建設中の高層ビルの通信環境構築を容易にする手法を開発・適用

― タワークレーンと電力線搬送通信・衛星通信を活用して高層ビル建設の働き方改革に貢献 ―

三井住友建設株式会社(東京都中央区佃二丁目1番6号 社長 柴田 敏雄)は、タワークレーンと電力線搬送通信、衛星インターネット通信(ソフトバンク株式会社提供:Starlink Business(※1))を活用して建設中の高層ビルの施工階における通信環境構築を容易にする手法を開発し、当社施工物件に適用して、その有効性や効果を確認しました。これにより通信環境が改善され、"人をつなぐICTシステム"を利用して働き方改革につながる効率化を実現しました。

(※1) スペースX社(米国)が提供している衛星通信ネットワークをソフトバンク社が商流利用の拡販をおこなっており、様々な産業界への活用を図っているもの

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【タワークレーンへの機器設置イメージ】

■ 開発の経緯

超高層建物の建設工事では高さ100メートルを超えると、携帯電話やインターネットなどの無線通信が届きにくくなり、関係者間でのコミュニケーションが不通となるケースがあります。特に躯体工事関係者は常に最上階で作業しており、従来技術では引き込んだ有線LANケーブルを頻繁に延長する工事が発生するため、業務に必要なICTシステムを利用する上で利便性に欠けていたのが課題でした。

このような課題を解決して施工階で安定した通信環境を確立するために、当社ではStarlinkアンテナをタワークレーンに設置して通信環境を構築する手法の開発を進めました。

■ 手法の概要

今回開発した手法(特許出願中)は、タワークレーンの旋回部と非旋回部の間に設置されている既存の電力線用スリップリング(※2) を、PLC(電力線搬送通信技術(※3))によって通信ケーブルとして転用することで、タワークレーンの旋回に影響されることなく安定した通信確保を可能にしたものです。躯体工事の進捗に併せてクライミングするタワークレーンに付属しているため、常時最良の通信品質を確保できる上、タワークレーンの標準機材を活用しており、タワークレーンの設置後に通信環境の変化が起きた場合でも、簡単に設置することが可能です。

(※2) 静止体から回転体に電力や信号を伝達する回転コネクター。配線がねじれることなく電力や信号を伝達可能な技術

(※3) 電力線を通信回線としても利用する技術。(PLC: Power Line Communication)LAN専用ケーブルと比較すると通信速度は下がるが、Wi-Fi中継器を可動部に設置するよりは通信が安定する

■ 適用の効果

当社施工物件に適用した結果、下記の効果を確認することができました。

  • 施工階でのICTシステム稼働による労務費の低減 【省人化率:-30%】
    施工階で情報共有・進捗管理する"人をつなぐICTシステム"を常時利用できるようになり、躯体工事関係者の情報共有・進捗管理に係る労務費を削減できます。
  • ICT施工管理の常時モニタリング
    常時モニタリングやクラウドを利用したアプリケーションとの通信が常時可能となり、リアルタイムの更新・共有が可能となります。
  • 通信環境整備コストの低減
    従来の地上基地から有線接続する方法と比較して、延伸工事費を低減できます。躯体工事で最も必要な施工階での通信接続が常時可能となりました。

■ 今後の展開

今後も超高層建物での施工において、通信環境の整備を進め、工事関係者間(施工管理者・協力会社・製造工場・運送車両など)の情報共有にかかる管理手間やタイムラグを解消し円滑なコミュニケーションの促進を図ってまいります。また将来的には高度なICT/IoT機器の導入もおこない、PATRAC(※4) の機能を充実させ、働き方改革の実現を目指していく予定です。

(※4) IoTを活用した次世代PCa生産管理システム「PATRAC」の開発に着手(2018年12月18日リリース)

<お問い合わせ先>

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三井住友建設株式会社
経営企画本部 広報室
〒104-0051 東京都中央区佃二丁目1番6号
TEL: 03-4582-3015 FAX: 03-4582-3204

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