#07 江島大橋(ベタ踏み坂)
海外にも進出して絶好調の「橋ガール」。「あちこち行って、もっとおいしいお橋見レポートして行くぞー!」と今年もはりきっているところですが、ここしばらくは『本業』も忙しくなかなか取材予定が組めていないようです。で、近頃は仕方がないのでテレビなんかに登場するお橋様を見て「行きたい~」と盛り上がってるんだとか。今回の橋ガール、そんな彼女たちがテレビCMで見かけた「例の橋」の話題です。
橋の概要
- 名称
- 江島大橋(えしまおおはし)
- 位置
- 鳥取県境港市渡町~島根県松江市八束町
- 橋長
- 660m(54.25+150.0+250.0+150.0+42.25m)
- 形式
- 5径間連続PC有ヒンジラーメン箱桁橋
- 竣工年
- 2004年

キ~ン、コ~ン、カ~ン、コ~ン
ある日のお昼休み・・・
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- 「ねぇねぇ、ルナちゃん、『あれ』見た?」
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- 「『あれ』、ですか?」
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- 「そうよ、あれよ!ほら、トヨ○ツと綾●剛のさぁ・・・」
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- 「あ~センパイ、話題のテレビCMの『あれ』ですね。強烈な坂を登ってっちゃうっていうヤツ。綾●剛、かっこいいですよね~。もしかして『センパイ世代』はトヨ○ツ派ですか?」
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- 「なにその世代で差別するような言い方!っていうかさ、そんなんじゃなくてさぁ、知ってる?あそこに登場してる『ベタ踏み坂』の正体。」
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- 「ジャンプ台みたいな強烈な坂ですよね。えっ?『正体』ってCGとかで作てるんじゃ・・・」
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- 「あーーーーっ、なんてことだ。ルナ様!あなたの目は節穴ですか?ってね。どうやらまだ気が付いてないみたいね。」
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- 「み、みたいですね。で、いったいなんなんですか、その正体って?」
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- 「あの正体はね、実は大きな橋で、実在してるんだって。どう?びっくりじゃない?」
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- 「ホントですかぁ?もしそうだとしたら・・・お橋見行かなきゃじゃないですか!」
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- 「でしょ!しかもねー、それをウチが施工してたりなんかするわけよ。」
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- 「センパーイ、それってぜっっっったい行きたい!!早速ハカセに相談して計画しましょうよ。」
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- 「でしょでしょ!ベタふみ坂、どんなに急でも登りたガール、橋ガール!!」

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- 「じゃぁ、ハカセのところに行ってみよう。ハカセ―・・・あれ?いないみたい。」
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- 「センパイ、ここ見てくださいよ。今日は米子に出張だって。いつも忙しいんですね。」
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- 「米子・・・あれ?さっきの橋って・・・」
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- 「ちょっと電話してみましょうか。」


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- 「ふぅ、ようやく到着。と言っても、意外に早かったですね。米子はA社の羽田便のほかにS社成田便も就航して、時間もお値段もずいぶん来やすくなりました。早速レンタカーを借りて、『例の場所』に向かうとしますか・・・」


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- 「気温3℃、さすがに冬の山陰は寒い。夕べはかなり雪が降っていたみたいで、歩道にはまだ残ってますね。急な坂道ですからね、転ばないようにと・・・」


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- 「ほぉー、ロシア語ですか。さすが境港、国際的ですねー。歩道にはアジアの中心!みたいな絵がありますよ。」

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- 「晴れてたら大山のほうまで望めるのか・・・やっぱりお二人も連れてきてあげたらよかったですかね。でもたまにはこうやってじっくりひとりで見れるのもいいものです!」
ぶるるるっ、ぶるるるっ、ぶるるるっ!
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- 「会社からのようですね、なんかいやな予感がする・・・あ、もしもーし」

