#30 桜小橋

～ ある日の夕方、社内にて ～

「はぁ～疲れた～」

「疲れたら甘いものばっかり欲しくなっちゃいます（チョコをぱくぱく）。最近運動不足だし、どうしよう...」

「ホント、わかる！甘いもの止まらないよね。最近、運動不足を解消するために出社する時に１駅分歩いているんだけど、一緒に「歩活」する？」

「すごい！私も一緒に歩きたいです！」

「そしたら早速明日の朝、勝どき駅で電車を降りて、一緒に歩いて出社しようよ！勝どき駅から月島駅までって結構あっという間に着くんだよ」

今回の橋ガールは...

～ 次の日、朝 ～

「今日は天気もいいし、出社前に良い気分転換になりそうですね～♪」

「そうだね。よし、早速会社に向かおう！あ...そういえば、勝どきに当社施工の橋があるんだよ。桜も咲いてきているし、せっかくだから見てみる？」

「知らなかったです、案内お願いします！」

「お目当ての橋の前に、あのマンションも当社施工なんだ。地上50階建てなんだけど、当時は国内トップクラスの高さだったんだって～」

「そうなんですか！よく知ってますね...さすがです！あれ...あれはハカセじゃないですか？何してるんだろう～話しかけてみましょう！」

「ハ～カ～セ。おはようございます！」

「わあ、びっくりした！おはようございます。」

「何をされてたんですか？」

「当社施工の「桜小橋」の写真を撮っていたところです。2人とも、桜と桜小橋のコラボを見にきたんですか？」

「そうです！（運動不足解消のための歩活は黙っとこう...）あ！ハカセ、この「桜小橋」のこと、教えて下さい！！」

「もちろんです。桜小橋は勝どきと晴海をつなぐ歩道橋で、勝どき駅周辺の歩道の混雑緩和と災害時の避難路確保のためにつくられた橋なんですよ」

橋の概要

名称

桜小橋

位置

東京都中央区

構造形式

PC3径間連続ラーメン橋

橋長

87.8ｍ

架設方法

固定支保工架設工法・台船一括架設工法

竣工年

2016年

「2人は、この橋をパッと見た第一印象はどんな感でしたか？」

「私は、今までと比べてスタイリッシュな橋だと思いました！」

「そうですね。この橋の主桁がとても薄くて、とても軽快な感じがしますね」

「薄くしているのには何か理由があるんですか？」

「ほら。ちょうど橋の下を船が通っています。ここは運河なので船が安全に通れるように橋の下に十分な航路空間が必要なんです」

「通常だと、歩道面の高さを全体的に上げたり、歩道面に勾配をつけたりして橋の下に航路空間を確保しますが、この橋の場合は、商業施設に隣接しているので取付け部の段差をつけられなくて、さらに自転車や車椅子が快適に利用できるように勾配も小さくする必要がありました」

「それでどうしたんですか？」

「船の航路を確保しながら、利用者が使いやすい橋にするために主桁高さを1.0mにしています。プレストレストコンクリート橋でこの支間長だと通常は最低でも2.0mくらいの主桁高さが必要なのですが、この橋では通常使われるコンクリートの約2倍の強さがある高強度コンクリートを使うことで、とても小さい桁高を実現しているんです」

「とても強いコンクリートを使うことで、スタイリッシュな橋になっているんですね」

「この橋は施工の方法にも工夫があるんです。施工中の長期間にわたって航路を閉鎖しなくて済むように、プレストレストコンクリート橋ではほとんど使われることがない、台船での一括架設を採用しました。これが施工中の写真です」

「航路部になる支間中央部の主桁は、岸側に設けた作業桟橋上で製作し台船を使って運搬することで、2日間で架設しました。それと、このあたりは海にも近いので潮位の変化もあるのですが、台船内に海水を注排水できるようにして、台船の浮き沈みで高さを調整しながら架設したんです」

「つくり方にもそんな工夫があったんですね」

「少し説明が長くなりましたね。せっかくなので橋を渡ってみましょうか」

「あっ！橋の端、カラフルなタイルが貼られていますよ！ステキな橋ですね」

「橋の端って...タコっしー...おやじギャグ...！？」

「でも、よく気が付きましたね！タイルの使う色と並べ方を決めるとき、様々なサンプルを作って実際に完成した主桁に並べてみたそうです。優雅な曲線を持ったスタイリッシュな主桁で全体的な構造も素晴らしいのですが、利用者の目線に配慮した細部の工夫も素晴らしくて、この橋は土木学会デザイン賞も受賞しているんですよ」

「本当に細部までこだわられているんですね！ハカセ、いろいろなことを教えていただき、ありがとうございました！」

「ハカセに会えて、私たちラッキーだったね♪今日の業務もやる気出てきたゾ～～！」

「私は、会社の近くにこんなにおしゃれな当社施工の橋があることを知らなかったので、まだまだ勉強不足だなと思いました。早速会社に着いたら、ホームページの施工実績で他の橋も見てみよっと...やる気がみなぎってきました！」

「2人とも、身体から炎が出てるのが見えます...気のせいかな...」

「では恒例のあのポーズ！」

「よーし、せーのっ！」

「それじゃあ、出社しましょうか」

「今日も1日がんばろう！」

―つづく