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社長メッセージ

「未来への挑戦」 ~変革を成果につなげる~

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「未来への挑戦」 ~変革を成果につなげる~

社長メッセージ

社長就任にあたって

2021年4月1日付で代表取締役社長に就任しました近藤重敏です。三井グループ、住友グループ唯一の総合建設会社として、社会に貢献し、お客さまから信頼いただける企業を目指し、三井住友建設グループの発展のために全力を尽くしてまいります。どうぞよろしくお願いいたします。

新型コロナウイルスの感染拡大による、ここ1年の社会構造・生活様式の大きな変化は、10年間で起こる変化が1年で生じたとも言われています。人やモノの移動が制限され、建設業界を巡る事業環境も一変し、特に民間企業の設備投資が慎重になるなど、国内外で厳しいものとなりました。

今もなお、社会・経済活動は先行きが見通しづらい状況ではありますが、国土強靭化事業の5カ年延長の決定やワクチン接種の普及など明るい兆しも見えています。当社グループとしましては、引き続き、感染防止対策を徹底し、日々変化する社会情勢を的確に捉え、適切に対処することで持続可能な事業の推進につとめてまいります。

中期経営計画(2019-2021)の進捗状況・業績概要

当社グループでは、持続可能な社会の実現への貢献とともに、当社グループの持続的成長を遂げるため、「2030年の将来像」として『新しい価値で「ひと」と「まち」をささえてつなぐグローバル建設企業』を掲げています。

現在、「2030年の将来像」への歩みを進めるため、「変革の加速」をテーマとする第6次中期経営計画(2019-2021)に取り組んでいます。変化する社会環境に柔軟に適応し、持続可能な社会の実現への貢献とともに、企業競争力の強化と企業価値の創造に向けた変革を加速させることを目指し、「建設生産プロセスの変革」、「海外事業の強化」、「事業領域の拡大」の3つの基本方針のもと計画を推進しています。

中期経営計画(2019-2021)

1.3つの基本方針と2020年度の進捗状況

1) 建設生産プロセスの変革(DXの推進)

生産性向上に向けた建設技術のデジタル化、自動化、業務プロセスの変革など、DX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進は喫緊の課題です。建設業界にもデジタル化の波が押し寄せている中、2020年度はより改革マインドをもってスピーディに取り組みました。

土木分野では、橋梁の床版取替工事の設計支援プログラム「SMC-Slab」の適用やプレキャスト床版の新たな接合工法「サスティンジョイント™」の開発のほか、近年、市場が拡大している大規模更新事業でのICTの活用や、リアルタイム鉄筋出来形自動検測システムの現場への導入など、生産性の向上を図っています。

建築分野では、当社グループのプレキャスト工場で労務データ収集分析システムの運用を開始しています。プレキャスト部材の受入検査システムやタワークレーンの自動化とあわせて、プレキャスト工法による機械化・省力化を推進しています。

現場施工におけるDXや業務改善などの推進により、生産性や効率性を最大限に追求することは、施工の自動化や施工管理の遠隔化などの施工プロセスのみならず、わたしたちがものづくりの理念として掲げる「労働災害の撲滅」と「究極品質の実現」にもつながると考えています。

2021年4月に、全社的なDXの推進に向けて、あらゆる分野でデジタル化を統合的に推進するための組織改定を行いました。DXという潮流に形式的に対応するのではなく、デジタルというツールを用いて、営業、設計、施工、サービスなどあらゆる活動の質や量を向上させ、社会に新たな価値を提供することで、将来に向けた成長につなげてまいります。

技術戦略

ICT戦略

安全文化と究極品質

2) 海外事業の強化

海外においては、国内以上にコロナ禍の影響が大きく、2020年度は入札延期や投資計画の中止などが相次ぎましたが、土木分野ではジャカルタ都市高速鉄道(フェーズ2)CP203工区(インドネシア)、建築分野では地元優良企業の大型オフィスビル(タイ)などを受注し、現地法人を含む海外受注高は558億円となりました。

