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モールグラウト(MOLE-Grout)工法 とは

モールグラウト工法は、高品質な可塑性充填材を坑外から3km以上圧送することが可能な小断面トンネルに特化した覆工背面空洞充填工法です。
モールグラウト工法では施工条件に応じて次の2種類のタイプが選択できます。

タイプ圧送距離設備・配管圧送量特徴
WQ 3km程度 2系列 18m3/h 超非漏出性
WL 5km以上 1系列 4m3/h 超長距離圧送

背景

NATM導入以前の矢板工法で施工されたトンネルでは、覆工と地山の間に大小の空隙が存在します。トンネルの長期的な安定性を確保するためには、この空洞を充填し、覆工が十分な耐荷機能を発揮することが重要です。
しかしながら、小断面トンネルでは設備を坑内に搬入できず、充填可能な範囲が限定されていました。この課題を解決するため、坑外から長距離圧送充填を可能としたのが、モールグラウト工法です。

grout_01.pngタイプWQ 充填材混練り・圧送経路略図

 

タイプWQ 充填材配合例
300ℓ/minA材固化材120ℓ/min 135.00kg 結合材
MG-A1 2.42kg 可塑促進材
249.60kg
B材MG-B1180ℓ/min

18.00kg 可塑化材
MG-B2 0.76kg 粘度調整剤
574.0kg

特徴

  • タイプWQは、蛇口等の水道器具と同等の非溶出性(high Quality)を有し、上水道トンネル等の補修に適します。また、18m3/hの大容量圧送が可能(large Quantity)で充填作業の工期短縮が可能です。
  • タイプWLは、フライアッシュのベアリング効果と新たに開発した流動化調整材により、1系列配管で5km以上の可塑性充填材を圧送できます(Long distance)。このため、配管と混練りプラントが1系列で済み、設備費が半減されます(Light utility)。

 

 

充填材の基本性能

"矢板工法トンネルの背面空洞注入工 設計・施工指針"で規定された覆工背面充填材の要求性能と、充填材の基本性能を比較して示します。

性能項目覆工背面充填材の要求性能MOLE-Grout充填材の基本性能
充填性 (流動性) 覆工コンクリートクラックからの漏出や地山への逸走が少なく、充填性に優れていること。 フロー値(JHS 313) 100±20mm
圧縮強度 充填材により作用土圧を均等に伝達する必要があり、1.5N/mm2以上の圧縮強度が求められる。 圧縮強度 1.5N/mm2以上
比重 充填箇所に湧水のあることが考えられるため、比重が1.0以上である必要がある。また、既設覆工コンクリートへの影響を考慮して軽量であることが求められる。 比重 1.34±0.1
非漏出性 注入材がトンネル内に漏出するおそれがあるため、覆工コンクリートからの漏出や地山への逸走が少ないこと。 「矢板工法トンネルの背面空洞注入工-設計施工指針4.8試験法(中日本道路株式会社)」に示される試験性能をいずれも満足する。
水中分離抵抗性 充填箇所に湧水があることが考えられるため、水に希釈されにくいことが求められる。
非収縮性 覆工と背面の地山を密着させる必要があるため、ブリージングが少なく、注入後の体積変化が少ないこと。
耐環境性 地下水と接触した場合に、耐環境性が求められる。 無機材料とする。

施工手順

  • STEP 1 坑内配管・配線の敷設と機器の設置

覆工背面充填工事に必要な充填材供給・回収配管、坑内照明、坑内通信などの坑内ライフライン系統の敷設と、ミキサーやポンプなどの充填機器の設置を行います。

  • STEP 2 注入孔削孔と注入管の設置

坑内配管・配線敷設と機器設置と並行して、コアボーリングマシンにより充填孔(φ64.2mm)を3~4m間隔で削孔し、注入管(VP50ねじ切り、取付け治具)を取り付けます。

  • STEP 3 覆工背面の充填

注入管設置が進んだ段階で、覆工背面の充填を開始します。充填は、トンネル延長方向の低い地点から高い地点へ片押しで行います。各孔の充填終了後、注入管をねじプラグで閉塞し、次の充填孔に移動します。

  • STEP 4 坑内配管・配線の撤去

すべての充填が終了した後、充填材供給・回収配管、坑内照明、坑内通信などを撤去し、トンネルを解放します。

充填材混練りプラント
充填材混練りプラント

充填材の注入状況
充填材の注入状況

grout_02.png
坑外配管

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