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橋をつくり続ける会社の橋好き女子、
その名も「橋ガール」!
「橋好き女子」が勝手に橋の魅力を紹介しちゃう
プチプロジェクト。
『お橋見』のためなら日本全国、
いや世界の果てまでいってきまーす!

#13 備前♥日生大橋

カモちゃん
「あーん、はじまっちゃう~」

パーン!スタート?!!
(いっせいに走り出す・・・)

<話は1ヶ月ほど前にさかのぼる・・・>

ハカセ
「いよいよ日生(ひなせ)大橋が完成しますね。あそこはカキがおいしいところなんですよね~」
カモちゃん
「いーですね。わたし、カキだいすきですよ。」
ハカセ
「じゃ、行ってきてくれますか?」
カモちゃん
「いーんですか。」
ハカセ
「ぜひぜひ。思いっきり走ってきてくださいね。」
カモちゃん
「えっ、走る???」
ハカセ
「わたしは当日予定がありまして、どうしても行けませんのでヨロシクお願いします!」

今回のレポーター紹介

左:カモちゃん 突然ですが、橋ガールとしてお橋見レポートすることに。がんばりまーす。右:まっすー マラソン大会ということで呼ばれた若手橋梁エンジニア。ハカセの代役としてデビュー!?

橋の概要

名称
備前♥日生大橋(びぜんひなせおおはし)
位置
岡山県備前市日生町
橋長
765.0m(86.8+170.0+155.0+2@135.0+80.8m)
形式
PC6径間連続エクストラドーズド
竣工年
2015年
側面図

というわけで、たまたまハカセと話していたカモちゃんは、日生大橋の開通記念で開催されるマラソン大会に、急遽「橋ガール」として出場することになってしまったのでした!橋長 765m を誇るこの橋は、往復してくるだけでも立派なマラソンコース!ハカセの代役を務めるまっすーと二人、3kmのペアマラソンに挑戦中です。

カモちゃん
「はっ、はっ、、、」
まっすー
「はぁ~、ひぃ~、はぁ~、ひぃ・・・」
カモちゃん
「あれ???どうしたんですか、まっすーさん。」
まっすー
「カモちゃん・・・はぁ、はぁ、夕べは飲みすぎちゃったよ~」
カモちゃん
「ですよね~。あれはかなりでした。『エクストラドーズド橋』の一発ギャグとか、ありえない雰囲気で!」
まっすーの一発ギャグ(画:カモちゃん)
まっすー
「うっ、よく覚えてないけど・・・てか、カモちゃんだって走る前にずいぶんあくびを連発してみたいだけど。」
カモちゃん
「ギクッ!やっぱり飲みすぎましたよね~。地元のみなさん、楽しい方たちばかりで・・・」
まっすー
「とにかくなんとかこの坂をのぼりきらねば・・・」
まっすー
「ふぅ?、ようやく主塔のところまで来れたか。ところで、エクストラドーズド橋についてはちゃんと勉強してきたかな?」
カモちゃん
「もちろんですよ。センパイ橋ガールが小田原でお橋見していたやつと同じですよね。」
まっすー
「そう、このエクストラドーズド形式は、その小田原ブルーウェイブリッジで当社が世界で始めて施工した橋梁形式なんだよね。その後に何橋も施工している得意分野だね!」
