『AR-表面仕上げ管理システム』を開発
―写真計測技術とAR技術を用いた品質管理―
三井住友建設株式会社(東京都中央区佃二丁目1番6号 社長 新井 英雄)は、ステレオ写真計測技術とAR(Augmented Reality:拡張現実)技術を用いて、床版コンクリート表面の形状管理を行う 『AR-表面仕上げ管理システム』 を開発し、実用化しました。
■ 開発の経緯
一般にコンクリート打設後の表面仕上げは人力によって行いますが、床版コンクリートのように広い範囲を平坦な面に仕上げるのは熟練を要し、仕上げ具合が悪いときはコンクリートの研削や調整が必要になるなど、仕上げの平坦性の確保が課題になります。
そこで、当社はコンクリート表面の均し作業時に、仕上げた表面の状態を写真計測により可視化し、その場で作業員への仕上げの修正指示、仕上げ状態の再確認を行うことで、仕上げ面の平坦性を大幅に向上させるシステムを開発しました。
■ システムの概要
『AR-表面仕上げ管理システム』は、床版コンクリート打設後の表面仕上げ作業時に、写真測量により仕上げ面全体の3次元形状を数値化し、計画高さとの誤差をコンター図により出力する「ステレオ写真計測技術」と、出力したコンター図をタブレット端末の画面上に現場の映像に重ね合わせて表示させ可視化する「AR(拡張現実)技術」を組み合わせた一連のシステムです。
本システムにより、仕上げ作業を行いながら、仕上げ面の凹凸状態を容易にかつ瞬時に確認できるため、計測と仕上げ作業を繰り返すことにより、不陸の小さい平坦な仕上げ面を構築することが可能となります。
タブレット端末による高さ管理状況
■ システムの特徴
(1) ステレオ撮影技術による高精度な計測
デジタル一眼レフカメラ2台を用いたステレオ撮影による高さ方向の計測誤差は、最大でも1~2mm以内であり、高精度な写真測量が可能です。これにより、数値化された仕上げ面の3次元形状も同様の高精度を有します。
(2)表面の仕上げ状態を可視化
写真測量によって得られたデータを専用プログラムで解析して仕上げ面の3次元形状を数値化し、計画高さとの誤差をコンター図により出力することができます。
(3)AR(拡張現実)技術の適用
出力した表面仕上げのコンター図をタブレット端末の画面上に、現場の映像に重ね合わせて表示させ可視化しますので、修正箇所の指示を的確に行うことができます。
(4)どこからでも作業指示が可能
タブレット端末の小型カメラで対象物をどの方向から映しても、フレームマーカーの映り方によりカメラと対象物との位置関係を認識できるため、コンター図がコンクリート面に重なるように描画できます。したがって、タブレットを持って移動しながら作業員に指示することができます。
(5)スピーディーな作業が可能
解析処理を含めた1回の計測時間は3分程度で完了します。その場で仕上げ状態を確認し、修正の指示も迅速に行えるため、より平滑な表面を構築できます。
写真計測・解析と均し修正の繰り返しによる平坦性確保の手順
■ 今後の展開
『AR-表面仕上げ管理システム』は、橋梁工事の床版コンクリートに限らず、土木・建築分野におけるさまざまな構造物への適用が可能です。
当社では、本システムを多くの現場に適用拡大を図るとともに、ステレオ撮影方法の省力化や計測処理の高速化などのシステム改良に取り組み、更なる高品質化と高効率化を目指して活用していく方針です。
*AR(Augmented Reality:拡張現実):現実環境にコンピュータを用いて情報を付加提示する技術
*ステレオ撮影:複数の異なる方向から同時に撮影することにより、立体的な画像データを得る撮影方法
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