気候変動への取り組み

I. 気候変動に関する方針

1. 三井住友建設における気候変動の位置づけと基本方針

三井住友建設は、経営理念に「地球環境への貢献」を掲げ、常に人と地球に優しい建設企業の在り方を求め、生活環境と自然の調和を大切に考えています。2018年度には環境方針"Green Challenge 2030"を制定し、総合建設会社として2030年度までに取り組むべきKPI(目標)を設定しました。

 

環境方針"Green Challenge 2030"

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2020年度には、当社が取り組むべき「重要なESG課題」(以下、マテリアリティとします)の特定を行いました。当社にとっての重要度、ステークホルダーにとっての重要度、を検討した結果、気候変動は当社が優先的に取り組むべき課題の一つであるとの結論に至りました。(マテリアリティの特定プロセスについては、本資料「4.リスク管理 (1) 気候変動に関するリスクを識別・評価するプロセス」をご参照ください。)

気候変動は当社にとってリスクである一方、機会でもあります。脱炭素社会への移行に伴う環境規制の強化や自然災害の頻発化は、中長期的に当社の財務にネガティブな影響を及ぼす可能性が考えられます。一方、これらのリスクを回避・低減する施策にスピード感を持って取り組むことはビジネス機会の獲得にも繋がると確信しています。

当社は気候変動への対応を加速するため、2021年度より各本部にサステナビリティ推進組織を設置すると共に、組織横断の「SX(Sustainability Transformation)推進プロジェクト」を創設しました。今後はSX推進プロジェクトの活動を中心に気候変動に関するリスクと機会への対応を推進する予定です。また、次期中期経営計画(2022年~2024年)にも気候変動に関するリスクと機会への対応を反映し、持続可能な社会の実現と当社の持続的な成長の両立を目指します。

II. TCFDが推奨する開示項目に対する三井住友建設の取り組み

1. TCFDについて

TCFDは、金融安定理事会(FSB)により、気候関連の情報開示及び金融機関の対応をどのように行うかを検討する目的で設立された「気候関連財務情報開示タスクフォース」です。TCFDが2017年に公表した「最終報告書(TCFD提言)」の中では、企業が任意で行う気候関連のリスク・機会に関する情報開示のフレームワークが示され、「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」について開示することを推奨しており、当社はTCFDにて推奨される開示項目に沿って情報を開示しています。

2. ガバナンス

■ サステナビリティ推進体制

気候変動を含むサステナビリティ施策*は、取締役会による監督の下、代表取締役社長が委員長を務めるサステナビリティ推進委員会で審議し、重要な事項については経営会議での審議を経て、取締役会で決議します。

当社では、各本部にサステナビリティ推進組織を設置し、経営企画本部長(常務執行役員)がリーダーを務める組織横断のSX推進プロジェクトを創設し、気候変動を含むサステナビリティ施策の立案、展開、進捗管理を行う体制を整えています。

 

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サステナビリティ施策*:気候変動を含むサステナビリティ関連の方針や目標の設定、進捗状況の管理を含みます

3. 戦略

三井住友建設では、気候変動が当社に与えるリスクと機会を把握し、その影響を検討するために、4つの事業(土木、建築、海外、新領域)を対象にシナリオ分析を実施しました。

(1) シナリオ分析の前提

気候変動に関するリスクは、「移行リスク(主に政策リスク)」と「物理リスク(主に自然災害リスク)」に分けることができ、当社は移行リスクが最大化する「1.5℃~2℃シナリオ」と、物理リスクが最大化する「4℃シナリオ」の2つのシナリオを想定した分析に取り組みました。各シナリオの前提条件は、各国際機関等が公表している将来的な気候予測や、日本政府が策定した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」等に基づいて設定しました。時間軸としては、中長期(2030年~2050年)を想定しました。

(主なシナリオの情報源)

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【1.5~2℃シナリオ】

1.5~2℃シナリオは、カーボンニュートラルの達成へ向けた厳しい環境規制が導入され、環境関連技術の開発・普及が進展するシナリオです。世界の温室効果ガスの排出量は削減傾向となり、物理リスクは低く、移行リスクが高い想定です。具体的には、2050年時点で世界はカーボンニュートラルを達成しており、建築(新築・既存)はZEB化され、中高層建築の木造化が普及し、発注者は低炭素な資材・施工法を評価し、CO2配慮公共調達を行っていると想定しています。