カモちゃん
「同じく前に紹介されていたベトナムのガ・トゥ・ソ橋もそうですよね。」
まっすー
「たいへんよくできました。この日生大橋は、それに加えて維持管理の面に配慮して全ての橋脚でラーメン構造が採用されていてね。で、このラーメン構造というのは橋脚と主桁が一体化していてその分の維持管理が不要になるんだよ。」
カモちゃん
「そ、そうなんですか・・・(走りながらそんな説明されてもよくわからないですぅ・・・)」
カモちゃん
「それにしてもこの景色といい、この橋といい最高です!エクストラドーズドさまさまです。何よりこの走ったときの開放感ったらない~」
まっすー
「でしょ。カモちゃん、それはこの『主塔』の形が関係しているんだけど何か気が付いた?」
カモちゃん
「えっ、え!?いきなりここでお橋見クイズですか?よくわかりませーん(> <)」
まっすー
「走っているからって油断したら・・・だめよ~、だめだめ。実はね、この左右にある主塔はね、空に向かって伸びていくにつれて間隔が少しずつ開いていってるんだよね。」
カモちゃん
「あ、そう言われてみれば・・・(さりげなくギャグいれてるけど・・・反応しづらい)」
まっすー
「そして、この斜材部分の色が白いのは景観を意識してのものだよ。瀬戸内の穏やかな風景に溶け込みながらもアクセントを加えようと周りの景観との調和を考えながらデザインされているんだ。」
カモちゃん
「橋ってコンクリート色して無機質なものだと思っていたのに、実はなんだか・・・あったかいんだから~♪」
まっすー
「む、カモちゃんも意外に余裕だねぇ。えーっと、らっ、、、じゃなくて、マッスーゴレライ・・・」
カモちゃん
「・・・・・」
主塔は空に向かって少しずつ開いていくデザイン!
カモちゃん
「そうそう、色と言えば・・・ここ!!ここの主塔の手の届くところの色が変わってますよね!どういうことでしょう!?」
まっすー
「ふっふ、これはね、カモちゃんみたいないたずらっ子が橋に落書きをしても(※ 落書きは絶対してはいけません!)掃除がしやすいようにコーティングしてるんだよ。」
カモちゃん
「(ひとこと余計ですね!)なるほど~、まっすーさん、さすがですね。勉強になりました。これでまっすーさんもハカセ2号になれるんじゃないですか!?」
まっすー
「ふふん、見直したか!(ハカセに聞いて予習しといてよかった~)」
カモちゃん
「あ、残り1キロ地点だって!まっすーさん、スピード上げましょう!」
まっすー
「ぼくは全然いいいんだけど・・・カモちゃん、大丈夫?」
カモちゃん
「なにを言ってるんですか。今日この日の為に私はどれだけ自分に厳しく走りこんできたことか。それはもうストイックに!!!そして今日、この日の為に私は、先週美容院へ行って髪型も整えてきたのですよ!それはもうビューティフルに!!!いっきますよーーー」
まっすー
「お、おう。(なんか普段の職場の雰囲気と違って意外と活動的だったのね)って、あれ?」

