#17 あゆみ橋
-ある日のお昼休み-
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- 「ハカセー!こんにちは!お呼びでしたか?」
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- 「やぁ、カモちゃん、ひさしぶり。突然なんだけど、もしかして水族館なんて好きじゃなかったでしょうか?」
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- 「水族館ですか?大好きです!なんかおしゃれですし、熱帯魚とかきれいでステキですよね!最近は、くらげがきれいとか話題だったり・・・」
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- 「じゃぁ、古代魚なんてどう?興味あるかな・・・」
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- 「あぁー、もしかしてシーラカンスで有名な"生きる化石"のことじゃないですか?それ・・・結構好きなんですよね~。」
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- 「そりゃよかった。実は次の取材、橋と一緒に本物のシーラカンスが見られるはずなんだけど。」
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- 「えっ、本物がみられるんですか!? ってことは、もしかして次の"お橋見"はコモロ諸島だったりして!?」
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- 「ど、どこですか、それ!違う違う!水族館って言ったでしょ・・・実は静岡県沼津市の水族館の近くに、世界初の珍しい橋があってね。ぜひ、行ってくれないかなぁと思って。」
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- 「もちろんです。それは取材するしかないですね!では、早速沼津へレッツゴー♪」
橋の概要
- 名称
- あゆみ橋
- 位置
- 静岡県沼津市
- 橋長
- 226.980m
- 形式
- 斜張定着張弦桁橋+PC張弦桁橋
- 架設工法
- プレキャストセグメント架設、支保工架設
- 竣工年
- 1999年


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- 「沼津駅到着~。今日はハカセも最初から来ていただけたんですね。」
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- 「そうなんです。たまには旅行気分でゆっくりと。実は、めざす"あゆみ橋"は駅からすぐの場所なんですよ。ほら、早速見えてきました!」
沼津駅から南に徒歩10分。中央公園に入ると正面に見えるのが目的地"あゆみ橋"。沼津市内を流れる狩野川の両岸にある中央公園と香貫(かぬき)公園を結ぶ、歩行者と自転車のための橋です。
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- 「あの橋の上で、静岡ナビゲーターのタカせんぱいと待ち合わせしているんですが・・・」
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- 「あ!いましたよ!」

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- 「タカせんぱ~い!」
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- 「カモちゃん、ようこそ沼津へ。ハカセ、おひさしぶりです。」
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- 「今日はよろしくお願いします(^^)」
というわけで、今回のレポーターはこのお二人。

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- 「沼津はのどかでいいところですね。ほら、鳥たちも和んでますよ。」
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- 「私もこの雰囲気が大好きなの。でもね、今日は一緒にのんびり和んでる訳にはいかないのよ。ここはお橋見ポイントが盛りだくさん、チャキチャキいかないとね!」
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- 「そ、そうなんですね。歩行者専用橋っていうだけでついついのんびりしちゃいますね・・・(キャー、いきなりテンションたかっ)」


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- 「この"あゆみ橋"は、公園と公園を結んでいるから親子連れやお年寄りも多いし、ゆるやかな空気のせいかもね。気持ちいいでしょ!でも、気を抜いちゃだめよ。ほら、この橋、主塔からこの3方向に伸びるケーブル、それに白い1本柱、なかなか素敵じゃない?」
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- 「は、はい、そうですね(もうお橋見はじまってる!)。
か、かっこいいです!遠くから見ても目を引くんでしょうね。この美しい姿の部分が"世界初" ・・・なんですか?」
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- 「はずれ~、まぁそう答えを焦らない。それは橋を下から見ればきっとわかるわよ。ちょっと全体が見える場所に移動してみましょう。」

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- 「あー、下にはまた違った部分が見えますね。橋の右と左とでは全然ちがう橋みたい。左のほうは、魚の背骨みたいなのが下に飛び出してる!」
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- 「そうなのよ。その魚の骨みたいなPC張弦桁橋を途中から斜張橋で吊ったところ、あそこが"世界初"の構造になっているのよね。」
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- 「えーっと・・・どこ?何を何で吊っている??」
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- 「全然わかってないじゃない。ね、ハカセ?? PCチョーゲンゲタをシャチョーキョウで吊っているんですよね?」
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- 「そうですね、そこが"世界初"のポイントですよね。この橋、左側は同じ形式の構造が連続していますよね。あそこはPC張弦桁という構造です。ところが橋全体をすべてこの構造にすると右側の高水敷(普段水に浸かっていない川原)にも橋脚を建てなければならなくなるんです。でも、ここに橋脚を設けると護岸の補強などが必要になるので、橋脚を建てないようにするために片方を斜張橋で吊り上げることになったんです。わかりますか、あそこ(指さし!)」
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- 「なるほどー、さっき橋の上からも見れたかっこいい白と青のケーブル部分ですね。あのおかげであそこの下の川原が広く保たれているわけですね。」

