橋ガール

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#20 カムイ・ニセイ橋

橋をつくり続ける会社の橋好き女子、その名も「橋ガール」! 「橋好き女子」が勝手に橋の魅力を紹介しちゃうプチプロジェクト。 『お橋見』のためなら日本全国、いや世界の果てまでいってきまーす!

7月中旬 北海道が東京よりも暑い日が連日続いていた。そんなある日のお昼休み

「暑い・・・暑すぎる・・・」

「夏ですね・・・夏と言えば、カレーが食べたいです」

「夏だもんね・・・夏じゃなくてもひらさんは辛い物好きだった気がするけど・・・最近はダムカレーっていうのがあるらしいね」

「ダムカレー!近くにダムって、ありましたっけ?」

「あったかな(スマホを見ながら)…あった、札幌市内にある豊平峡ダムにカレーが!」

「おお、美味しそうです~!」

「ここは展望台からダムを眺めながら食べられるみたい!」

「ますます行ってみたいです・・・あれ?このダム、よく見ると橋がかかっています」

「ダムに橋って、普通かかってるんだっけ?『豊平峡 ダム 橋』で検索っと!」

「検索の一番上にうちの会社の名前が・・・あ、この橋です!カムイ・ニセイ橋。」

「豊平峡ダム、橋でまさか会社と関わりがあるとは!ちなみにこのダム、日本のダム百選にも選ばれてるんだって。紅葉の写真がすごい綺麗・・・観光地なんだね」

「札幌市内だから、すぐ行けるみたいですよ!近くの定山渓温泉には行ったことありますけど・・・」

「これは・・・今すぐ行ってみたいよね?」

「もちろんです、ダムを眺めながらカレーを食べたいです!でも・・・」

「ここに、うちの会社で施工した橋があるんだよね?橋、が、ある・・・はし、がある・・・」

「えっ、もしかして、橋ガール・・・!?」

「そういうこと!なっちゃいましょう橋ガール!したっけ、今からここに行ってハカセを呼んでみよう!」 (したっけ=北海道弁でそうしたら。)

「橋のこと、全然わかりませんけど・・・カレーのためなら行きます!」

今回は、北海道からこの二人がレポートをしてくれます。

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「ダム周辺は環境保護のため特別区域に指定されているので、入口から無公害の電気バスに乗る必要があるのですね。」

 

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「電気バスが走っているなんて知らなかったなぁ~」

「近くにあるところほど、行かないって本当なんですね。」

 

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「長いトンネルや断崖、滝を越えると・・・豊平峡ダム!」

 

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「そしてあれがカムイ・ニセイ橋!」

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橋の概要

名称
カムイ・ニセイ橋
位置
北海道札幌市南区定山渓
形式
PCフィンバック箱桁橋
橋長
53.0m
支間長
43.0m
架設工法
張出し架設工法
竣工年
2008年

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MAP

「橋の名前はアイヌ語で神の絶壁という意味を持つ言葉なんだって!確かにすごい崖・・・ あっ、あの橋だったよね?なんだか変わった形。」

「それじゃあ、あの人呼んでもっと詳しく、橋のことを説明してもらいましょう!せーのっ。」

「ハカセ―!!」

「はーい」

「わぁ!呼んだら本当に来た・・・!ハカセ、ようこそ北海道へ!早速なんですけどこんなふうにダムに架ける橋ってあるんですか?」

「いきなり質問来ましたね。確かに非常に珍しいですね。もともと、この橋ができる前までは崖のすぐそばを通ってダムへ行っていたのですが、ダムが完成してから30年が経ったころ、崖に亀裂が生じ始め崩落の恐れが出てきたので、市民の声も取り入れた結果、新しく橋を施工することになったそうです。」

「観光客や、ダム関係者の方が安心して渡れるようにするために作られたんですね。」

「それにしてもこの橋、いきなり左右にコンクリートの壁がドーンとあるんですが・・・」

 

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「そう、そこがこの橋の大きな特徴です。構造形式にフィンバックとありますよね。これは『背びれ』の意味でこの壁のことを指していています。この橋を構成する重要な部材なんです。」

