#19 さんかく橋
前回からの続き、、、
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- 「さぁ、あと少ししたら、お目当ての橋に着きますよ。」
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- 「多摩ニュータウンかー。ちょっと都心から離れてるけど、自然が多くて、暮らしやすそうな街だよね。」
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- 「ジブリの『耳をすませば』のモデルになった場所だよね!中学生のとき、聖司くんに憧れてたな~(☆υ☆)キラキラ 」
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- 「あぁ、わかるわ~。それ、みんな好きだよ!!」
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- 「私はもののけ姫のアシタカ派だったな。それより、ここって日本最大のニュータウンなんだって?」
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- 「そうだよ~。多摩ニュータウンができたのは、1970年代だから昔からある街って感じするけど、最近だと、企業がコラボしたりして団地のリノベーションとかもやってるから、再び注目を浴びてる感じだよねっ。」
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- 「へー。とういうか、住宅街なのに橋がたくさんあるね。今歩いてるだけでも、1、2、3、.....。いや、多すぎでしょ!?」
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- 「な・なんと多摩ニュータウンには160以上の橋があるんです!」
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- 「ひゃくろくじゅうって・・・、なんでまたそんなにあるのさ?」
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- 「このあたりは多摩丘陵の自然の地形を生かしながら開発された地区だから、山谷が多く残っていて高低差があるんだって。だから自然と橋が多くなったみたいだね~。」

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- 「さぁ、ようやく目的の橋が見えてきましたよー!」
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- 「おぉ! なんだかさっきの舞の橋と違って、『ザ・橋』って感じがする!!」

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- 「あー!みてみてー。橋の名前がバス停の名前になってる!」
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- 「本当だ。『さんかく橋』って書いてあるね。」
橋の概要
- 名称
- さんかく橋
- 位置
- 東京都多摩市
- 橋長
- 72.0m
- 形式
- 2径間連続PC斜張橋
- 架設工法
- 固定支保工架設工法
- 竣工年
- 1978年


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- 「それはそうと、なんかこの橋"シュッ"ってしてない?さっきの舞の橋とはだいぶ印象が違うような・・・、橋桁が薄いから??」
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- 「舞の橋は、橋桁を薄くするために魚の骨が続くように梁がかかっていたけど、ここの橋桁は梁とかなさそうだし・・・。こんなに橋桁が薄くて橋って成り立つのかなぁ?」
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- 「でもなんだか、真っ白に塗装してあって綺麗だね。」
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- 「勝手なイメージだけど、橋ってだいたいすごく支間がとんでたりするじゃない。だからでっかくて、ごっつくて、重厚感あって"ズーン"みたいな重いイメージがあるんだよなー。」
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- 「あと、建築だと外装材とかが取付くけど、あまり橋自体を塗装してあるのも見かけないよね。無垢のコンクリートとか躯体がそのまま仕上げになっているイメージがあるんだよね。」
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- 「たしかにそうだね。ここにくるまでたくさん橋があったけど、この橋は白くて綺麗でシルエットが目立つから、このあたりのシンボルみたいな橋だね。」
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- 「だいぶ盛り上がってきましたねぇ。とりあえず橋の上に登ってみましょう。」

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- 「こちらの橋は、斜張橋という形式です。」
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- 「見たことある!でも斜張橋って、ものすごく大きい橋で採用されているイメージがあるかな。横浜ベイブリッジとか。歩道橋の規模で斜張橋って珍しい気がするんだけど。」
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- 「うん、で、そもそも斜張橋ってどんな橋なのさ?」
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- 「斜張橋は、橋の上にある塔から斜めに張ったケーブルで橋桁を直接吊って支えている構造の橋のことです。あのケーブルに緊張力を与えて橋桁をつり上げているので橋桁を薄くすることができますね。もし一般的な箱桁の橋をつくろうとしたら、この橋のなら1.5~2mくらいの厚みになってしまいます。だから橋桁が薄いっていうのは斜張橋だからこそってことですね。ちなみにこの橋のように真ん中を吊ったものを1面吊り、橋の端2箇所を吊ったものを2面吊りといいます。」
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- 「へー。橋桁の薄さにはそんな秘密があったのかー!」
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- 「ただ、斜張橋は一般的な箱桁の橋よりもコストもかかります。でもこの橋は鎌倉街道を跨ぐ利用者だけでなく、多くの人の目に触れるのでシンボル的な橋にしたかったということで斜張橋になったそうです。」
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- 「たしかに橋の名前がバス停の名前になってたりするし、街のシンボル的な橋なんだね。」

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- 「あっ!このつなぎ目はエキスパンションジョイントだよね!」
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- 「はい。舞の橋にもありましたが、橋は基本的に橋と道路にエキスパンションジョイントを設けて、地震がきたときに橋が道路とぶつからないようにクリアランスをとっています。」
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- 「あぁ、そのへんは土木も建築も同じだね。舞の橋では隠すようなデザインをしていたけど、普通はこんな感じに見えるんだね。やっぱり舞の橋の方がカッコよかったなぁ・・・」
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- 「確かに。でもエキスパンションジョイントは構造的にも大切な部分だから、点検や補修なんかのメンテナンスを考えれば、こういうシンプルなディテールの方が良かったりするんじゃないかなぁ。」
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- 「なるほどー さすが構造設計者!!」
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- 「そういえば、斜張橋のケーブルってただ張るだけでなく、緊張してるんだよね?んー。橋の裏側とかかな?橋の下に降りてみよーか!」