ぴゅーーーん

まっすー
「こらーー!これはペアマラソンだぞーー!」
意外と活動的!なカモちゃん
カモちゃん
「ゴール!!!あ、意外にあっさりおわっちゃいましたね。」
ふたり
「おつかれさまー(ハイターッチ!!)」
カモちゃん
「気持ちよかったですね?。これでおいしいものを食べに行ける・・・ん?まっすーさん、ゼッケン付け替えて何してるんですか?」
まっすー
「じゃぁ、ぼくはこれから本番の10km部門があるからあとのお橋見のことはよろしくね!」
カモちゃん
「えーー!?この後さらに10kmですか!?っていうか、私こんなところで放置ですか???」
まっすー
「大丈夫。きっとその辺の山の中に所長がいるから、つかまえて案内してもらうといいよ。」
カモちゃん
「その辺にいるって、シカやイノシシじゃないんだから・・・」

ふたたび応援のために橋の上へ

カモちゃん
「がんばれーーーー(まっすーさん、まだかなぁ・・・)」
カモちゃん
「あっ、来た来た!まっすーさーーん、がんばれーーー!」
まっすー
「ありがとう!がんばりまーーーす!」
カモちゃん
「写真撮りますよ~って、ああっ!ブレた!ちょっと、ストップストップ!!」
まっすー
「ムリムリムリムリ???!じゃーね!!」
カモちゃん
「あーあ、いっちゃった。あっ、そういえば走っているときは気が付かなかったけど、あの浮いているのってカキの養殖棚よね。ずいぶんいっぱいあるんだ。食べたいなぁ?」
オオクボ所長
「おーーーい、カモちゃん!こっちこっち」
カモちゃん
「え!?しょ、所長!?お疲れ様です。(ほんとに山にいた!!この現場をずーっと担当されて完成させたオオクボ所長よね。さすがオーラが違う・・・)」
オオクボ所長
「ちょっとこっちおいでよ!橋の下側も見せてあげるよ。」
カモちゃん
「うわー、これいつものお橋見アングルじゃないですか。やっぱりこういうところに来ないと橋ガール感でないですよね。ん?そして、見つかる橋の裏に孔!(これ、橋ガールの定番ストーリーよね)」
オオクボ所長
「ここは橋の一番端っこの下側なんだけど、橋桁の中に入る点検孔があるんだ。そしてこれが支承と言ってね、ゴムでできていて、この部分で橋がのびたり縮んだりするのを吸収しながら橋の重量を支えているんだよ。」
カモちゃん
「へー、こんなゴムで支えられているんですか。でも所長、橋って伸びたり縮んだりするんですか?」
オオクボ所長
「夏になって暑くなれば伸びるし、冬の寒いときは縮むんだよ。この橋の長さだと1℃温度が上がると8mmくらい橋が伸びるんだよ。この辺りだと年間30℃くらいの気温差で24cmくらい変化することになるんだよ。」
カモちゃん
「コンクリートって固いイメージですけど、それが伸びたり縮んだりするなんてなんだか信じられないですね」
オオクボ所長
「それだけじゃない。コンクリートは長い年月かけて中の水分が少しずつ抜けて縮んでくるし、プレストレス・・・って聞いたことあるよね?あの力によっても長い年月をかけて縮んでいくんだよ」
カモちゃん
「縮んでいっても大丈夫なんですか?」
オオクボ所長
「ちゃんとそれは計算されているから安心だよ。特に長い橋はさっき見たようなゴムを使った支承を橋脚の上に置いて橋を支えることで、ゴムに吸収してもらって橋脚に力が伝わらないようにしているんだ」
カモちゃん
「あれ?でも所長、さっき走っているときまっすーさんが『この橋はラーメン橋でゴム支承がない』ってどや顔で言ってましたよ」
オオクボ所長
「その通り。ここみたいに橋が陸につながる"端"だけはゴム支承なんだけど、それ以外の橋脚につながっているところは全てラーメン構造。支承は金属部品があるから錆びの点検、管理が大変なんだ。特にこの橋みたいに海の上だと錆びやすいしね。それでこの橋では橋脚のところはみんなラーメン構造にしているって訳なんだ。」
カモちゃん
「そうすると、さっきの説明にあった縮む分はどうなっちゃうんですか?」
オオクボ所長
「そう、鋭いね。この橋の長さは765m。普通ならば橋脚の上にゴム支承が必要な規模なんだよね。でもさっきも言ったように維持管理の面からはゴム支承をなくしたかった。そこで実は将来縮む分で発生する力の分だけ、前もって作るときに逆の力をかけているんだよ。『水平加力』っていってね。なんとこの橋では最大1200tもの力を加えてます。
カモちゃん
1200t !!! あまりに大きすぎて想像つかない・・・。でもそんなこと聞くとますます橋 ♥ になっちゃいますね」
オオクボ所長
「橋の正式名称も備前 ♥日生大橋にもついているしね。さて、そろそろ10キロマラソンも終わったみたいだし、次の場所に行きますか!」
カモちゃん
「次?もしかして、いよいよですね。おいしいーアレ!って、所長そっちは違う方向・・・」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・