「ただの壁じゃないんですね。でも、なんでこんな形式の橋にしなきゃいけなかったんですか?」

「ダムのそばにある崖から離れた場所から橋を架ける必要があり、40m以上の支間が必要になりました。普通の橋だったら2.5mくらいの桁高になるでしょうかね。でも橋桁の一部がダム湖の水位以下になってはいけないので桁高を低くする必要がありました。このフィンバック形式だと桁からとびだしたフィンの中にPC鋼材を配置することでプレストレスを効率よく伝えられるので、桁高を低くすることができるんですよ。」

 

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「なるほど。だけどこのフィンは、橋のこちら側だけ高くてダム側のあちらに行くとだんだん低くなってますよ。これも何か意味あるんでしょうか?」

「するどいですね。ダムはもともと橋を架けることなんて想定していないから、そもそも橋からの荷重をダムに負担させることはできないんです。それで片持ち構造にしてこちら側だけで橋全体を支える必要がありました。それで支えているこちら側だけフィンが高いんです。だからこの橋、実はダムとはつながっていません。」

「えーーー!? 橋なのにつながってないんですか!?

「もちろん隙間は塞いでますけどね。向こうに行ってみると分かりますよ。」

「片方で支えるだけだと傾いたりしないんですか!?」

「それは大丈夫ですよ。図面を見ると分かりますが、フィンバック構造で支えた橋桁全体をアンカーで岩盤に固定してるんですよ。」

「あ、ほんとうだ。いろいろな仕組みで橋が成り立っているんですね。」

「ハカセ、そういえばここだけ色が違うところがありますよ。後から付けたみたい・・・え、もしかして、失敗・・・?」

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「これはさっき言ったフィンの中に配置されたPC鋼材を緊張して後埋めしたものです。最後にコンクリートで蓋をしたので色が変わっていたんですよ。以前の あゆみ橋 でもありましたよね。」

「私も気づいてたんですけど、失敗した直しかと思って黙ってました。失敗じゃなくて安心しました。」

「ところで橋のこの壁、上に広がるように傾いていますけど、どうしてですか?」

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「この傾きは通行する人に圧迫感を与えないようにするため、あえて上に10°広げているそうです。」

「へぇ、傾けることで、開放感をだしているんですね!」

「でも橋のすぐ下はダム湖で、一体どうやって作っていったんですか?」

「柱頭部のところは支保工架設で施工して、そこから先は架設桁併用による張出し架設工法を採用しました。これが張出し架設のときの写真です。本体の橋をつくるための設備を支えるために、一時的に架設桁をダムまで張り渡しているんです。」

 

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「橋の上にさらに橋が架かってるみたいで、つくるときの方が複雑な感じなんですね。それで、途中から作り方が違うからコンクリートの雰囲気が変わっているんですね。この『○』も、大きさが違いますよ。」

 

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「よく気づきましたね。型枠を固定する部品を後埋めした跡です。柱頭部は木製、張出し部は鋼製と架設方法により異なった型枠を使ったので後埋め処理の形も違うんですよ。でもフィンの部分のコンクリート表面の筋が通っているのは分かりました? 」

「ほんとうだ!」

「使う型枠は異なっていても筋を通すことで、できるだけ見た目の一体感を出すように工夫しています。こういうところは職人技ですね。」

「実は芸が細かいんですね。もっとアバウトだと思ってました。」

「では橋を渡って先へ進みましょう。」

 

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「もうすぐダムですね。」

「ここが橋とダムの間です。上に伸縮装置の板が乗っかっていますが、橋はダムとはつながっていないのがわかりますよ。」

「うわっ!横から見るとすき間がはっきりとわかりますよ!くっついていないから、落ちたりしないか心配になりますが・・・」

 

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「この橋は車の走行がほとんどないですから 群集荷重 という人が乗った重さで設計しています。でも、橋は満員電車並にびっしりと人が乗ってさらその2.5倍もの重さががかかっても落橋しないように設計されてますので大丈夫ですよ。