【4℃シナリオ】

4℃シナリオは、厳しい環境規制の導入は見送られ、世界の温室効果ガスの排出量は増加傾向の一途をたどり、自然災害が頻発するシナリオです。物理リスクが高く、移行リスクは低い想定です。具体的には、2050年時点では、建築(新築・既存)のZEB化は十分に普及せず、革新的な技術(CCS*、水素、等)の開発は遅れ、自然災害が増加する一方、防災インフラの整備や自然災害の復興需要が増加すること等を想定しています。

CCS(Carbon dioxide Capture and Storage、二酸化炭素の回収・貯留):
発電所や化学工場などから排出されたCO2 を、ほかの気体から分離して集め地中深くに貯留・圧入すること

(2) 気候変動に関するリスクと機会の識別

シナリオ分析に基づき、重要な気候変動に関するリスクと機会の要因、そこから想定される財務的影響の概要を、下表のとおり整理しました。主な財務影響として16項目が挙がり、その中でも「リスク:セメントや鉄などの建設資材の価格変動(高騰)」、「機会:再エネ発電設備・関連設備の建築需要拡大」の2つは全4事業の収益に影響を与える要因であると特定しました。

(表示の説明:◎は全4事業領域に影響がある要因、〇は2~3の事業領域に影響があると評価した要因となります。)

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*1  降雨や気象パターンの変化、平均気温の上昇、海面上昇、等

*2  サイクロン・洪水のような異常気象の深刻化・増加、等

(3) シナリオ分析に基づく対応策の検討

気候変動による16の財務影響の内容を整理し、今後取り組むべき方向性として機会の獲得に繋がる7つのテーマと、リスクの低減・回避に繋がる5つのテーマを特定しました。今回特定したこれらのリスクと機会については、次期中期経営計画(2022年~2024年)において各部門の施策に反映し、持続可能な社会の実現とそして当社の持続的な成長の両立を目指します。

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なお、既に取り組んでいる気候変動に関する主なリスクの対策は以下の通りです。

  • 本社、工場等の建物における災害リスクの評価や対策を実施
  • R&Dセンターにおける技術本部災害対応マニュアルに沿った対策を実施
  • 環境マネジメントシステムにより、環境に影響を与える可能性のある潜在的な緊急事態及び事故の評価・特定を行い、特定したものについては対応手順を作成して、実施し、維持
  • PC工場やR&Dセンターでは、財物保険や火災保険に加入
  • 建設中の建物については、工事の内容に応じて「建設工事保険」、「土木工事保険」、「組立保険」を付保

作業所における熱中症対策としては、保健師のアドバイスを受け作成した『健康チェックリスト(熱中症予防)』を活用し、

  • 各人の健康状態の把握と職長の管理指導強化の推進
  • 毎朝『環境省 熱中症予防情報サイト』から作業所所在地のWBGT(暑さ指数)予報を把握した注意喚起を実施

などを行っています。資材調達の観点では、

  • 環境負荷のより少ない資機材、構・工法、技術及び事務用品等の優先的な調達(グリーン調達)

に努めています。

4. リスク管理

(1) 気候変動に関するリスクを識別・評価するプロセス

2020年度に、当社が取り組むべきマテリアリティの特定を行いました。当社にとっての重要度、ステークホルダーにとっての重要度を検討した結果、気候変動課題は当社が優先的に取り組むべき課題の一つであるとの結論に至りました。 マテリアリティの特定については、「マテリアリティの特定」をご参照ください。 今後、他のリスクと比較した気候関連リスクの相対的重要性を示す予定です。

(2) 気候変動に関するリスクを管理するプロセス

気候変動に関するリスクの特定は、サステナビリティ推進委員会が行います。気候変動に関するリスクの評価は、各事業における気候変動要因を特定した上で、1.5~2℃シナリオ、4℃シナリオそれぞれにおける将来の規制・社会・技術・気象条件等の変化を把握し、財務への影響度を検討し対応策へ反映させます。  また、気候変動に関するリスクについては、企画部が所管する全社のリスク管理プロセスに統合しています。自然災害などの物理リスク、環境規制の強化に係る移行リスクについても管理の対象として設定しています。