#34 梅の木轟公園吊橋
- 「この山道、カーブが多くて運転しにくいなぁ...」
- 「こんな道でも国道なんですよ」
- 「これが世に言われている国道ならぬ酷道か。道もかなり狭いし、私には絶対運転できん!」
- 「まだまだ先は長いですよ!がんばりましょう」
- 「えぇ―――――――――――――っ」
梅の木轟(うめのきとどろき)公園吊橋に無事到着
- 「やっっっと着いたーーー!」
- 「ハァ疲れた...」
- 「あーちゃん見てみて!きれいな紅葉!!」
- 「すごーい!絶景やね!!!」
橋の概要
- 名称
- 梅ノ木轟公園吊橋
- 位置
- 熊本県八代市泉町
- 構造形式
- PC吊床版橋
- 橋長
- 116m
- 架設方法
- 懸垂架設工法
- 竣工年
- 1989年
- 「このあたりは五家荘(ごかのしょう)と呼ばれる地域で、昔々、壇ノ浦の戦いに敗れた平家が逃げ延びてきたという平家落人伝説で有名です。今では、とても美しい紅葉が見れるスポットになっています」
- 「ほんとインスタ映えしそう!」
- 「深い谷の紅葉の景色に軽快な吊り橋がみごとです。この橋は、渡った先にある"梅の木轟"という幻の滝へのアクセスのためにつくられたもので、橋長は116mあります。施工された当時、この構造では日本一の支間長でした」
- 「吊り橋って木でできてるイメージだけど、予想と違っとった!」
- 「確かに。どういうつくりになってるんやろ?」
- 「この橋はPC吊床版橋といって、橋台の間に張り渡したPC鋼材を、薄いコンクリートで包み込んで床版とした形式の橋です。引張力に強いPC鋼材と圧縮力に強いコンクリートの特性をフルに活かした構造で、床版の断面はこんな感じになってます」
- 「ほんとだ。PC鋼材がコンクリートに包まれてる」
- 「人が通る部分の床版をそのまま吊構造として橋を支えるとてもシンプルな構造です。部材がとても薄くて使用材料が少ないので、このような山奥の深い谷でも施工しやすい構造なんです」
- 「施工しやすい構造ってなんのこと?鮎の瀬大橋も深い谷を渡すために、すごいことをやってつくってましたよね」
- 「施工方法はこんな感じです。[1]橋台の施工、グランドアンカーの施工、[2]PC鋼材(1次ケーブル)の張渡し、[3]プレキャスト版の設置、[4]間詰めコンクリート打設、PC鋼材(2次ケーブル)の緊張」
- 「使ったプレキャスト版は、佐賀県にある当社の三田川PC工場で製作して、ここまで運んできたんだ」
- 「えっ、佐賀県からですか。遠いところから運んでくるんですね」
- 「ほら。ここを見てください。コンクリートの色が違っていますよね。白っぽいほうがプレキャスト版で、少し黒っぽいほうがここで場所打ちしたコンクリートです」
- 「ほんとだ。ちょっと色が違っていますね」
- 「コンクリートって同じ色ではないんですか?」
- 「コンクリートは、水・セメント・砂・砂利を混ぜ合わせつくるのですが、素材として使う砂、砂利は産地よって色が違うので、それがコンクリートの色に影響します。他にもセメントの色や量とかによったりします」
- 「なるほど」
- 「ところで、この橋は何人くらいまで乗っても耐えられると思います?」
- 「50人くらいかなぁ?」
- 「うーん、100人!」
- 「もうちょっとです。1m2あたり100kgの重さまで耐えられるようになっています。橋の全体だと14トンくらいで、1人が60kgだとすると230人くらいです」
- 「そんなに大人数でも大丈夫なんですね。だったら、ちょっとジャンプしてみるけん、つかまっとってね」
- 「え!!ちょっと待って!うわーーー!」
- 「あーちゃん、やりすぎですよ。僕は大丈夫ですが」
- 「びっくりした...。ハカセもしっかり掴まってたじゃないですか!」
- 「ハハハ...(汗) 流石にジャンプすると揺れますね」
- 「つい出来心で...(笑)」
- 「でも、まるで浮かんでいるようなこの橋がどうやってそんな重さに耐えられるんですか?鮎の瀬大橋でみたような橋脚は見当たらないし」
- 「斜張橋の鮎の瀬大橋は、斜材の引張力と主桁の圧縮力を橋脚に伝えることで重さを支えています。それに対して、吊床版橋ではその形状によって重さを引張力にすることで支えています。床版から伝わる引張力は両側の橋台で支えていて、橋台はグラウトアンカーというPC鋼材でつくられたアンカーによって地盤に固定されています」
- 「見えないところで、懸命に支えてくれているんですね...(涙)」
- 「では、この橋になりきってポーズをとってみませんか」
- 「はい!」
- 「今日は楽しかったね~」
- 「ノリでここまで来たけど、ほんと来てよかったね!」
- 「橋の良さ、お二人にも伝わったようで何よりです」
- 「当社の施工した橋たちが、観光スポットになってるって嬉しいね」
- 「またお橋見行きたい~」
- 「じゃあそろそろ帰りますか!」
ハカセを見送りに熊本駅へ到着
- 「今日は一日ありがとうございました!」
- 「またどこかで会える日を楽しみにしてまーす!」
- 「橋があるところにいつでも駆け付けますよ(橋ガールだけに)」
2021年11月8日
行った場所:梅の木轟公園吊橋
はしとまちとひとで創り出す
アートな橋!
熊本に、かモーン!!
―つづく