#03 小田原ブルーウェイブリッジ
今回「橋ガール」は都内を飛び出し、小田原まで取材に行って来ました! 紹介するのは、車のCMでもチラッと登場したことがある世界初のエクストラドーズド橋です。さてさて、出張取材でテンションのあがる二人の取材は どうなりますやら、、、
橋の概要
- 名称
- 小田原ブルーウェイブリッジ
- 位置
- 神奈川県小田原市早川
- 橋長
- 270.0m(73.1+122.0+73.1m)
- 形式
- 3径間連続PCエクストラドーズド箱桁橋
- 工法
- 張出し架設工法
- 竣工年
- 1994年
- 「第3回にして、とうとう出張の取材だー!!嬉しい!!」
- 「ですねー。今回は後楽園じゃなくてホッとしましたよ。小田原の次の駅、『早川』まで。何気に長い旅でしたー。天気もいいし「お橋見」日和ですね。」
- 「雪のかかった富士山がキレイだったよね。 おっと、この駅のホームからもバッチリ見えるじゃない、小田原ブルーウェイブリッジ!本当にブルーだ。すごいね。」
- 「きゃあああ。いいですね~。もうこれで十分じゃないですか?」
- 「ダメダメダメ。近づけば近づくほど色んなことが見えてくるってもんよ。もっと近くに行ってみるよー。レッツゴー!!」
- 「いつになくセンパイ、テンション高いですね!!」
- 「そりゃそうよ。電車乗り継いでここまでやって来れた訳だし。それにこの小田原ブルーウェイブリッジはPC橋で世界初のエクストラドーズド橋なの。だから色んな賞を総なめにしてるんだから!!」
- 「総なめって、どんな賞がそもそもあるのかもわからないですけど... それにエクストラドーズド橋がどんなものかもさっぱりわからんとです。」
- 「急に『ひろし』になっちゃったね。世界ひろしと言えども、世界的な賞と日本の権威ある賞を受賞した橋っていうのはなかなか無いものよ。 『fib賞』という、映画界でたとえればPCのアカデミー賞みたいな賞、 『土木学会田中賞』っていう日本アカデミー賞的なもの、 それに『PC技術協会賞』というブルーリボン賞みたいな賞。そんな権威のある賞を3つも受賞しているの。」
- 「すごーい。それはやっぱり『世界初』ってことが理由でそこまでの賞をいただけたんでしょうか。」
- 「そうね。それまで学術的には研究されていたらしいけど、実際に橋を造ったのはこの小田原ブルーウェイブリッジが初めてだから。」
- 「それでエクストラドーズド橋っていうのはどんな橋なんですか?」
- 「斜張橋とエクストラドーズド橋がどう違うのかってことも私にはわかっていない。ちょっと早いけどハカセに小田原まで来てもらっちゃう?」
- 「ですね。ハカセーッ!ノックノック ピンポーン。」
- 「お呼びいただきありがとうございます!お呼びですので小田原まで駆けつけましたよ。 さてさて、エクストラドーズド橋についてですが、こちらの図をご覧下さい。エクストラドーズド橋は1988年にフランスのエンジニアMathivatのより提唱された構造で斜張橋に比べて主塔の高さが低いのが特徴です。橋の支間に対する比率でいうと斜張橋の主塔高さhは支間の1/5くらいですがエクストラドーズド橋は1/15くらいです。橋桁の高さ(桁高H)は桁橋より低くなりますが斜張橋よりは高くなります。なので、両者の中間のような構造ですね。」
- 「では何でこの橋がエクストラドーズド橋になったんでしょうか?」
- 「鋭い質問ですね! 小田原ブルーウェイブリッジは、小田原港の上に架かるので下を通る船の航路の高さを確保しなくてはなりませんでした。桁橋では桁高が高くなり橋全体が重くなって基礎が大きくなってしまい、斜張橋では支間が短く経済的な効果が発揮できませんでした。そこでエクストラドーズド橋という中間の形式が採用されたのです。この橋が先駆けとなって、エクストラドーズド橋は世界中で作られるようになったんですよ。」
- 「なるほど、パイオニアなんですね。 ところで、塔のてっぺんが少しふくらんでそこから「斜材」出てきてますが、あの中はどうなっているのですか?」
