ラップユニット式覆工コンクリート養生工法の開発

■概 要

三井住友建設株式会社(東京都新宿区西新宿7-5-25 社長 五十嵐 久也)は、従来技術と同等以上の養生環境を低コストで創り出すことのできる"ラップユニット式覆工コンクリート養生工法"を開発しました。

ラップユニット式覆工コンクリート養生工法とは、トンネル覆工コンクリートの内面に沿って気泡緩衝材※を装着した転用可能な軽量ユニットフレームをセットし、養生中の温度と湿度をコントロールすることで、効果的に覆工コンクリートの養生を行う工法です。
このたび、実トンネル工事において、本工法の実証試験を実施して施工性および効果を確認しました。

ラップユニット式覆工コンクリート養生工法のイメージ
ラップユニット式覆工コンクリート養生工法のイメージ

※気泡緩衝材: 2枚のポリエチレン膜の間に多くの気泡を作り、その空気圧で緩衝材の機能を実現する包装材

■背 景

近年、トンネル覆工コンクリートの品質向上、耐久性向上を目的としたさまざまなコンクリートの養生技術が開発されています。このうち、多くの養生技術は、専用の架台や特殊な装置を必要とするため、特にコスト面での課題がありました。

こうした背景を踏まえ、当社は大がかりな設備を必要とせず、軽量でシンプルなユニットフレームにより、従来の養生技術と同等以上の養生環境を低コストで創り出すことのできるトンネル覆工コンクリート養生工法を開発しました。

■ラップユニット式覆工コンクリート養生工法とは

トンネル覆工コンクリートの内面に沿って気泡緩衝材を装着した転用可能な軽量ユニットフレームをセットし、養生中の温度と湿度をコントロールすることで、効果的に覆工コンクリートの養生を行う工法です(特許申請中)。

施工手順は、次のとおりです。

  • 塩ビ管(Vuφ40)で構成される幅1.5m×高さ2.0m程度の矩形の枠体に気泡緩衝材を貼設して養生ユニットを作成します。
  • 養生ユニットにはφ30貯水管と不織布などからなる保水ユニットを装着します。
  • セントル(移動式型枠)の足場を利用し、複数の養生ユニットを上下に連結してトンネル壁面に沿ってリング状に組立て、脚部を支保調整材(棒ジャッキ)によりジャッキアップして、壁面に密着した養生体を形成します。
  • 上記養生体をトンネル縦断方向に連続して施工することにより、養生対象区間全体を被覆する養生体を形成します。

養生ユニット

養生ユニットの組み立て状況

■ラップユニット式覆工コンクリート養生工法の主な特徴

低コスト
ラップユニット式覆工コンクリート養生工法は、従来技術と同等以上の養生環境を大がかりな装置を用いる養生工法に比べて、低いコストで創り出すことができます。

効率的
本工法は、転用可能な軽量ユニットフレームで構成されているため、人力による組立て・移動・解体が可能であり、効率的な施工が可能です。

高保湿効果
本工法は、気泡緩衝材による表面被覆により、コンクリートから蒸発した水蒸気が保水ユ
ニットに貯留されるため、コンクリート表面を常時高湿度に保つことが可能です。

高保温効果
本工法は、適度な放熱効果があることに加えて、長期養生に適する工法であることから、従来技術に比べてコンクリート表面の急冷を避けることが可能です。

■トンネル現場における実証試験の概要

実証試験の概要
ラップユニット式覆工コンクリート養生工法の施工性および養生効果を確認することを目的に、トンネル現場において実証試験を行いました。
実証試験区間は1スパン(L=10.5m)とし、覆工コンクリートにひずみ計や温度センサーを埋設して、型枠脱型後に養生ユニットをセットし、1ヶ月間計測を行いました。

高機能化の取り組み
計測機器の配置

試験結果
実証試験の結果、以下の効果が確認できました。

  • 保湿効果
    養生期間中は、被覆内湿度が100%に維持されました(4週間後まで確認)。
  • 保温効果
    コンクリート表面の温度は、気泡緩衝材の適度な放熱効果により緩やかに低下し、2週
    間後にほぼ坑内温度となりました。
  • コンクリート内部温度差の低減効果
    比較対象とした付加的養生無しのブロックに比べ、覆工コンクリート表面と内部の温度
    差を材齢2日時点で約1/2に低減することができました。
  • 養生効果
    この保湿・保温効果により約11%程度強度が増加しました。また、コンクリート内部温
    度差の低減効果により、内部拘束に伴う温度ひび割れの可能性を大幅に減少させること
    ができました。
養生温度・湿度の経時変化図

養生温度・湿度の経時変化図

材齢2日におけるコンクリート内外の温度分布図

材齢2日におけるコンクリート内外の温度分布図

■今後の展望

このたびの実証試験により、"ラップユニット式覆工コンクリート養生工法"が低コストで施工性に優れ、従来技術と同等以上の養生効果があることを確認しました。

当社は、本工法をトンネル工事の総合評価案件などに積極的に提案し、トンネル覆工コンクリートの品質向上、耐久性向上に取り組んでいく方針です。

 

<お問い合わせ先>

三井住友建設広報室【お問い合わせフォーム】

リリースに記載している情報は発表時のものです。

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