三井住友建設グループ
中期経営計画 2019-2021
1. 策定の趣旨
「中期経営計画 2016-2018」では、過去に施工した杭工事の不具合事象により毀損した信用や企業価値の回復を経営上の最優先課題と位置づけ、「信頼の回復と企業価値の向上」をテーマに、その実現に向けて全社を挙げて取り組んでまいりました。業績面では、活況な国内建設市場を背景に、計画期間を通じて業績計画値を上回る利益を確保し、自己資本比率や株主還元についても目標を達成する見通しであります。
今後の建設業界を取り巻く事業環境は、国内建設需要の縮小や担い手不足の深刻化、建設生産プロセスにおけるデジタル化の急速な進展などの変化が予想されています。こうした事業環境の変化に対し、当社グループの強みを活かして、社員一人ひとりが未来志向を持って行動し、持続可能な社会の実現と当社グループの持続的な成長を遂げるため、目指す「2030年の将来像」を『新しい価値で「ひと」と「まち」をささえてつなぐグローバル建設企業』と設定しました。
この将来像の実現に向けて、本計画においては、「中期経営計画2016-2018」に掲げた生産システムの改革や人材確保・育成、社員活力の向上の取り組みをさらに進め、「変革の加速」をテーマに、企業競争力の強化と企業価値の創造に取り組んでまいります。
2. 中期経営計画 2016-2018の総括
「信頼の回復と企業価値の向上」に向けた取り組みが着実に進展
- 業績計画を上回る利益を確保する見込み
2016、2017年度は本業最高益を更新 - 自己資本比率20%超を達成
- 3期連続増配見込み、自己株式取得を実施
- フォーカステーマで着実に成果
基本方針 | 総括 |
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生産システムの改革 |
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人材確保・育成 社員活力の向上 |
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◆ 業績目標の達成状況(連結)
2018年度 | ||
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計 画 | 見通し | |
売上高 | 4,400億円 | 4,450億円 |
営業利益 | 220億円 | 260億円 |
営業利益率 | 5%以上 | 5.8% |
自己資本比率 | 20%以上 | 26.2% |
配当性向 | 20%以上 | 21.4% |
-
【売上高・営業利益率の推移】
-
【自己資本の推移】
-
【配当の推移】
- ※2016年度の1株当たり配当金については、2017年10月に実施した株式併合を考慮
3. 事業環境認識
当面は堅調に推移するとみられるが、中長期的には不確実性が増す
◆変化する事業環境 |
◆当社グループが持つ強み |
社会環境
業界環境
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技術力
ネットワーク
海外実績・歴史
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不確実な将来に対し、当社グループの強みを活かして
能動的に行動していくために、2030年に実現すべき将来像を設定
4. 2030年の将来像

新しい価値 | |
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建設生産革命の実現 ~次世代建設生産システム~ |
建設から広がる多様なサービス |
BIM/CIMを基軸に、3次元の設計・施工計画とICTを実装してデジタル化された建設現場が連携する、次世代の建設生産システム |
自社保有の技術やノウハウと異業種連携により、再生可能エネルギー、社会インフラの管理・運営など、新たな事業領域でのサービスを創出 |
サスティナブルな技術 |
グローバルな人材 |
環境負荷の小さな材料・工法、構造物のライフサイクルコストを最小化する技術など、環境・社会・経済の三側面から持続可能な社会の実現に資する技術 |
高い専門性と教養、プロジェクトマネジメント力などを持ち、国内外で活躍する多様な人材 |
高い生産性 |
強固な海外事業基盤 |
事業ポートフォリオ変革 |
Green Challenge2030達成 |
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効率的な生産プロセスと |
世界に広がるビジネスフィールド(建設・サービス提供) |
「ものづくり」から広がる多様なサービス(エネルギー、インフラ運営) |
地球環境への貢献 |
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生産性向上 30% |
連結海外売上比率 30% |
新規・建設周辺領域※比率 30% ※ 単純請負によらない領域(国内・海外) |
Green Challenge 2030 KPIの達成 |
建設生産革命の実現
当社が取り組んでいる土木・建築共通のトータル建設マネジメントシステム(DCM(DIM/CIM/MIM)®)を進化させ、建設生産に先進的なICTを融合した「建設生産革命」を国内外で実現
「 SMile生産システム 」
~ すべての建設現場を笑顔に ~
生産性の向上 | ゼロ災の実現 | 品質の確保 |
---|---|---|
生産プロセスのデジタル化を推進し、生産性を大幅に向上 | 安全管理にICTを活用し、災害を未然に防ぐ仕組みを構築 | ICTを活用した不具合の未然防止と技術の伝承により、品質を確保 |
「SMile生産システム」
3次元の設計・施工計画とIoT、AI、ロボットなどのICTを実装してデジタル化された建設現場が連携する、次世代の建設生産システム
環境方針 "Green Challenge 2030"
『人をつなぐ 未来につなぐ』
「ひと」と「まち」をささえてつなぐ総合建設会社として「生活の質の向上」と「環境負荷低減」を両立し、持続可能な社会の実現に貢献します
1. 脱炭素社会への貢献 | ![]() ![]() ![]() |
2. 循環型社会への貢献 | ![]() ![]() ![]() |
3. 自然共生社会への貢献 | ![]() ![]() ![]() |
4. 環境リスクの管理 | ![]() ![]() ![]() |
5. 環境コミュニケーション・ESDの推進 | ![]() ![]() ![]() |
※ESD:Education for Sustainable Development(持続可能な開発のための教育)
◆ "Green Challenge 2030" のKPI
- 施工段階におけるCO₂排出削減「原単位を1990年比で50%削減」
- 建設廃棄物のリサイクル率「100%」 (石綿含有廃棄物、特別管理廃棄物は除く)
- 生物多様性に及ぼす影響の「回避、最小化」
- 環境事故・事件「0件」
- 再生可能エネルギー事業の推進「発電能力:650MW以上」
5. 2030年の将来像の実現に向けて
「2030年の将来像」の実現に向けて、中期経営計画 2019-2021を策定