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- 「こんにちはー!ハカセですか?」
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- 「あ、ル、ルナさん、こんにちはー。き、今日は出張で米子なんですよ、さっき空港に着いて車で移動しはじめたところなんです。」
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- 「お疲れ様です。ハカセはいつもお忙しいですね。今、お電話大丈夫ですか・・・」
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- 「ちょっとルナちゃん、その電話変わってよ!ハカセー、米子ってまさか軽自動車借りて『ベタ踏みー』とか言って楽しげに『お橋見』してたりしないでしょうね、私たちを置き去りにして!」
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- 「(ギク!)確かにベタ踏み~、いや、そんなでもないかな・・・って、なんでわかりました?」
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- 「えー、そうなんですかぁ?ずるーい。」
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- 「そうよそうよ、ずるいじゃないですか。米子出張って怪しいと思ったら図星でしたか。いまあちこちで話題みたいだし『橋ガールが紹介しなくちゃ』って思ってたところだったのに。ヌケガケしちゃダメじゃないですかぁ。」
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- 「す、すみません。ちょっと近くでお仕事がありましてですね・・・ここは松江まで抜ける、鳥取と島根を結ぶ交通の要所でしててね。通らない訳にはいきませんし・・・」
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- 「ホントですか?まぁ、マジメなハカセがそうおっしゃるなら信じて許してあげますけど。」
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- 「センパイ、今日はずいぶん偉そうですね。でも、せっかくですからハカセに現地の様子も解説してもらって、行ったつもりでレポートつくっちゃいましょうよ。」
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- 「ルナちゃん、それはいい考えです。じゃぁ、撮った写真をどんどん送りますから、また連絡しますねー。」
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- 「センパーイ、早速メール来ましたよ」



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- 「わぁ、ほんとにすごいですね。」
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- 「ちゃんと『ベタ踏み坂』って看板出てる。知られざる日本の名所『天に昇る橋』だって。すっかり観光名所みたいになってるじゃない。」


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- 「こっちは上から撮った写真みたいだね。下っていくこっちのアングルもかなりの迫力!」
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- 「この地図で差している方向に撮った写真みたいですよ。奥に見えるのが大根島ってことですね。確かに空港のある鳥取の境港市側から島根の松江市方面に抜けるのに重要は場所みたいですね。」
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- 「なるほど・・・でも、こんな写真ばっかじゃ、結局どんな橋なのかちっともわかんないじゃない。」
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- 「あ、また続きのメール来てますよ!」




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- 「下から見るとすごい迫力なんですね!」
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- 「橋脚の付け根のところの桁高さは15.5mもあるみたいよ。ビルで例えたらこれで4階分よね。走っているタンクローリー車と比較してもその大きさ半端じゃないよね。」

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- 「あ、センパイ。この真ん中のところって、もしかして・・・」
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- 「そうそう、例のヒンジよね。ほら、橋の概要にも『有ヒンジ』って書いてある・・・」
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- 「ピーンポーン!そう、その通り。前に後楽園でみた橋とおなじ構造です。真ん中で繋がってはいるんですが、橋桁が完全に連続しているわけではないんですね。」
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- 「あれ?ハカセ、聞こえてるんですか?」
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- 「あ、いつのまにか電話つながってる!」
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- 「では、改めてレポートしましょう!こちらの写真が真ん中の様子ですね。橋の上から見るとこんなふうに道路面に伸縮装置がついているんです。」


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- 「それに高欄なんかはこんなかたちになっていて橋が伸び縮みしても隙間ができたりしなようになっています。」

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- 「そうか、高欄が途切れていたらこわいですもんね。あ、ってことはハカセ、歩いて渡ってるんですか?」
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- 「歩いてますよ。もちろん車でもベタ踏みしてみましたけど、お橋見レポートですからね、じっくり歩いてみましたよ。橋は全部で1.4km以上あるので往復で約3km近く続く坂道、いい運動になります。地元の方にでもお会いできたらインタビューでもと思ったんですが、あいにく雪交じりの天気で往復する間にすれ違いそうもありませんね。一人で坂道をひたすら歩き続けるっていうのはちょっとさびしかったですね。」
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- 「だから私たちがお伴すればよかったんですよ。でも、そもそも何でこんな場所でこんなに巨大な橋になったんですか?」
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- 「ここは最大5000tクラスの船が通るってことで、橋の中央部の桁下は33m以上の高さを確保する必要があったんだそうですよ。」

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- 「5000tクラスかぁ、よく分からないですけど戦艦ヤマトぐらいが通るんですかね。」
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- 「タイタニックとか?」
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- 「ははは、そこまでは大きくないですけどね。で、橋の一番高いところまで上る勾配が島根県側で6.1%あります。100m進んで6.1m上がる急坂です。」
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- 「それってすごいんですか?」
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- 「数字だけだと分かりにくいですが、お正月にやる箱根駅伝の山登り区間の平均勾配が4%より少し小さいくらいですから、結構きつい坂ですよね。スキー場の初級者コースくらいはあるってことですね。」
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- 「そうそう、一緒に施工してた当時の写真も送っておきましたけどご覧いただけましたか?下側の床版は厚さ2.55mです。走り高跳びの世界記録より高いんです。」