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- 「あっ!なんか金具あるぞ!これかー?」


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- 「ざんねん。これは、落橋防止構造というものです。大きな地震がきて仮に橋を支えている支承が壊れても橋桁が橋台や橋脚から落下しないように取り付けてあります。みてください、少しケーブルがたるんでますよね?大地震がきて大きく揺れて橋がいよいよ落下しそうな直前で"ピーン!" となって落下を防ぐようになっているので、普段はあえて少したるんでいるんですよ。」
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- 「なるほど。橋の裏側にはそんな対策もしてあるんだ。」
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- 「舞の橋は橋桁の上裏(あげうら)がデザインされていたけど、この橋は装飾をなくして『薄さ』に特化してるのかぁ。」
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- 「うん、やっぱり舞の橋は建築家が計画に参加していたからデザインできた部分が大きいんだね。だけどこの橋には特別な装飾はないけれど構造的な美しさがある。」
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- 「そういえば、ケーブルはどこで引張ってるのよ?それらしきものはないけど。」
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- 「そうだね、斜張橋でケーブルを緊張するときには、塔の上か、橋桁の下で緊張するんだけど、この橋の場合は塔の上で緊張しているみたいだね。だって桁裏には#17あゆみ橋のように後埋めしたような跡ないし」
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- 「その通り、みなさんだんだん橋の構造がわかるようになってきましたね、さすがエンジニア女子!」

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- 「ちょっと橋のまわりもみてみよーよ。」

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- 「あー!橋を渡ると広い公園につながってる!天気がいいからピクニックでもしたい気分だわー。」
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- 「本当だね!橋の奥にこんな自然が溢れてるなんて意外だねー。それになんかこの公園、車の気配を感じないからすごく静かだね。」
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- 「多摩ニュータウンは、『歩車分離』ってコンセプトがあるから。たくさんの団地と自然を橋でつなぐことで、街がつくられてるんだね。」
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- 「なるほど、橋が街づくりに一役かってるんだなー。」

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- 「みてみてー!公園の中にランニングコースがあるよ!」
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- 「さんかく橋もランニングコースの一部になってるんだね。」
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- 「そういえばさっき、ランニングしている人いたわー。よーし、さっきパンを食べ過ぎたから、私もいっちょ走ってくるか!!!」
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- 「あっ、ちょっとゆかパンー!! あ〜あ、行っちゃった・・・」
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- 「(ゆかパン、お橋見に飽きてきて逃げたな・・・)」
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- 「『さんかく橋』を設計した人は、こんな風に使われるなんて考えてたのかな?建築を設計するときって、その場所、空間がどんなふうに使われるかを考えてつくっていくけど。」
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- 「たしかに。橋って主な用途が通行だもんね!」
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- 「最終的には、道として使われる以外にも、実際はランニングコースになってたり、橋が街の一部として使われているんだね。」
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- 「ただいまー!!いやー天気のいい日のジョギングは気持ちいいね。ここは緑も豊かだしっ。」
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- 「はやっ!! もう1周したの? 本気走りじゃん??」
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- 「いやだって負けたくないし!」
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- 「(ゆかパン・・・アンタいったい誰と勝負してんのさ・・・)」
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- 「じゃあみんな揃ったし、最後に、橋の気持ちを体で感じよう。」

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- 「うーん、さっききより体の筋が伸びて気持ちいい!斜張橋って感じだね!」
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- 「ところで2つの橋を見ましたけど、いかがでしたか?」
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- 「やっぱり私は『舞の橋』の方が好きかなぁ。デザイン的なこだわりが散りばめられていて、勉強にもなったし。」
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- 「うん、そうだね。でもわたしは『さんかく橋』かな。機能重視でシンプルな構造美!街のシンボルにもなってるし。」
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- 「なるほどね。デザインが美しいと言ってもいろいろな美しさがあるんだなぁ。街に馴染むように細部のデザインにも配慮された『舞の橋』と、街のシンボルとなるようにシンプルながらも美しい『さんかく橋』か・・・どちらの橋もその目的やコンセプトに沿って考えられたデザインになっていて、街の人々から愛されているんだね。」
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- 「おっ、ゆかぱん、最後にいいこと言うじゃん!」
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- 「うん、なんだか、やる気出てきたぞー!明日からまたがんばろ!!私たちもいつか建築家として橋のデザインができるように!!」
3人の絵日記
2017年3月 行った場所:舞の橋、さんかく橋

「土木と建築のコラボ橋!
私たちもいつか設計者として携わりたい (夢見る建築女子) !!」
―つづく