操舵室
オオクボ所長
「せっかく東京からお橋見にきたんだからね、専用フェリーで橋を案内するよ。」
カモちゃん
「わー、ぜいたくですね。ありがとうございます!!!」
カモちゃん
「日生大橋は横から見るとまた一段ときれいですね。」
オオクボ所長
「本土側の2つの主塔の間は航路なんだよね。船が通れる幅や高さを確保するためにエクストラドーズド形式が採用されたんだ。」
カモちゃん
「なるほど。船が通るようにするためのエクストラドーズドなんですね。なめらかな弧を描いている感じ。やっぱりこうして見ると、周りにもマッチしてすてきな景色です。日生は海にも山にも恵まれたとてもすてきな場所なんですね。」
オオクボ所長
「この先の島の人たちは、これまで本島につながっていなかったんで、みんなこうして船で移動してたんだよ。」
カモちゃん
「こちらの方には生活に欠かせない移動手段なんですね。でも、船はそんなに頻繁に運行してるんですか?」
オオクボ所長
「いいや、乗れないと2、3時間は待たされることもあるようだよ。」
カモちゃん
「そうすると、橋の完成は島の人達にとっては本当に念願だったわけですね。」
オオクボ所長
「そうだね。今から大体40年くらい前に島のみんなで 『橋をかけたい、本島とつながりたい』 と一家族500円ずつ毎月架橋貯金をはじめたのがきっかけなんだそうだよ。それを行政が認めてくれて、まず奥にある頭島と鹿久居島とを結ぶ 『頭島大橋』 が2004年に完成して、ようやく日生大橋ができて本島とつながったんだ。ほら、頭島大橋が見えてきたよ!」
頭島大橋
カモちゃん
「頭島大橋はアーチ型なんですね。日生大橋より控えめな感じですが、まわりの景色と合わさって和みますね~。」
オオクボ所長
「そうそう、これをみてごらん。あの橋ができたときにはこんな標識も作られたようだよ。」
カモちゃん
「とても可愛らしい看板だと思うんですけど、だれに向けてるんですかね!?」
オオクボ所長
「シカとタヌキ・・・なんだろね。実は橋ができたおかげで、夜な夜な鹿とたぬきが集団で橋を渡って、農作物を荒らすとかで、地元の人たちも困っているみたいだよ。つまり、標識は読めてないってことかな。」
カモちゃん
「なるほど。わたしだっておいしいご飯が食べられるんだったら、毎日がんばって渡っちゃいますもんね。でも、地元の人にとっては切実な問題ですね。」
オオクボ所長
「さて、我々もお腹すいてきたからそろそろ市場に向かうとするか!きっとまっすーももう到着しているはずだよ。」

日生町漁協市場「五味の市」に到着。
ここは、早朝水揚げされた魚が漁師のおかみさん達の手で威勢良く売られている場所。どれも獲れたての新鮮さで、市価よりも手頃な値段で売られていることから大勢の買い物客で賑わっているそうです。午前9時頃から市が立っているらしいが、マラソンを終えた一行が到着したのはすでにお昼をまわっていました・・・

カモちゃん
「おなかすいた―――って、あれ?ぜんぜん魚がいない!」
オオクボ所長
「ははは、もうお昼過ぎだし。仕方ないね。」
カモちゃん
「そんな・・・せっかく新鮮な海の幸をと思ったのに!なにかないんですか!!」
まっすー
「おーーい、カモちゃん、こっちこっち。ほらほら、こんなものが。」
カモちゃん
「あ、ソフトクリームじゃないですか!わーいわーい、ってあれ???なんですかこの刺さっている物体。まさか・・・」
オオクボ所長
「まぁ、ひとくち食べてみなさい。」
まっすー
「あ、意外といけますよ、これ。」
カモちゃん
「ほんとですか!? どれどれ・・・あ、ぐふ・・・ふーん。今まで味わったことのない味。カキフライとソフトクリームの味はわかるんですけど、このソース・・・」
まっすー
「チョコレートソースかと思ったら、まさかカキフライ用のソースだとはねぇ。」
カモちゃん
「あえてここでは評価はさけますが、まっすーさん、まさか今日はこれだけじゃないですよね?ソフトクリームだけじゃ足りないです。カキオコペコペコ丸です。ほら、あそこにお店あるし。」
まっすー
「はいはいはいはい。じゃぁ、いよいよメインディッシュといきますか。」
カモちゃん
「こ、こんなに牡蠣入ってる。あ~、ようやくカキを味わえた?。最高!」
オオクボ所長
「今日一日、マラソン参加にマラソン取材と、ご苦労さまでした。お腹もふくれたことだし、最後に私のとっておきの場所に連れて行ってあげようか!」
カモちゃん
「そうそう、今日のべスポジってやつを決めなければですよね。よろしくお願いします!」
ということで、今日の取材はここまで。
最後に、決めのポーズ
まっすーさん直伝の一発ギャグ「エクストラー、ドーズド!!」
たいへんよくできました!

カモちゃんの絵日記

2015年6月 行った場所:備前♥日生大橋

日生の夜。リアル 『あまちゃん』 ワールド!!すてきな観光協会のみなさんでした!

  • カモちゃん

―つづく

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