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- 「へー、(よくわからない例えだけど・・・)なんとなく大きいことは伝わります。で、そんな大きなものをどうやって作っていったんです?」
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- 「採用した工法はですね、移動作業車を使ったシンプルな張出し工法です。でも橋の規模が大きいのと工程を短縮するために、通常の移動作業車より4倍の能力があるおおきな作業車を使ったそうです。」

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- 「ハカセ、右側の橋桁ができているところ!ずいぶん張り出してるけど大丈夫なんですか?」
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- 「鋭いところに気付きましたね。実はこの右側でも同じように張出し工法を使っているんです。左側の大きな張出し施工しているところより先に端部をつなげているのでこんなかたちになっているんですよ。」
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- 「ちなみに(概要にある)支間が250mって日本一ですか?」
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- 「PC桁橋では日本で一番大きい支間です。で、橋ガールなら気が付かないかな?こういうところなら、普通は斜張橋とかエクストラドーズド橋になるんじゃないかなって。でもね、ここは空港が近くにあって高い主塔が建てられないっていう条件もあったらしく、それでこんな巨大なPC桁橋になったそうですよ。」
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- 「勉強になります!」
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- 「そうだ、歩いてたらこんなものを見つけましたよ。ここは県境に架かっている橋なので橋の途中にはこんな看板があります。」


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- 「道路の白線も県境の印なんでしょうか。」
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- 「そうかもしれませんね。地図をよく見ると分かるんですがこの県境は川の真ん中ではなくて鳥取県側の川岸に近いところになります。なので県境表示の位置も後ろの川岸の端とあってるんですよ。それから、それぞれの県側には、県花や特産品などが紹介されていましたね。左が島根県側のもので、右が鳥取県のものですよ。」


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- 「本当だ!おもしろい。」
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- 「あ、マツバガニ!ハカセー、もしかしてこっそり美味しいもの食べようとか思ってるんでしょう!!」
プツッ、ツー、ツー、ツー
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- 「おっと、危ない危ない。さすがタノちゃんは勘が鋭いですね。墓穴を掘ってしまうところでした。では、橋の取材はこの辺にして、腹ごしらえに行きましょうか・・・」

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- 「水木しげるロードを越えて、港のほうに出てと・・・えーっと、確かこの辺で見かけたような・・・あ、あのノボリ。」


http://www.sakaiminato.net/site2/page/point/gourmet/sakana/mine/
(リンク先:境港市観光ガイド)


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- 「それでは感謝して、いただきましょう。」
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- 「ねぇ、ルナちゃん。ハカセ、やっぱり怪しくない?いまごろ『うまいー』とか言って子供みたいに食べちゃってたりして。」
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- 「そうですね、でも橋ガール取材は近場のお得情報もお伝えしなきゃですからね。それもやっていただかないと仕方がないんじゃないですか?」
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- 「うーん、そうなんだけどなんか納得いかないなぁ。だって、ハカセ橋ガールじゃないじゃん!」
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- 「あ、またメール来てますよ」


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- 「!!!」
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- 「ハカセー、ずるーーーーーい。」
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- 「ルナちゃん、電話!」
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- 「いやー、美味しくいただきました。なんでもお店の方に取材の話をしたら、橋の建設当時にウチの社員がご飯食べに来たことを覚えてくれていましたよ!うれしいですよね。」
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- 「美味しいに決まってますよね。もう、ちゃんとお土産くれないと許しませんよー。」
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- 「ですよね。と思って、さっきちゃんと用意させていただきましたよ。お二人がこれからハッピーにご活躍できますよう、しっかり神様にお願いしてきましたから。じゃぁ、帰ってからのお楽しみに・・・」



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- 「ふぅ。ということで、お橋見取材はここまで。ちなみに、帰りがけに通りかかった大根島からのショット。やっぱりその大きさ、怪物級ですね。今回のベスポジはこちらでどうでしょう!出張用にカメラが小さかったので、今度はもうちょっと大きなレンズで橋ガールに来ていただきましょうか。また、ご縁がありますよう・・・」

タノちゃんの絵日記
2014年1月某日 行った場所:江島大橋(ベタ踏み坂)

「 ベタ踏み坂を登り切れば、
そこは『春』です・・・か? 」
―つづく