#29 生名橋
―ある日の朝、いつものように新聞を読む2人
- 「わあー大型クレーン船で橋桁架設かー、大・迫・力!!」
- 「それ、愛媛県の岩城橋ですね!岩城島と生名島をつなぐ橋として工事が進められているんですよね」
- 「へえー、おーちゃん詳しいね!」
- 「生名島はサイクリングスポットとして人気なんですよ。しまなみ海道の因島と生口島の東側を囲むように点在する4つの島「岩城島・生名島・佐島・弓削島」を結ぶサイクリングロードは「ゆめしま海道」と呼ばれていて、岩城橋ができることで岩城島にも自転車で渡れるようになるんですよ」
- 「さすが、サイクリストおーちゃん!潮風を感じながらサイクリングか~ 気持ちよさそう~」
- 「ちなみに、ゆめしま海道に架かる生名橋も当社がつくった橋なんです。青い海と空に映える斜張橋がこれはまたかっこよくて...!」
- 「ここに行けば、施工中の岩城橋だけじゃなくて生名橋も見れるし、一石二鳥ってことだね!これはお橋見しなくっちゃ!」
- 「ぜひ行きましょう!(やった!久しぶりの外出だーー)」
今回の橋ガールは...
― 2人は、はるばる松山空港へ。そこから車で約2時間かけて因島・
- 「やっと着いたー!ここからフェリーで渡れば生名島だね」
- 「人も車もいっぱい乗っていますよ。島の人にとってフェリーは欠かせない交通手段なんですね」
- 「フェリーで島に渡るなんて初めてだから新鮮!あ、景色眺めてたらあっという間に着いちゃった、急いで降りなきゃ!
...えーっと、無事に着いたけれどここから橋まではどうやっていくの?」
- 「それはもちろん、自転車ですよ!せっかく2人で来たのでタンデムを予約してみました!これでお橋見しつつ、島を楽しみましょう♪」
- 「タンデム乗ってみたかったんだよね、楽しみ~!ヘルメットも被って... 準備完了!」
- 「よし、早速しゅっぱーつ... って、ん?!なんだか今、見覚えのある姿が見えたような、もしかして...」
- 「ハカセ!!??」
- 「やあ、2人ともこんにちは。こんなところで会うなんて奇遇ですね」
- 「わたしたちは橋ガールとしてやってきたんです。ハカセこそどうしてここに?!(ハカセって本当に色んなところに出没するんだ... しかも今回はまさかの自転車で登場!!)」
- 「いやぁ、とてもいい天気なのでついサイクリングしたくなって。せっかくなので私が案内しましょう。生名橋はここから15分くらいで着きますよ」
- 「やったー、ハカセに案内してもらえるなんてツイてるー!お願いします!」
- 「では早速、生名橋へ向かいましょう!案内するので、後についてきてくださいね」
橋の概要
- 名称
- 生名橋
- 位置
- 愛媛県越智郡上島町
- 構造形式
- 3径間連続鋼・コンクリート混合斜張橋
- 橋長
- 515.0m
- 架設方法
- 張出し架設工法
- 竣工年
- 2010年
- 「出発しんこーう!!おーちゃん、いい?右足から行くよ... せーのっ!」
- 「タイミングあわせないとタンデム難しいですね... って、ハカセ待って~」
- 「いち、に、いち、に... 慣れてくると楽しいね。信号が一つもないから漕ぎやすいし、何より海がすぐそこで景色も最高!たくさんのサイクリストが集まるわけね~」
- 「島ならではの景色をそれぞれのペースで楽しめるのが、ゆめしま海道サイクリングのいいところですよ」
- 「みてみて!ハカセがあそこで止まっているし、目的の橋かな?
