレートした橋になります。」

「で、その建築家、大高正人さんって、どんな人なの?」

「建築設計から都市計画やまちづくりに至るまで、幅広く活動した建築家だよ。例えば、広島市にある基町高層住宅団地の計画はとても有名だよね、学生時代に授業で見たことあるんじゃない?メタボリズム活動にも参加していたから、私たち世代から見るとザ・メタボ建築って感じる設計が多いかな。そうそう、この前ライブで千葉県文化会館に行ったんだけど、そこも大高さんの設計でね、かっこよかったな~床スラブや壁スラブを立面に見せているところが、きたメタボ建築ー!!って感じでさ~でも地形的特徴をなぞったようなボリューム感は、大高さんらしい建築でした~なにより、古い建築だけど今だに利用されているところが嬉しいよね~それからね~・・・

「(やばい、スイッチ入ったぞ・・・!)」

「わかった、わかったから。確かに知ってる作品多いね。」

「でもさ、なんか建築家が橋の設計に携わるって珍しいよね。。建築家が計画するんだから、やっぱりデザイン的にガツーンとインパクトのある橋なんだよね?」

 

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「あ、着いたよ~、ほら、これこれ!この正面の・・・」

「えっ、コレ・・・って?橋って・・・コレ?そういわれても、どこからが橋か言われても気づかないじゃん!!」

 

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「と、いうか、なんか、駅から目の前の大学まで全然違和感が無い感じだよね。同じタイルが駅前からずーっと続いてきてるし。」

「大高さんは都市計画家でもあったから、橋単体でデザインしていないんだ。例えば、橋の長さは連続するタイルのサイズに合わせて、55.476mの端数にしてるとかね・・・」

「いわゆる建築の『タイル割付寸法』ですね! 確かに建築っぽいね。」

「でもさぁ、じゃあ何で手前と奥と、橋の中にわざわざ2つも階段つけたのさ?地盤の高さを合わせるためだけなら階段は1つにまとめた方が良いんじゃない?」

 

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「確かに、2つあると気分的に‹面倒臭い›!。」

「ゆかぱん、そう思うよね~。まさにそこがポイントなんだ! これはね、結界を表現しているのよ。キリッ」

「け、け、結界っ!?(ナニトツゼン)」

「設計者の意図として、全体に連続性を持たせつつも、街と大学との間に境界を作りたかったみたいなの。ほら、神社にもあるでしょ?いくつも続く階段。あれって神社と外の空間を分けるためにあるんだよ。大高さんはそんな境界を表現したかったらしいんだ~。」

 

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「な、なるほどー・・・確かに、ここには結界が感じられる。(パントマイム)」

「ア、ア、アー、タシカニー。(パントマイム)」

「・・・。(さすが建築設計者、感性が興味深いですね。)」

「でもさ、ここって駅前から結界まで本当にきれいに同じタイルが並んで 橋っていうより“道!”って感じだよね。だって振り返ってもやっぱり街の風景に馴染んでるっていうか、なんの違和感もないよね。」

「外装材や手摺、電柱だってちゃんと計画的に統一されて、街全体がちゃんと『連続性』を意識して造られてる感じがするよね。街づくりには、建築だから土木だからってばらばらにやってちゃダメだってことなんだなぁ。」

「でもこの階段中央の手摺が如何にも後で付け足した風なんだけど・・・。。せっかく建築家がこだわったものなんだからそこは統一してほしいところだね。せめて他と色を合わせてシルバーで統一感を出すとか。」

「確かに皆さんの仰る通りですね。ただこの橋は公共のモノなので、どうしても限られた維持管理のための条件もあって、機能が優先されてしまうこともあるのではないかと・・・」

「そう言えば、ぱっと見『エキスパンションジョイント』が見当たらないなぁ・・・」

「エキスパンションジョイントってなんだっけ?」

「さすが構造設計者、目の付け所が違いますね。橋と道路との間のクリアランスに設けたつなぎ目の設備のことですね。橋梁の世界では、大規模地震による揺れた時に衝突して壊れないようにジョイント部分に付けますが、それは温度による伸び縮みも吸収する役割もあります。」