6. 経営計画の体系

7. 基本方針
「変革の加速」
変化する環境に柔軟に適応し、SDGs達成への貢献とともに、企業競争力の強化と企業価値の創造に向けた変革を加速させる
1. 建設生産プロセスの変革 生産性 10%向上(2018年度比)
SMile生産システムの構築に向けて、建設生産のデジタル化、工業化などにより省人化・省力化を推進し、生産性向上と働き方改革を実現する。
2. 海外事業の強化 海外受注高 1,000億円
海外事業マネジメントを強化し、海外事業領域の拡大に向けてリソースシフトとネットワーク構築を進める。
3. 事業領域の拡大 成長投資 500億円(計画期間累計)
再生可能エネルギー事業を中心とした新規事業と建設周辺事業の拡大を実現するために、積極的な投資や異業種とのパートナーシップにより、競争力のある新たな事業を創出する。
8. 経営数値目標
◆経営数値目標(連結)
2021年度 | |
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売上高 | 5,000億円 |
営業利益率 |
6%以上 |
ROE |
12%以上 |
自己資本比率 |
30%以上 |
◆海外事業の強化に関する目標
海外受注高(現地法人含む) |
1,000億円 |
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◆生産性向上に向けた目標(個別・国内)
1人当たり完成工事高 |
10%向上(2018年度比) |
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株主還元
◆ 総還元性向(連結)30%以上 (2021年度)
財務体質の一層の改善を図りつつ、安定した配当を維持するとともに、自己株式の取得を含めた利益還元を実施

※ 2016年度以前の1株当たり配当金については、2017年10月に実施した株式併合を考慮。
※ 2017年度総還元性向には、自己株式15億円の取得を含む。
9.投資計画
◆投資規模 500億円 (計画期間累計)
持続的な成長に向けて、投資を加速
投資項目 | 投資規模 | 主な内訳 |
---|---|---|
技術開発 人材・基盤整備 |
100億円 |
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事業領域拡大 | 400億円 |
|
合 計 | 500億円 |
長期的に投資が可能な財務の健全性を維持するため、自己資金による投資を基本としつつ、経営状況や市場環境等を勘案し、社債発行などを含め最適な資金調達方法を検討。
(日本格付研究所:長期発行体格付「A-(Aマイナス)」 を取得)
10. 事業戦略
国内土木事業戦略 |
国内建築事業戦略 |
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[1] 建設生産プロセスの変革
[2] 重点取組分野
|
[1] 建設生産プロセスの変革
[2] 重点取組分野
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海外事業戦略 |
新規・建設周辺事業戦略 |
[1] 事業領域の拡大
[2] グローバル体制の強化
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[1] 新規事業
[2] 建設周辺事業
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11. 基盤戦略
技術戦略 |
[1] SMile生産システムの実現に向けた技術開発 ※ Dura‐Bridge:鉄製部材を使用しない超高耐久橋梁 |
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人材戦略 |
[1] 働き方改革、魅力ある職場環境の実現 ・時短プログラムの推進 ・多様な働き方をサポート [2] 人材の確保・育成 ・多様な人材の獲得と人事制度再構築 ・グローバル人材の育成 |
ICT戦略 |
[1] 建設事業の競争力強化に向けたデジタル化の推進 [2] デジタル技術を活用した基幹業務の効率化 [3] 情報セキュリティ対策の強化 [4] 全社的なICT活用に向けた推進体制の整備 |
ESG経営 |
E:環境方針 "Green Challenge 2030" に基づく持続可能な社会の実現 S:快適で働きやすい職場環境の実現(働き方改革、ダイバーシティ推進、健康経営) G:法令遵守の徹底、コーポレートガバナンスの継続強化 |
12.安全文化の構築と究極品質の実現
[1] 「安全」・「健康」・「快適」な職場の実現
- PDCAの繰り返し実施による作業の安全化、安全衛生パトロールの充実
- 災害事例、経験・知見を踏まえた社員・職長への安全衛生教育の充実
- 災害の未然防止に向けた、施工計画段階におけるリスクアセスメントの徹底
- 働き方改革を実現する健康で快適な作業環境整備の推進
[2] 施工プロセスを重視した『究極品質』の早期実現
- 「5S(整理・整頓・清掃・清潔・誠実)の徹底」による安全・品質レベルの向上
- QSA(Quality Safety Auditor):品質安全監査員による現場力の向上
- 「品質監査」による施工プロセスの妥当性確認(有効性監査)
- 「品質不具合"ゼロ"」を目指す品質管理活動の実践
- 「究極品質」活動の海外展開
[3] ICTを活用した安全・品質管理の展開
- 災害や品質不具合を未然防止する「スマート Safety & Quality」の構築