3Dレーザースキャナーを用いた橋梁の出来形検測システムを開発

―寸法計測の自動化により橋梁建設の生産性が2倍に向上―

三井住友建設株式会社(東京都中央区佃二丁目1番6号 社長 新井 英雄)は、橋梁建設に関連する様々なデータを一元的に管理・運用するプラットフォーム「SMC-Bridge」(※1)の拡充と建設生産プロセスの生産性向上を目的として、3D レーザースキャナーを用いた橋梁の出来形検測システム(※2, 3)を開発しました。

そしてこの度、当社施工中の橋梁建設現場に試適用し、従前作業と比較試算した結果、施工管理者が検測作業に拘束される時間が半減され、生産性が2倍に向上することを確認しました。

 

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【3Dレーザースキャナーの三次元点群データから自動抽出される橋梁断面形状の一例】

 

■ 開発の背景

現在、構造物の出来形検測作業では、2名1組となりスケール(メジャー)を用いて採寸し記録しています。また、エビデンスとして各寸法を写真に納め出来形検測調書を作成し、合否判定のための検測では発注者機関の立会いが必要となり、一連の作業が施工管理者にとって大きな負担となっています。一方、出来形検測作業の代替として高精度な計測が可能な3Dレーザースキャナー等のICT活用によって建設生産プロセスの生産性向上が期待されていますが、膨大な量の三次元点群データの処理方法や時間、データを取り扱う熟練技術者の確保などの課題がありました。そこで当社ではそれらの課題を解消する本システムの開発に着手しました。

 

■ 出来形検測システムの特徴

本システムは、3Dレーザースキャナーで計測した三次元点群データから橋梁の断面形状を自動抽出し、指定した箇所の出来形寸法を自動検測します。さらに、抽出した橋梁の断面形状を三次元CADデータとして出力することが可能で、寸法測定精度はスケール(メジャー)を用いた採寸と同等レベルです。

また、クラウド上でデータを管理することで、発注者を含む全ての関係者で情報の共有が図れ、施工管理の記録書類である出来形検測調書に出力することができ、ICTの活用で建設生産プロセスの生産性向上に大きく寄与します。

さらに、本システムで検測された施工中の橋梁断面形状データを蓄積し、「SMC-Bridge」上で供用開始時の初期データとして活用することで、将来の維持管理の効率化やライフサイクルコストの低減を図ることもできます。

 

■ 出来形検測システムの効果

本システムを当社施工中の橋梁建設現場に試適用し、得られる効果を試算しました。施工管理者が建設現場において拘束される延べ時間を指標とし、橋梁の一般的な断面を対象として従来作業と本システムによる作業を比較した結果、構造物1断面あたりの出来形検測に要する延べ拘束時間は45分から20分へと短縮され、建設生産プロセスの生産性が約2倍に向上することを確認しました。

 

180809_02.png【施工管理者の延べ拘束時間の比較(例)】

 

■ 今後の展開

当社は、国土交通省が提唱するICTを活用した建設生産プロセスにおける生産性向上の取り組みである「i-Construction」を橋梁に展開した「i-Bridge」実現の一助のため、本システムを含め自社開発した橋梁建設プラットフォーム「SMC-Bridge」の更なる拡充と研究開発を進めてまいります。

今後は、本システムを建設中の橋梁構造物に限定せず、図面が保存されていない既存構造物の図面作成ツールやコンクリート工場製品等へ適用し、幅広い展開を図ってまいります。

 

※1『橋梁建設の生産性向上を図るプラットフォーム「SMC-Bridge」を開発・適用(2017年12月25日リリース)

※2 特許出願中

※3 株式会社エリジオンの大規模点群データ処理ソフト「InfiPoints」を用いて当社独自開発した処理システム

 

<お問い合わせ先>

三井住友建設広報室【お問い合わせフォーム】

リリースに記載している情報は発表時のものです。

 

【参考】

橋梁建設を一元的に管理・運営するトータルシステム「SMC-Bridge」

 

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