「グローバル建設企業」に向け、わたしたちが実践すべきことは、世界に視野を広げ、世界とのコミュニケーションを通じてお互いの文化や考え方を知り、共感できるグローバルな人材となることです。

当社グループが強みを持つインドでは特に厳しい経済環境が続き、受注が大幅に落ち込みましたが、この機に現地スタッフの技術力向上とグローバル化を目指した人材育成を進めています。また、世界の建設現場で言葉の壁をこえる音声通話自動翻訳機「どこみなフォン/DokoMinaPhone」の開発など、コミュニケーションツールの活用によって、グローバル化を促進します。

アジア・アフリカを中心に人口は拡大基調にあり、コロナ禍が一応の収束を見た段階においては、都市インフラ整備の需要は豊富にあるものと考えられます。当社グループの成長の柱の一つとして、引き続き、将来に向けた事業基盤を構築してまいります。

特集2 グローバル人材育成

海外事業

ICT戦略

3) 事業領域の拡大

コロナ禍でお客さまのニーズが一層、多様化・高度化しており、複雑化した社会課題への対応が求められています。こうした変化を新たなビジネスチャンスと捉え、競争力のある新たな事業を創出するために、既存事業の知見と社内外のネットワークを最大限に活用し、積極的な投資や異業種とのパートナーシップの構築を進めています。

2020年度は、再生可能エネルギー事業で当社3件目の水上太陽光発電所運営事業となる蓮池水上太陽光発電事業(香川県)が稼働しました。現在、建設準備中の事業と併せて発電容量の10MW体制が整いましたが、収益基盤の強化に向け、さらなるストックの積み上げに取り組みます。

また、2020年10月に子会社化した三井住友建設鉄構エンジニアリングおよびドーピー建設工業とは、橋梁事業における総合力の強化に向け、営業、設計、施工、サービスのあらゆるプロセスにおける協力体制を構築し、橋梁事業の受注拡大とPC橋のシェア向上を目指します。

今後も、脱炭素社会につながる再生可能エネルギー事業、M&Aやアライアンスによる規模感のある新たなビジネスの創出など、「事業領域の拡大」へ将来に向けた投資を実施してまいります。

特集1 事業領域の拡大

新規・建設周辺事業部門

2.2020年度の業績概要

中期経営計画(2019-2021)の2年目となった2020年度は、建築大型工事の多くが施工の初期段階であったことや、海外での建設計画の延期等により、売上高は4,216億円、当期純利益は87億円と前年度を下回る水準となりました。特に、工事採算の低下という課題が顕在化しており、施工プロセスの管理を再度徹底するなど、実効性のある体制をあらためて構築します。

2021年度は、中期経営計画(2019-2021)の最終年度となります。コロナ禍の影響が継続して予断を許さない状況ではありますが、成長戦略を着実に実行し、目標の達成に向けて役職員一丸となって取り組んでまいります。

フィナンシャルレビュー

サステナビリティへの取り組みを推進

近年、サステナビリティの重要性が増してきています。世界では、気候変動をはじめとする環境問題や人権問題、国内においては自然災害の甚大化やインフラの老朽化、少子高齢化の進行や建設技能労働者の不足など、長期的な社会課題が山積しています。

当社グループでは、長期的な社会課題の解決に向け、技術力をはじめ、これまでに培ってきた強みを活かし、また、役職員一人ひとりが未来志向をもって行動することで、サステナブルな事業活動を実践していきます。また、サステナビリティをしっかりと取り入れて経営を行うにあたり、2020年度は、当社が取り組むべき重要課題(以下、マテリアリティ)の特定を行いました。それぞれのマテリアリティに対する重要業績評価指標(以下、KPI)を設定のうえ、KPIをもとにPDCAサイクルを回し、課題解決に向けた事業活動を強化してまいります。

マテリアリティ・KPIs

1.脱炭素社会の実現(TCFDへの賛同)