「建築でも建物と建物間に設けたりするよね。」

「なるほど。それなのに、こんな風にエキスパンが無い橋ってやばくない?」

「最近は維持管理の面から省略する構造も開発、採用された例もありますが、基本的にほとんど橋にはエキスパンジョイントがありますね。この橋だって、よく探してみればあるんじゃないですかね・・・気づきませんでしたか?」

・・・しばらくして

「あ、これかな?手摺のここが違う。」

 

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「ピンポーン!正解◎です。ほら、階段のこの部分がそれですね。」

「あー!!!コレ!?上からじゃわからなかった!階段の下で隠してあるんだね。」

「こりゃわからないわ!こんな風に見え方を気にするのも、建築がコラボしたからこそか。」

「さぁ、ではそろそろ次の『お橋見』ポイントまで少し移動していきましょうか。こちらにスロープがあるので橋の下に行ってみましょう。」

 

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「これもこの橋の一部なんですよね。」

「あれっ、自転車がそのままスロープを登ってるよ!」

「車いす用のマークもあるから、バリアフリー仕様のスロープとして設計されているみたいだね。」

「それにしてもこのスロープ、絶妙なカーブを描いてひねってあるみたいだけど、この構造体ってどんな風に作ったんだろう?型枠一枚一枚でこのカーブの形にするって、どうやって調整したのかな。ハカパンさん、これどうやったんですか?」

「そうですね、これは当時かなり大変だったようです。設計の段階で形状に気を付けても、施工時に段差ができてしまっては元も子もありません。なので、必要に応じてプレス加工して成形した型枠を用いたんだそうです。今だったら3Dで設計や加工をするいわゆるCIMの技術を用いれば比較的容易に作れますが、当時は型枠の寸法を算出するだけでも大変な作業だったと思います。」

「はー、そんな苦労があってこんなにきれいなスロープの仕上がりになっているんだねー」

 

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「上からは単なる道路にしか見えなかったけど、下から見ると立派に橋なのがよくわかる。裏側のデザインも、独特の面白い形をしてるね。まるで魚の骨みたい。」

「確かに。しかも、魚の小骨っぽいところ、よく見てみると微妙に丸みを帯びて膨らんでるみたいだね?あれって、建築家先生ならではのデザインのこだわりだったりするのかなぁ」

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「ほぅ、さすが建築技術者の方々、細かいところを見逃さないですね。床版の先の膨らみは意味もあって、桁を薄く見せて重量感を減らしながら、ループするスロープの桁の形にそのままつながるようになっているんです。だからスロープへ分岐するところなんかもすっきりした見栄えになっているんですよね。細かく言うと構造的には連続していないんですが、その不連続性が目立たないように桁の内部でヒンジ構造を用いているんです。ここまで、橋桁の下面の形状にこだわった橋梁は珍しく、細部へのこだわりを感じます。」

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「階段とかスロープっていかにも異質なものが『くっついてます!』みたいな感じが多いけど、このスロープを下から見ると大樹の枝のように自然に生えているように見えるなぁ。」

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「そうだねぇ。橋って、建築と比べて形がシンプルな分、求められる機能に対する作り手のデザインへのこだわりが感じ取りやすくて、すごく勉強になった気がするな・・・。」

「うん、確かに思ってたより楽しめて勉強になったかも。」

「じゃあせっかくだからさ、例の記念写真撮っていこ~よ。ハカパンさん、写真お願いしてもいいですか?」

 

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「なんですかこのポーズ!?」

「橋の気持ちになってみました。」

「私の会社のデスクトップ画面、しばらくこれに決定だわ。さ!お橋見も無事完了したし、残りはアウトレットで買い物だー!せーのっ! レッツ・ゴ・・・」

「あっ、ちょっと待って!せっかく『お橋見』が盛り上がってきたところだし、実はね、この近くにもうひとつ紹介しておきたい橋があって・・・、そっちも見に行きたいかなぁ・・・と」

「あ”ーーー、またそんなこと言ってるよー、あみぱんー;;!」

「ま、いいんじゃない、私もなんか楽しくなってきちゃったしさ。ハカセもわざわざ来ていただいたのに解説もほんのちょっとで物足りなさそうだし。もう1つくらい見てもいいかも。」

「ははは・・・確かに皆さんがよく気付かれていつもよりほんのちょっとだったかもしれませんね。ではそちらの橋にも寄っていきましょう!」

「はいはい、わかりましたよ。今日はトコトン行きましょー」

―つづく