中高層木造建築構法「P&UA構法」が通し柱方式ハイブリッド架構を実現可能に
~ 11階建て事務所のモデルプランで日本建築センターの構造評定を取得 ~
三井住友建設株式会社(東京都中央区佃二丁目1番6号 社長 柴田 敏雄)は、株式会社市浦ハウジング&プランニングを代表とする「P&UA※1 構法共同技術開発グループ」※2 に参画し、GIUA※3 を用いた木造二方向ラーメン架構に耐力壁を併用し、一部の柱・梁に鉄骨部材を採用した木造・鉄骨造共存型ハイブリッド架構による11階建て事務所のモデルプランにおいて、一般財団法人日本建築センターの構造評定を2025年10月10日に取得しました。
評定を取得したモデルプランは、柱脚接合部及び柱梁接合部に「GIUA」による半剛接仕様の仕口を用いた二方向ラーメン架構の一部に「シアリング・コッター耐力壁」や「ローリング・コッター耐力壁」を併用し、一部の柱・梁(主にコア周り)を鉄骨部材とする平面混構造のハイブリッド架構です。木梁に設けるスリーブ付き継手やラーメン架構の木梁端仕口の一部には「炭素繊維または構造用合板によるせん断補強」を用いており、高耐力・高剛性・高靭性を実現しています。また、柱・梁の仕口は、下層階には鉄骨仕口方式を、上層階には通し柱仕口方式を採用し、建て方の効率化と建物重量の軽減化を図りました。

構造評定を取得した11階建て事務所の外観・躯体架構のイメージパース
<開発の経緯>
現在、我が国ではSDGsやESG投資の拡大を背景に、中高層木造建築への関心が高まっています。これまで、木造建築は耐震計算ルート1又はルート2(許容応力度設計)でほぼ全ての建物が設計されてきました。中高層木造建築物においては、ルート3(保有水平耐力)による耐震計算手法は未だ発展途上であり、脆性破壊を防止する靭性の確保や荷重変形関係のスリップ抑制、接合部の高剛性・高耐力・高靭性の確保などが課題となっています。
そこで、当技術開発グループでは、これらの課題を解決するP&UA構法の開発に着手しました。1期開発では、一方向にGIUAを用いたラーメン架構、他方向を耐力壁架構とし、鉄筋コンクリ-トスラブを採用した「10階建て共同住宅モデルプラン」の構造評定を2022年10月に取得。次いで、2期開発では、自由度の高い空間の実現化を目指してラーメン架構を二方向に拡張させ、二方向ラーメン架構の一部に耐力壁を併用し、鉄筋コンクリ-トスラブを採用した「11階建て事務所モデルプラン」をルート3、Ds=0.3で設計し、日本建築センターの構造評定を取得しました。
さらにこの度、技術のバリエーションを増やし、汎用性の高い技術の確立を目指して、2期開発で評定を取得した「11階建て事務所モデルプラン」の柱・梁仕口を鉄骨仕口から上層階は通し柱仕口へ変更し、さらにコア周りの一部の柱・梁を鉄骨部材に換えて、ルート3、Ds=0.35で設計した通し柱方式ハイブリッド架構によるモデルプランにおいて、日本建築センターの構造評定を取得しました。
<モデルプランに用いた要素技術>
本評定では、先に開発した「半剛接仕様のラーメン架構の仕口に用いる"GIUA"」や「シアリング・コッター耐力壁」、「ローリング・コッター耐力壁」、「梁に設けるスリーブ付き継手やラーメン架構の梁端仕口に用いる"炭素繊維補強"」に加えて、今回新たに以下3つの要素技術 「①通し柱」、「②鉄骨部材とのハイブリッド架構」、「③構造用合板補強」を採用しています。
① 通し柱(特許出願済)
梁が取り付く通し柱の周囲に4枚の仕口プレートと4つのコーナー補強用山形鋼によって柱を胴巻きし、高ナット付きのGIR※4と高力ボルトで固定することで、仕口の回転やガタツキを抑え、梁から柱への応力伝達の効率を高めると共に、木仕口内の応力集中が緩和され、高い仕口耐力が得られます。これらの構造性能は、通し柱仕口の実大せん断試験により確認しています。
工場で予め通し柱にGIRで仕口プレート一体のブラケットを、梁端部にGIUAで梁ブラケットを固定しておき、現場で柱ブラケットと梁ブラケットを高力ボルト接合することで、二方向ラーメン仕口を構成します。通し柱の採用により、一度に複数層の建て方が可能となり、建て方の効率化と建物重量の軽減が図れる他、より高い耐力・剛性のある鉄骨仕口と組合せることで、地震力に応じた接合部の選択肢が増え、合理的な構造計画が可能となります。地震力の程度に応じて、高層建物の上層階に通し柱を用いたり、中低層建物の場合には全層を通し柱方式とすることもできます。

構造評定を取得した通し柱のイメージ図(左:ブラケット接合前、右:ブラケット接合後)

実大実験の様子(左 : 柱の仕口プレートの高さを拡張させたタイプ、右 : 標準タイプ)
② ハイブリッド架構
本構法はパネルゾーンに鉄骨仕口や鋼製ブラケットを用いることを特徴としていることから鉄骨造との親和性が高く、架構の一部に鉄骨の柱・梁を適材適所で組み合わせることが可能です。これにより、木造二方向ラーメン架構の中に、意匠上の要求や構造性能、施工性、経済性に応じて、鉄骨部材を採用することができ、合理的な木造・鉄骨造共存型ハイブリッド架構が実現できます。

③ 構造用合板補強(特許出願済)
木梁端仕口の四周に構造用合板を貼ることで、木材の脆性破壊を抑制させるだけでなく、接合部の靭性が向上し、炭素繊維補強と同等以上の補強効果を有することを構造実験により確認しました。これにより、大振幅時における梁端部の補強方法として、炭素繊維補強に加えて構造用合板補強という選択肢が増えました。
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梁端部の合板補強のイメージ |
実大実験の様子 |
<今後の展開>
当社は本構法を中高層木造住宅やオフィスなどへ積極的に提案・展開するとともに、当社独自の木質構法と併せて、お客様のニーズに応じた木質構造技術を推進し、カーボンニュートラルや森林資源の循環利用に貢献してまいります。
<お問い合わせ先>
本件についてのお問い合わせは、下記までお願いいたします。
三井住友建設株式会社
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