#14 君津新橋
終点 君津~、君津~(プシュ~)
- 「やっと到着、やっぱり遠かったわぁ~」
- 「ふふちゃん、ようこそ千葉県君津市へ!」
- 「まったくなんなんですか。仕事中にこんなところまで呼び出してぇ・・・」
- 「たまにはい~じゃない。言った通り、ちゃんと上司も了解してくれたでしょ!」
- 「そうそう、なんかびっくりするくらいすんなりと・・・どうやったの?」
- 「ちょっとね、言ってやったのよ!橋ガール千葉県代表として一言物申~~~す!ってね」
- 「えっ?どうゆうこと???」
- 「ほら、これ見てよ。」
- 「地図???」
- 「これ、あの『橋ガールマップ』よ。関東って東京とか神奈川ばっかりじゃない。おまけにその後、静岡行って、広島、九州・・・ってどうなってるのよ?この千葉にだってすっごいのがあるんだぞー!って偉い人に言ってみた。」
- 「・・・そんなことで取材に来れちゃうんだ。っていうか、ささちゃんって、そんなに橋のこととか詳しかったっけ?『橋ガール』って結構マニアな人たちがチェックしてるって聞いたけど、こんな場所にそんな魅力的な橋があったりするの?」
- 「おだまりなさい、埼玉県民。だからこうして呼んであげたんじゃない!だまってついてらっしゃい!!」
- 「は、はい(なになにこのテンション。それに、埼玉県民関係ないでしょ!まぁ、ここまで来たら従うしかないか)・・・よ、よろしくお願いしますぅ・・・」
ということで、今回のレポーターはこのお2人。
橋の概要
- 名称
- 君津新橋
- 位置
- 千葉県君津市
- 橋長
- 68.1m(アーチ支間66.0m)
- 形式
- PC下路式ローゼアーチ橋
- 竣工年
- 1973年
- 「あの~、まだですかぁ・・・」
- 「ちょっと待って。左手が君津市役所ということはあっちのほうに向かってもう少しのはず・・・」
- 「さっきからもう少しもう少しって!」
- 「えーっと・・・」
- 「あっ、あれじゃない?」
- 「そうそう、あれ!」
- 「青空に映える白いアーチ・・・、美しいわぁ。」
- 「下を流れる小糸川も緑がいっぱいでいい場所にあるよね。白さが映える!」
- 「我が国初のPCローゼアーチ橋!!なんだって。」
- 「なにそれ???」
- 「ま、詳しいことは置いといてさ、ほらここ。昭和48年にできたって書いてあるでしょ!」
- 「ってことは、1973年だから・・・すごい!完成してすでに42年も経ってる!!」
- 「わたしたちよりかなり先輩ってことよね。」
- 「そう考えるとずいぶんお肌が白くてキレイなんじゃない?」
- 「お!気付いてくれた?そうなのよ、今日はそこがポイント。」
- 「普段どんなお手入れをしているんだろう???って感じ。なんか橋ガールっぽくなってきた。」
- 「でしょ。・・・ってことで、いつものようにハカセをお呼びするって流れでいってみよっか。」
- 「賛成!ではでは・・・」
- 「せーの、ハ・カ・・・・・」
とそのとき、ガールズの前に1台の車が止まった!
車の中から出てきたのはハカセ!ではなく、君津市の林さん!
- 「こんにちはぁ!」
- 「あー、林さんじゃないですか!!どうしてここに。」
- 「さっき、事務所宛てに匿名の連絡があってね。君津新橋あたりに橋ガールが現れるとかって・・・」
- 「何ですか、それ?うーん、もしかしてそれってハカセの仕業?」
- 「まぁ、それはさておき、こうやって本物の橋ガールに会うことができたわけですから、今日は私がこの橋の魅力を紹介してあげますよ。」
- 「ほんとうですか?ありがとうございます!!」
- 「ねえねえ、ささちゃん、こちらのお方は?」
- 「君津市役所 建設部管理課の林課長さん。この橋のことなら何でもご存知の方よ。」
- 「えー!!頼もしいです。林さん、是非この橋の話を詳しく聞かせてください!」
- 「ハイ。わかりました。何でも聞いてください。」
- 「よろしくお願いします」
- 「さっそくなんですが、そもそもこの橋はなんでこんな形をしてるんですか? 概要を見ると『PC下路式ローゼアーチ橋』って書いてあるんですが、これまでのお橋見にはなかった形式で・・・」
- 「なーんだ、ささちゃんも知らなかったんじゃない。」
- 「いいの、細かい事いわない!」
- 「そうだね。ではまず橋の形について解説していきましょう。こちらの橋はアーチ橋の一種ではあるんですが、これまでに橋ガールが紹介した御岳橋や外津橋の上路式に対して、下路式という構造になっていますね。わかりますか?」
- 「あ!なるほど。道路がアーチの下にある、ってことですね!」
- 「正解です!こちらの川幅約60メートルあるんですが、それを一跨ぎにするためにこのようなアーチ形式しています。」
- 「なるほど・・・」
- 「実は、元々この少し上流に別の橋があったのですが、1970年の豪雨で小糸川が氾濫して流出してしまったんですね。ほら、あそこにあるのが昔の橋の一部です。そこで、新しい橋は川の中に橋脚を造らなくて済む下路式アーチ橋という形式を計画したんです。」
- 「それで上側に大きくアーチを描く橋になったんですか。遠くから見てもすごく存在感ありますよね。」
- 「美しいでしょう(メガネキラーン!!)。地元では別名『太鼓橋』とも呼ばれていてとても愛されているんですよ。」
- 「とすると、これまで紹介された橋たちとは架設の仕方がずいぶん違いそうですね。この大きなアーチはどうやって作ったんですか??」
- 「そう聞かれると思ってこちらの写真を用意しておきました。これが建設当時の様子です。工事のときには、こんな感じで川からガッチリ、ベントと呼ばれる支柱と足場を組んで作っていったんです。」