- 「実は、塔を挟んだ左右の「斜材」は1本のつながったケーブルです。あの中にはサドルという部品が入っていてケーブルが曲げられているんですよ。「斜材」のかけ方にはこの橋のように1本でかけるものや、塔を境にして二本に分ける場合もあります。」
- 「よく見ると、造形的にもきれいな形になっており、ケーブルも色がグラデーションかかっているんですよ。」
- 「確かに自転車の持つところに似てるよね。」
- 「センパイそれはハンドルです。」
- 「・・・・・」
- 「・・・えーっと、気を取り直して。ハカセ、さっきの説明で桁橋のPC鋼材はなんか上に行ったり下に行ったり上下してますが、何か意味があるんでしょうか?真ん中じゃダメなんですか?」
- 「プレストレストコンクリートは、引っ張る力に弱いコンクリートをあらかじめPC鋼材で補強したものだというのは、前に話しましたよね。それではこんな風に車が橋の真ん中を走っている場合を考えてみましょう。このとき橋は真ん中がたわみますのよね。」
- 「このような変形をすると真ん中では橋の下側が、橋脚のところでは橋の上側が引っ張られるのが想像できますか?」
- 「ふんふん。何となく。」
- 「こういう状態を引き起こす力を「曲げモーメント」と言いまして橋に発生する力の一つです。」
- 「ここで先ほどのPC鋼材の配置と比べてみてください。ほら、弱点となる引張が発生する方にPC鋼材が配置されてますよね。これで効率的に補強しているんですよ。このような配置を「偏心」というんです。」
- 「ちょっと難しいけどなんとなく分かった! よーし、調子出てきたからここでちょっくら「曲げモーメント」さん描いちゃおうかな。」
- 「いやー、かなり偏心 いや変身してしまいましたね。」
- 「PC鋼材は曲げモーメントと戦っているんですね。ってことは新入社員の子たちはこの時期相当な精神的曲げモーメントと格闘しているんじゃないですか?」
- 「そうだね。かなりの曲げモーメント出てるはずだ!!ハカセなら彼らの曲げモーメントをどんな風に和らげますか??」
- 「ウィットに富んだオヤジギャグですかな~。」
- 「ハカセらしい!!ちょっとホッコリしたところでお腹空いてきたねー。ハカセも一緒にいかがですか~?」
- 「私もご一緒してよろしいのですか?」
- 「もちろんですとも!!」
- 「あ、小田原ブルーウェイブリッジのたもとに面白そうなお店があるー」
- 「おみやげ屋さんや、おいしい海鮮が食べられるみたいですね。 あっ、試食もできるみたいですよー。わあー美味しそー!」
- 「ああ、美味しかったです。やっぱり海鮮が何と言っても抜群ですね。私この町にお嫁に来たいです。」
- 「いいじゃない。お嫁においで!ところでハカセ、この橋は前回と同じくディビダーク工法なんですか?」
- 「ディビダーク工法の他にフレシネー工法を使っています。 ちなみにフレシネーはフランスの偉大な技術者の名前です。」
- 「フランス人か・・ きっとこんな方ですね。」
- 「・・・・・・。気を取り直してもう少し近づいて橋を見ましょうよ!!」
- 「おお、情熱が止まらないね。いいねーいいねー。」
- 「近づいたら色んなものが見えてきましたねー。 なんか、2本足でしっかり立っていて迫力ある感じがする。 橋脚も四角じゃなくて六角形になってますよ。」
- 「橋桁の下には点検のためのマンホールがありますよ」
- 「この穴から上部に潜り込んで行くのね。探検みたいでいいね〜。」
- 「センパイ、探検じゃなくて点検ですよ!」
- 「では少し離れて、小田原城から見てみませんか??」
- 「ええええええ。小田原城から見えるんですか?」
- 「見えますよ~。」
- 「天守閣までのぼると・・・み、みえました!!!」
- 「小田原城の天守閣から見る小田原ブルーウェイブリッジもいいですけど、やはり間近で青く輝くブルーウェイブリッジがいいですねっ!!」
タノちゃんの絵日記
2013年4月18日 行った場所:小田原ブルーウェイブリッジ
「街の明かりが
とてもキレイね
小田原
ブルーウェイブリッジ小田原♫
夜もキレイなんでしょう」
―つづく