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- 「ちょうどPC張弦桁の真下に来ましたよ。この一番下にある青い部分を張弦ケーブルと言いますが、何の役割があるかわかるかな?」
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- 「うーん、橋を支えるには重要なものだとは思うんですが、これのせいで橋が重くなってしまうようにも見えるし・・・。」
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- 「なかなかイメージしづらいですよね。この一番下の青いパイプの中にはPC鋼材が入っていて、一本当たり400t以上の力で引っ張られています。張弦ケーブルとコンクリート桁は束のようなものでつながっていますよね。ストラットといいますが、張弦ケーブルの力がこのストラットを伝わってコンクリート桁を持ち上げているようになっているんです。」

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- 「なるほど・・・!弓の弦のような形になっているから、"張弦"なんですね!」

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- 「ちなみに、コンクリートについている横の線はなんだと思いますか?」
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- 「セグメントのつなぎ目ですよね。調べたら工期が短いから、工場でつくってきたセグメントを運んできてここで組み合わせたって書いてありました!」
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- 「その通り。河川の水位が低い時期しか桁を架けられないという制約があり、短期間で橋を架けなくてはいけなかったんです。そこで工場でプレキャストセグメントを製作して、一気に架設しました。」
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- 「なるほど~、橋の施工方法は、河川の水の量も影響するんですね。」
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- 「あゆみ橋は、そのほかにデザインの面でもとってもこだわっているのよ。沼津の中心部にできるから、シンボル性を持たせる目的もあったの。」
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- 「そうですね。例えば、色を選ぶ際にもたくさんの色で実験してから決めたんです。この青色だけでも5種類の中から選ばれました。そうそう、橋の上でも何か面白いデザインがあったの、気が付かなかったかな?」

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- 「あっ、そうか。あれって張弦ケーブルの位置を模様にしたんですか?」
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- 「正解!下の張弦ケーブルを橋の上から見えるようにデザインしたんですね。」
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- 「なんの為に?・・・あ!デザイナーさんの遊び心!」
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- 「そういうことでしょうね。当然、この色も数ある青の中からこの色が選ばれました。」
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- 「夜にはライトアップもされて、とても綺麗だし。ほら。」


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- 「ここは張弦桁橋と斜張橋がつながっているところなんだけど、施工プロセスの痕跡が残っているのでよく見てみましょう。」
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- 「あれ、いろんな大きさの点々がありますね。」
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- 「この斜張橋で吊るところは、プレキャストセグメントではなく現場でコンクリートを打設して作りました。小さい点はコンクリートを打設するときに型枠の崩れを抑えたものの跡なんです。大きい丸い点はPCケーブルを緊張したあとを埋めたものですね。」
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- 「橋の表面にこんな跡があるなんて知りませんでした。こうやって近くで見ると色々なことがわかるんですね。ハカセ 、あゆみ橋は本当にお橋見ポイントが盛りだくさんですね。世界初!さすがです。」
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- 「このたくさんの跡が伝えていること、すごいことに挑戦した橋ということを知ってほしいです。」
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- 「そうなんですね。よくわからないけど、少しわかりました。いっぱい聞いたから容量オーバーで頭の中爆発しそうです。そろそろお休みしたいな~。ということで、確かあゆみ橋の下に渡し船の乗り場があるって、ちゃんと予習してきたんですよ!これで沼津港まで行けたはず。」

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- 「あれ・・・!?!???」
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- 「残念、それ冬季は運行してないのよね~~。」
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- 「え~~~~~~!!!」
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- 「大丈夫、私の車がありますから、それで沼津港に行きましょう。"お橋見"任務はこれにて完了でいいですね。なにかおいしいものでも食べにいきましょうか。」
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- 「賛成~!ありがとうございます。」


あゆみ橋から車で10分弱。あっという間に沼津港に到着!
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- 「向こうに大きな展望台みたいなものがありますね。あれはなんですか?」