気候変動対策は当社グループが優先的に取り組むべき課題の一つです。自然災害の頻発や甚大化、脱炭素社会への移行に伴う環境規制の強化は、中長期的にはネガティブな影響を及ぼすリスクではありますが、気候変動対策にスピード感をもって取り組むことで、環境技術などの新たなビジネス機会を創出することができると考えています。これらの対応を加速するため、2021年5月に気候関連財務情報開示タスクフォース(以下、TCFD)への賛同を表明しました。今後はTCFDで推奨される開示項目に沿って情報の開示を行います。

気候変動への取り組み

2.新たな技術開発(SXの推進)

サステナブルな社会の実現に向けて、現在のわたしたちが直接的に提供できるものは、豊かで安心な社会を支える生活基盤です。「いつまでも使い続けられる価値づくり」、「災害に対する安心・安全」を提供するため、サステナブルでレジリエントな技術の積極的な開発によりSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)を推進することで、豊かで安心な「未来」につなげてまいります。

2021年4月に、全社的なSXの推進に向けて、あらゆる分野でサステナビリティを統合的に推進するための組織改定を行いました。コロナ禍の影響で社会変化のスピードが加速し、これからさらに大きな変革を迎えることになります。DXの推進と歩みを合わせ、スピード感をもって、日々新たな価値やビジネスモデルの創出につとめ、外部環境の急激な変化にも俊敏かつ柔軟に対応できる組織を目指します。

サステナビリティ

3.「人財」の育成(ダイバーシティ、人権の尊重)

わたしたちの競争力の源泉は「人財」であり、当社グループの未来を創るのも社員一人ひとりです。当社グループが掲げる「2030年の将来像」は、未来に向けた変革の方向性と目標を示すことにより、社員一人ひとりが将来を見据えて行動していくことを促すもので、全社員で当社グループの持続的成長に取り組んでいく、という強い意志を表しています。

その実現に主体的に取り組んでいくため、社内でも「スピード」、「チャレンジ」、「プロアクティブ」という3つの価値観(バリュー)を常に意識し、受け身ではなく、能動的な行動をとるように発信し続けています。

女性活躍をはじめとしたダイバーシティやワークライフバランスを強力に推進し、仕事と育児・介護の両立や在宅勤務制度の導入など各種制度を充実させることで、女性技術者や女性管理職の増加はもとより、社員活力、エンゲージメントの向上につなげます。

また、当社グループおよびサプライチェーンにおけるすべての事業プロセスで、人権問題に真摯に向き合う必要があると考えています。グローバルな事業活動を展開する企業が果たすべき社会的責任の一つとして、人権の尊重に向けた取り組みを進めます。

柔軟な働き方、魅力ある職場環境の実現と、人材の確保・育成に向け、社員一人ひとりが失敗を恐れず果敢に挑戦する気概を促し、やりがい、働きがいが感じられる企業風土を醸成してまいります。

人材戦略

「未来への挑戦 ~変革を成果につなげる~」

2021年度の社長方針は、「未来への挑戦 ~変革を成果につなげる~」を掲げました。信義と誠実、現場を思うこころを大切に、未来を見据えた変革にプロアクティブに挑み、「2030年の将来像」の実現に向けた成果を着実に積み上げていきます。

当社グループの社会的使命は、磨き続けてきた「技術」と育み続けた「ひと」の力で、社会に対して多くの価値と感動を提供し続け、より多くの人々の暮らしを豊かにすることで、未来へとつなぐ持続可能な社会づくりに貢献していくことと考えています。

手がけているのは、はしも、まちも、ひとも。より安全で安心な暮らしを支えるさまざまなインフラを「つくる」という「ものづくり」とともに、「ひとづくり」を通して、熱い感動、未来への希望、そして、人々の笑顔も「つなぐ」ことができると考えています。その使命感と誇りを胸に刻み、持続的成長に向けて邁進してまいります。

2021年度は、当社グループの中期経営計画(2019-2021)のテーマである「変革の加速」の完遂の年として、より一段と企業競争力の強化と企業価値の創造に取り組みます。ステークホルダーの皆さまのご期待に応えてまいる所存でございますので、今後とも倍旧のご指導とご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願いいたします。

2021年9月

代表取締役社長 近藤 重敏