ハカセ、お待たせしました!」
- 「お疲れ様でした。そう、これが生名橋です。鋼・コンクリートの混合橋が採用されていて、この形式では国内第3位の支間長を誇ります」
- 「あのーハカセ、鋼・コンクリートの混合橋って一体...?」
- 「この橋の中央付近には軽い鋼が使われていて、それ以外はコンクリートが使われているんです。このように橋桁に鋼とコンクリートなどの複数の材料を使用している構造を混合橋と言います」
- 「なるほど!でもどうして、わざわざ2つの違う材料を使うんですか?」
- 「この橋は両岸の主塔から張ったケーブルで橋桁を支えていますが、主塔の位置は陸側によっていますよね。これが例えば海側にした場合、深い海の底に基礎を施工することになってすごく大変で、コストもかかるんです」
- 「たしかに、深い海の底に基礎をつくるのは大変そう...」
- 「ただ、主塔をなるべく水深の浅い陸側とすると、海を渡る中央支間が長くなってしまって、陸側の側径間が短くなってしまいます。そうなると、重量のバランスが悪くなってしまうので、中央支間には軽い鋼をつかって、バランスを良くしているんです」
- 「なるほどー!重さのバランスを保つために真ん中は軽い材料を使っているんですね。そんな工夫があったとは!」
- 「橋の上まで行ってみよう!坂が急だけど、ついてきてー!」
- 「ふぅ... 島全体が見渡せて綺麗ですね!でも風が強くて少し怖いかも...」
- 「橋を渡り始めると風が強くなったように感じますよね。海上橋はとても風の影響を受けやすくて、台風のときなどはもっと強い風になりますからね」
- 「たくさんのケーブルがピンと張ってあって頑丈そうに見えますけど、風の影響を受けるんですか?」
- 「ほかの橋の話ですが、これまでにも風による揺れが止まらなくなってケーブルが破損した事例がいくつかあります。斜張橋は橋桁をケーブルによって支える構造なので、破損しないように風による揺れを止める工夫がしてあるんですよ。このケーブルを見てみてください」
- 「よくみると、ケーブルの表面がデコボコしてる...?」
- 「そうです、白いキャップやケーブルの表面も風による揺れをおさえるためのものです。ケーブルは特に雨水がかかるとさらに揺れが大きくなることがあり、それをレインバイブレーションと言ってます」
- 「レインバイブレーション?!初耳です!」
- 「降りかかった雨水が、ケーブルの表面を流れることによってデコボコができると、ケーブルの周りの風の流れが不安定になって、揺れが起きやすくなるんです。こうやってケーブル表面に凹の形状をつけておくと、雨の流れによる凸ができにくくなって、ケーブル周りの風の流れが安定して、揺れを小さくできるんです」
- 「雨水が流れ込む溝を作ってあげることで、表面がデコボコするのを防ぐんですね!だんだん寒くなってきたし、次の目的地に向かいましょうよ~」
- 「その前に、いつものポーズで写真撮らないと!ケーブルが延びている様子をイメージして、自転車も置いて...」
- 「ばっちりですね。それじゃあハカセ、岩城橋までお願いします!」
- 「そうですね。現場の近くの展望台からよく見えるスポットがありますよ」
- 「わあー!すごい!主塔が生名橋よりもずっと高いですね!」
- 「はい、生名橋の主塔の基部からの高さは最大で約95mなのですが、岩城橋は最大で約133mもあって、斜張橋としては国内トップクラスです」
- 「現場のみなさんはこんな高いところでずっと仕事してるってすごいなぁ...ところでハカセ、どうやって海の上に橋を架けるんですか?さっきの生名橋と構造は一緒なんですよね」
- 「これが施工しているときの写真です。まずは主塔に近い側の主桁のコンクリート部分を施工します。そしてその主桁の先端に、鋼桁を吊り上げるために使用する架設桁を大型クレーン船で設置します」
- 「とても大きなクレーン船ですね!」
- 「そのあと、海上を台船で運ばれてきた鋼桁を、その架設桁を用いて吊り上げて架設していくんです」
- 「へえー、そうやってつくってるんですね。それにしても対岸の主塔がすっごく遠いですね」
- 「岩城橋は、主塔どうしの間隔が475mありますからね。先ほど見てきた生名橋が315mなので、その1.5倍くらいの大きさです」
- 「475mってすごいですね。ダイナミックです! 岩城橋が完成するとゆめしま海道が全線開通して、4つの島が簡単に行き来できるようになるんですね。便利になるのはもちろん、新しい出会いも広がりそう!」
- 「完成したら自転車で4島制覇しないと!岩城島にもおいしいグルメや絶景スポットがたくさんありますからね。今回のお橋見でさらに島の魅了を発見しちゃいました!」
- 「ぜひ、そのときはまた私もご一緒させてください」
2020年10月30日
行った場所:生名橋
島民のゆめを叶える"ゆめしま海道"
全島開通が楽しみ!!
―つづく