- 「でっかいジャングルジムみたい!」
- 「テレビでやってるSAS○KEのセットみたい!!」
- 「支間66m、高さ13m超えのアーチ全体を作っていますからね。結構な迫力ですよね。」
- 「ところで、さっきから気になっているのですが、この橋は1973年に生まれたにも関わらず、今でも若さと抜群のプロポーションを保てているようですが、どんなお手入れをしてるんですか?」
- 「さすが橋ガールたちは、その辺が気になるわけですね。実は、この橋は3年前に大きな補修工事を経験しているんですよ。アーチと橋桁の間を縦につないでいる棒のような部分がありますよね。これは「吊り材」という名前の通り、橋桁を吊って支えている部材なんですが、2008年にこの吊り材の一本が経年劣化で腐食して破断してしまったことがあって、ほかも含めてすべて取り替えるということがありました。その時、現在の地震に対する基準にも耐えられるように補強することになって、いまのようにきれいになったんです。こちらが補修前と補修後の写真ですよ。」
- 「へぇ~、確かに印象が違いますね。補修前は結構スッキリしていたんですね。校庭にある『うんてい』みたいよね・・・」
- 「吊り材を交換したってことは、橋桁を支えるためにさっきの写真のような支柱や足場を組んだのですか?」
- 「実は交換の時は少し工夫をしています。はじめにつくった時のように橋桁の下にたくさん支柱をたてると、河川が増水したときに流れを邪魔してしまいます。そこですでにあるアーチに吊り材をつけて橋桁を支えることで支柱を最小限にしたんです。この橋は市内でもとても交通量の多い重要な橋なので、すぐに補修が必要で工事の時期を選べませんでした。日本初ということで形式も珍しく補修の前例もなかったので、建設当時の資料を参考にしながら短い工期で対応したんです。あれは、大変でしたね。」
- 「いろいろとご苦労があったんですね。ちなみに、その吊り材って40年くらいで切れるほどに腐食してしまうものなんですか?」
- 「さすが橋ガール。するどいところを突いてきますね。実は、吊り材の周りをステンレス製の管で保護していたんですが、種類の違う金属が触れ合って電流が流れて起こる腐食というのが起きていたんです。ちょっと難しいんですが、これを「ガルバニック腐食」といいまして・・・・」
- 「ガルバニーーーック コローージョーーーン(腐食)!!」
- 「いやいや、あなたは変身できないから。(っていうか、わたしたち腐食しちゃったらどうするつもりよ!)」
- 「形式も珍しいし、原因の推定やらいろいろなことが初めてで大変でしたが、いろいろな知見が得られて、その後の維持管理の対策に非常に役に立っているんです。」
- 「アーチのところもだいぶ印象が変わりましたよね。」
- 「いまでは違和感なく付いてる風の『ブレース』と呼ばれる補強材ですが、これをつけることで耐震性をUPすることができました。これは実際にこの場所にぴったりあうように部材の寸法を測ってつくったオリジナルのパーツなんですよ。」
- 「あの上のほう、よく見ると色が変わってて湿布が貼ってあるみたいになってますね。」
- 「耐震補強をしたときの跡ですね。炭素繊維という軽くて丈夫な繊維シート材料を巻きつけて補強したのです。」
- 「てっきり部分美白的なことかと思ったら、捻挫防止のテーピングみたいなことしてるんですね!」
(突然、うしろのほうから・・・)
- 「そうなんです!!これからは古くなった橋の補修補強がさらに増えますが、この橋で経験したことはわが社にとっても貴重な多くの知見、研究成果を残してくれました!!」
- 「あれ?ハカセじゃないですか。来てたんですか?」
- 「そう、先人の作った橋をできうる限り、大切にそのまま残していくこと・・・私はね、この橋こそ近年におけるレガシィだと思うんですよ。」(再びメガネキラーン!!)
- 「私もそう思います!」
(がっちり手を取り合う林さんとハカセ)
- 「何かおじさんたち、熱く盛り上がってるな~。この橋はこういう人たちの情熱で守られているんだね。めでたしめでたし。」
- 「ということで、そろそろお昼になりますけど、今日のお橋見はこんなところでよろしいでしょうかね。」
- 「はっ!いかんいかん。熱くなって時間を忘れてた。ではこれにて失礼!!」
林さんときみぴょんにサヨナラしたガールズ&ハカセ
- 「突然来てどうしたらいいかと思ったけど、とっても勉強になったね。わたしも、君津新橋のよーにしっかりメンテナンスしつつ、いつまでも若さと美貌を保ちたいものだわ。」
- 「さてさて、橋の魅力を堪能したところで、好例の『あれ』お願いしますよ!」
- 「えっ!!やっぱりアレやるんですか?」
- 「当然。ミッションです。」
ということで、いつものポーズ
- 「いいですねぇ、大変よくできました。今日はわたしは何のお役にもたてませんで・・・せっかくここまで来たので、少し足を延ばして『若者に負けてない現役バリバリの絶景おじいちゃん橋』をご紹介するってどうですか?いや、ぜひ行きましょう!」
- 「え~~~、いまからですかぁ???そのまえにお腹空いたんですけど~!」
- 「はいはい、わかっておりますよ。まずは近くで美味しいお昼をいただいて、ぜひつぎのお橋見ポイントに向かうことにしましょう。ささっ、あちらの車に乗り込んで・・・」
- 「もう乗ってます!ハカセ、はやく行きましょう!!」
ささちゃんの絵日記
2015年8月3日 行った場所:君津新橋
お橋も女子もメンテナンスが
とっても大事☆
―つづく