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- 「これは、沼津港大型展望水門『びゅうお』といって、港に住んでいる9000人を守るために作られた水門です。水門の重さは406トン!」
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- 「406トン?!水門ってことは、それが動くんですよね。すごい。実感がわきません・・・それにしても大きな水門ですねー。」
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- 「これだけ大きいから、その高さを生かして、展望施設も作られているのよ。よかったら行ってみる?」

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- 「地上30mまできました!愛鷹山(あしたかやま)、富士山、南アルプス、遠くには清水の方まで見ることができるのよ。」
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- 「ほんとですね。360°景色が見れて、駿河湾も一望できます。」
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- 「向こう側にも行ってみましょう。ここはなんといってもこの真下の千本松原と目の前の駿河湾、そして世界遺産の富士山の3セットそろってるところがとても綺麗なの。まぁ今日はあいにくくもり空だけど、晴れたときは本当に絶景なのよ。」

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- 「タカせんぱい!さっき受付の方とお話したんですけど・・・このびゅうおの建設には当社も関わっていたみたいですね!」
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- 「そうなの、まさにいま私たちがいる展望施設と渡り廊下がウチの施工なのよ。」
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- 「へぇ、こんなお仕事にも携わってるんですね、なんだか嬉しいです!」
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- 「ところで!この目の前に広がる駿河湾、最も深いところで最深2500m、この深さも世界一だって知ってた?その道の人がたびたび訪れて珍しい深海魚を撮影するスポットになっているそうよ!というわけで、深海魚といえば・・・」
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- 「あっ、シーラカンス!!!そのこと、すっかり忘れてました。ハカセが、水族館があるって。行ってみたいです!是非!」
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- 「ここから歩いて5分くらいよ。早速いきましょう。」


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- 「到着~!いよいよシーラカンスとご対面ですね!!」
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- 「カモちゃんテンション高い・・・。」
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- 「古代魚ファンらしいですよ。」
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- 「シーラカンスは恐竜が絶滅する前の3億年前からずーっと存在していた古代魚なんです!しかも3億年間で他の動物が足を生やしたり空を飛べるように進化したりしてる中、シーラカンスは『そのまんま』の形なんですよ!」
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- 「はいはい、知識のお披露目はそこまでにして、そろそろ行きますよ。」


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- 「さすがの大迫力です!私が両手を広げても、シーラカンスの方が大きい!」
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- 「思ったより見た目が怖いですね・・・。」
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- 「冷凍保存されたシーラカンスが見られるのは世界でここだけなのよ。」
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- 「それは、ロマンがありますね。」
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- 「あゆみ橋に続いて、ここにも"世界初"があったんですね!」
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- 「それでは、せっかくですから、深海魚でお食事でもどうですか?」
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- 「ハカセ 、今見てきたあの魚たちを食べる気ですか!?ていうか、深海魚って食べれるんですか!?なんだかおいしそうなイメージ、膨らみませんけど・・・」

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- 「この沼津港には深海魚のお店がいくつかありますよ。ご案内しましょうか?」
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- 「では、よろしくお願いします。」

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- 「深海魚丼って書いてありましたけど・・・」ドキドキ
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- 「深海魚丼、3つ!」 速オーダー

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- 「あれ? なんだかイメージと違うけど・・・おいしい~(^^) 普通に天ぷら!」
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- 「カモちゃん想像通り(!)のお店もあるんだけど、今日は休業みたいね。」
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- 「それは残念でしたな。深海魚もなかなかイケますね」
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- 「今日は本当に盛りだくさん、沼津はステキなところでした。"お橋見"の旅ってほんといつも楽しいなぁ。・・・あれっ!!そういえば、肝心の"お橋見ポーズ"写真を撮るのを忘れてるじゃないですか!( ;∀;)」
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- 「そうでしたね。駅前ですから、帰りにもう一度寄って行きましょうか。」
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- 「着いた~!!ではでは、私が左側のPC張弦桁橋・・・」
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- 「私が右側の斜張橋で、二つ合わせて、」
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- 「あゆみ橋のポーズ!」

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- 「おつかれさまでした!」
カモちゃんの絵日記
2017年1月9日 行った場所:あゆみ橋

「ナイスアベック!
息ピッタリ! な
コンビネーション抜群の
橋でした!」
―つづく