「満員電車状態でさらに肩車や組み体操しても大丈夫ってことですね。ところで、この覆いかぶさっている鉄の板って、ずれたりしないんですか?」

「すき間の幅によって伸縮する仕組みになっています、動くとしたら橋のコンクリートのほうが動きます」

「えっ!?橋って動くんですか?」

「コンクリートの性質上ながーい時間をかけて乾燥して縮むんですよ。それに、暑いときは伸びますし、寒いときは縮みます。」

「知らなかった。コンクリートって温度で伸び縮みするんだ。でもぶつかったり、すき間が大きくなって板がはずれたりしないんですか?」

「施工する前にすべて計算されていますから大丈夫です、次は上から、展望台のほうからお橋見しましょう。」

「あっ!ひらさん、ダムカレー!!」

「橋のことで、すっかり忘れてました!!」

 

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「9月下旬オープン?あれ・・・もしかして・・・(この日は7月20日)」

「そんな・・・レストランがやってないなんて・・・嘘だっ!!

「ちょ、ちょっと待ってーーー!」

 

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坂道をやけになって走るひらさん

「はぁ、いきなり走るから、びっくりだよ。」

「わぁ!かわせんぱい、ここ、すごい景色ですよ、ベスポジってやつですね!!」

 

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「いつの間にこんなに登っていたんだね!」

「紅葉の季節は、もっと綺麗なんでしょうねぇ。」

「この景色が見られて、大満足です。」

「そろそろ帰りのバスの時間ですよ。」

「そういえば、ダムカードって知っていますか?」

「ブギウギ専務(※地元のテレビ番組)が集めていたのを見たことがあります。」

「実物は私も見たことがないです。」

「運転手さんに聞いたら、向こうの資料館で配っているらしいんですよ。せっかくだし、見たいなぁ。」

「でも今から取りに行ったら、次のバスが来るのは・・・」

「走ります!!急げばまだ間に合いますよかわせんぱい!!」

「ええ、また走るのーーー!?」

 

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「な、なんとかダムカード、ゲットできましたね!」

「もう間に合わないかと思った・・・バス間に合ってよかった・・・」

「走ったら、すっかりお腹空いてきました・・・やっぱり、カレー食べたいです・・・」

「豊平峡温泉だったら、インドカレーがあったのにねぇ。」

「豊平峡温泉と言えばインドカレーですもんね!札幌市民の常識ですよ!」

「来る途中にありましたよ、豊平峡温泉。のぼりもありましたし・・・」

「ダムと温泉、近くだったんですね。今の今まで気づいていませんでした・・・」

「ここはインドカレーを食べないと! すぐ行きましょう!」

 

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「おぉ、メニューがいっぱいだね。どれにしようかなあ。」

「ほんと悩みますね・・・ハッ!!かわせんぱい!これにしましょう!豊平峡スペシャル!!」

「わゎ!なまらでっかいね!食べきれるかな・・・」 (なまら=ものすごくの意味。人によって「なんまら」「なんま」など発音に違いが。)

「いけますって!!腹ぺこですもん!ハカセもご一緒にいかがですか?豊平峡スペシャル。」

「い、いえ私は遠慮しておきます。(汗)」

 

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「念願の、カレーです!!」

「このナン顔よりも大きい!!」

「じゃあ早速、温かいうちに。」

「いただきまーす!!」

 

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完食!!

「う゛ぅ゛・・・さすがに多かったですね。」

「くっ、苦しい・・・でも美味しかった。」

「よく食べきれましたね。カレーも食べたことですし、そろそろ帰りましょうか。」

「ハカセ、北海道まで来てくれてありがとうございました!!」

「ぜひまたお橋見させてくださいね!」

「それじゃあ、したっけね~!」 (したっけ=別れ際の挨拶にもなる。)

 

ひらさんの絵日記

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 2017年7月20日 行った場所: カムイ・ニセイ橋

 「片腕でダムと人をつなぐ
  力持ちな橋でした。」

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―つづく