#31 浜崎黒目橋
~ある日の社内にて~
- 「いっちー、もう仕事には慣れた?」
- 「入社して数か月たって、だんだん慣れてきました!橋梁関係の部署なのでいろいろな資料を見ますけど、想像以上に当社で施工している橋が多いことにびっくりです!」
- 「そうだね~。
ただ、私たち事務職は直接工事に関わるわけじゃないから、あんまりピンとこないんだけどね...」
- 「それはちょっと残念です。
わからない用語なども多いから、実際に橋を見て勉強できたら、もっと仕事にも活かせると思うのにな~」
- 「お疲れ様です。部内の回覧書類を持って来ました。はいこれ、お願いしますね。
ところで、さきほど橋の話をしていたようですけど、どうしたんですか?」
- 「仕事の書類で橋の工事名をたくさんみるのですが、橋の仕事に携わっている実感がわかないな~って...」
- 「以前は、部内の厚生行事とか現場見学会で事務職の社員も現場に行く機会があったって聞きました!でも今はコロナ禍で難しいですよね。ハカセ~、何かいい機会ないですか?」
- 「そうですね、近場にも当社施工の橋があるので、よければお橋見に行ってみませんか?「百聞は一見に如かず」ですからね」
- 「橋ガールですね!待ってました!」
- 「就活の時にホームページで見て、橋ガールに憧れていました。ぜひお願いします!」
今回の橋ガールは・・・
~お橋見当日、埼玉県朝霞市にやってきた3人~
- 「二人ともおはよう」
- 「おはようございます!お橋見が楽しみで眠れませんでしたよ~早く行きましょう!」
- 「ハカセ、今日はよろしくお願いします!
それにしても今日はアツスギル...」
- 「まさに夏到来って感じですね。日焼けしちゃいそう~」
- 「今日は真夏日らしいよ。しっかり水分補給しないとね!
あ、早速橋が見えてきた!ハカセ、お目当てはこの橋ですか?」
- 「そうそう、これが浜崎黒目橋です。
住宅街にかかる歩道橋なので、たくさんの人が利用しているんですよ」
橋の概要
- 名称
- 浜崎黒目橋
- 位置
- 埼玉県朝霞市
- 構造形式
- PC中空床版アーチ橋
- 橋長
- 48.1m
- 架設方法
- 固定支保工架設工法
- 竣工年
- 1999年
- 「なんだか珍しい形ですね!」
- 「横から見ると、三角形のてっぺんに円がついているみたい!」
- 「円形の部分には照明がついていて、夜はとても綺麗なんですよ。
三角形に近い形をしていますが、アーチ構造になっていて、アーチ部はバスケットハンドル形式になっています」
- 「バスケット...?あの丸いライトがゴールってこと?」
- 「いえいえ、スポーツのバスケットボールではなく、入れ物として使うカゴのことですよ。カゴ(バスケット)の持ち手(ハンドル)の部分の形に似ているので、バスケットハンドル形式と呼ばれています。
身近なものだと、スーパーの買い物カゴの持ち手をイメージしてもらうとわかると思います。アーチの上部を内向きにすることで、横向きにしっかりと踏ん張れるので、地震の揺れに強いという特徴があります」
- 「本当だ!確かにカゴの持ち手に見えますね。
この形にすることで、地震にも強い橋になるなんてすごいですね」
- 「オシャレなだけじゃなくて機能性も兼ね備えているんですね。
ハカセ、よく見るとここで色が変わってますね。なにか理由があるんですか?」
- 「面白いところに気づきましたね。もちろんちゃんとした理由がありますよ。
アーチ部材としては珍しく、プレキャスト部材が使われているんです」
- 「えーっと...「プレキャスト」って何でしたっけ?」
- 「プレキャストというのは、コンクリートの部材を、橋を架ける現地とは別の場所であらかじめ製作しておくことです。まず、このアーチ部材を分割して製作しておいて現地へ運んできます。現地ではそのプレキャスト部材を支保工という支持材の上に置きます。その後、それぞれのプレキャスト部材の間にコンクリートを現場打ちして一体化し、アーチ部を完成させます」
- 「なるほど、そうやってつくられているんですね。すごい!
プレキャスト部材にすると何かいいことあるんですか?」
- 「全てのアーチ部を場所打ちでつくると支保工、型枠、鉄筋の施工にとても時間がかかりますが、プレキャスト部材を用いると短い日数でアーチ部を完成させることができます。それとプレキャスト部材は、製作のために準備した条件の良い場所でつくるので、一般的に現場打ちコンクリートよりも品質が良くなります。
色が違うのはプレキャストと現場打ちした部分との違いで、白っぽくなっているほうが現場打ちの部分で、コンクリートの劣化対策で後から塗装しているようですね」
- 「こうすることで、こんなかっこいい橋ができるんですね」
- 「一つの橋に沢山の技術が使われているんですね。勉強になりました!」
- 「それにしても、取材している間もここに住んでいる方々がたくさん通りますね。子供連れも多くて、地域に密着した橋なんですね」
- 「あ、子供たちが橋の下の川で遊んでますよ!涼しそう~!」
- 「歩道橋としてだけでなく、地域住民の憩いの場にもなっているようですね」
- 「私たちも間接的にだけどこうして人々の暮らしを支えているんだな~」
- 「なんだか嬉しくなってきました!
なっしー先輩、恒例のアレやりましょうよ!」
- 「オッケー! せーのっ!」
- 「青い空に向かって伸びるバスケットハンドルのアーチ、素敵ですね♪」
- 「うんうん、まさに夏だね。
それじゃあ明日からもお仕事がんばろう!」
- 「はい!」
- 「2人ともやる気十分ですね!」
2021年7月19日
行った場所:浜崎黒目橋
人と人を結ぶ橋
―つづく