風力発電施設を一括架設

― タワーおよび発電装置 ―

三井住友建設株式会社(本社:東京都新宿区 社長:友保 宏)は、先に発表したプレキャストコンクリートセグメント(以下セグメントという)を積み重ねて風力発電タワーを建設する方法を改良し、コンクリートタワーの建設と発電装置(発電機:ナセルと回転翼:ブレード)の設置を、新開発の専用架設装置を用いて同時に架設する方法を開発しました。
今回開発した「一括架設工法」は超大型クレーンを使用せず、一組の専用架設装置と大型クレーンでコンクリート製タワーの建設および発電装置の据付けを並行して行い、工期短縮とコスト削減を図るものです。

◆概 要
従来の風力発電施設建設では、発電タワーを建設した後、一番の重量物であるナセルをタワーの最頂部にクレーンで架設し、続いてブレードを取付けます。クレーン能力はこのナセル重量および架設高さにより決定されます。
大型風力発電機のナセルの重量は約50㌧と非常に大きく、これを高所に架設するためには吊上げ能力500t・mクラス以上の超大型クレーンを必要とします。また、風の影響を大きく受ける高所でのナセル据付けやブレード取付けは技術的にも難しい上、安全面でも課題のある作業です。


図-1 工法イメージ

今回開発した新工法はこれらの問題を解決するもので、タワー部の建設と発電装置の据付けを、タワー外部を昇降する専用架設装置と大型クレーンを用いて同時に行うものです。 
その手順は「だるま落とし」を逆に辿り、ナセル(だるま)を専用架設装置の上部に搭載しながら、その下にセグメント(台座)を継ぎ足し、タワー及び発電装置を架設します。

本工法では、非常に重いナセルをタワー建設初期の低い位置で専用架設装置の上部に搭載します。その後セグメントを継ぎ足し、ブレードが地表面に触れない高さ(タワー高の1/3程度)に達した時点でブレードをナセルに取付けます。このため、使用するクレーンの性能は大きく緩和され、吊上げ能力は150t・mクラスでナセル及びブレードの架設が可能になります。
一方、タワーを構成するセグメントは、専用架設装置の揚重機により地上から吊上げ、所定の位置に設置するため、クレーン等の大型重機を必要としません。また、専用架設装置はナセル据付け後内蔵された油圧ジャッキによって自ら下降し、地上で解体します。

このように、本工法は風力発電施設の建設に超大型クレーンを必要とせず、かつコンクリートタワー部の建設工程の中で発電装置の設置がほとんど行われるので、費用が削減され工期が短縮されます。

 

◆専用架設装置の概要

専用架設装置は、鋼製フレームの上部にナセルを固定する部分、セグメント揚重機、昇降機および固定装置で構成されています。
専用架設装置はタワー本体に直接アンカーを取って支持し、タワー部は、風や偏心荷重による転倒に対して抵抗できるように設計を行います。

 

◆施工要領

施工要領は以下のとおりです(図-2,3参照)。

① 基礎の施工完了後、タワー基部のセグメントをセットする。
② 専用架設装置を組み立て、ナセルをクレーンによって架設装置の頂部に搭載。
③ セグメントを吊り込み、必要量のPCケーブルを配置し、タワーを構築していく。
④ ブレードが地表面と触れない高さになった時点でブレードの取付を行なう。
⑤ さらにセグメントの架設を繰り返す。
⑥ 最上段のセグメントを架設完了後、ナセルとタワーを緊結する。
⑦ 専用架設装置を下降させる。


1. セグメントの吊上げ

2. セグメントの据付

3. 架設装置の移動

図-2 タワー部施工サイクル


STEP 1
架設装置組立後にナセルを搭載しタワーの架設を開始
STEP 2
タワー架設の途中でブレードを取付け
STEP 3
タワー架設完了後にナセルを緊結する

図-3 施工要領


◆今後の展開

三井住友建設(株)は、超大型クレーンを使用することなくタワー部及び発電装置を建設するこの工法の特徴を生かして風力発電施設の大型化や海岸・沿岸部での建設などのニーズに対応し、かつ、風力発電施設の基礎工事からコンクリートタワー建設、発電装置据付けまでをトータルで行うことによりコストダウンを図る所存です。

 

<お問い合わせ先>

三井住友建設広報室【お問い合わせフォーム】

リリースに記載している情報は発表時のものです。

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