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  4. #21 青雲橋

橋をつくり続ける会社の橋好き女子、
その名も「橋ガール」!
「橋好き女子」が勝手に橋の魅力を紹介しちゃう
プチプロジェクト。
『お橋見』のためなら日本全国、
いや世界の果てまでいってきまーす!

#21 青雲橋

ある1月のとても寒い日、さいぴーが支店の2階からPC工場を眺めていると・・・

ふーみん
「あれ、今日めっちゃ寒いのにこんなところで何してるんですか?」
さいぴー
「このPC工場で作られてる製品、どこで使われてるんかなぁ~って考えてたんよ」
ふーみん
「そんなん考えるん、さいぴーさんくらいですよ~!」
さいぴー
「そうかな~」

支店長
「PC工場で作られる製品に興味があるのでしたら、実際に見に行ってはどうでしょうか」

いきなり支店長登場

ふたり
「支店長!?お、おはようございますっ!!」
支店長
「四国では数多くの橋を当社が施工していますが、徳島県にはアジア初の国際的な賞を受けた橋があるんです」
ふーみん
「へぇ~そんなすごい橋があるんですね!知らなかったです」
支店長
「しかも、その橋にはこのPC工場で作られた製品がメインで使われてるんですよ」
さいぴー
「そうなんですか!?行きたい!行きた――い!」
ふーみん
「はっ・・・。この流れはもしや・・・橋ガール!?」
さいぴー
「橋ガールって何ですか?」
ふーみん
「橋ガール知らないんですか!?お橋見しながら勝手に魅力を紹介しちゃう、アレですよ~」
支店長
「それではふたりを橋ガールに任命しますので行ってきてください!」
ふーみん
「えー!!今日の徳島の天気予報は雪ですよ!?あたし寒いの苦手なんですっ(泣)」
さいぴー
「そんなこと言わないで!ほら!行くよ!」
ふーみん
(うぅ・・・しかたないなぁ・・・)
さいぴー
「それじゃあ、出発~!!」

今回のレポーターはこの二人。

ふーみん
「ところで、みんな徳島県ってどこにあるのか知ってるんかなぁ?四国あるあるで他の地域の人たちって何県があるんか知らない人多そう」

今回行く徳島県は、ココ!

さいぴー
「わぁ~!めっちゃ雪降ってきたやん」
ふーみん
「だから言ったじゃないですか・・・。青雲橋ってどこにあるんですか?」
さいぴー
「徳島県の、三好市山城町ってところにあるんやけど・・・」
ふーみん
「雪で道がすごいことになってますよ!」

ふーみん
「見えた!あの橋じゃないですか?」

橋の概要

名称
青雲橋
位置
徳島県三好市山城町大川持
構造形式
単径間PC複合トラス橋
橋長
97.0m
工法
懸垂架設工法
竣工年
2004年

ふーみん
「オレンジ色が山の景色と比べてすごく目立ちますね。しかも雪景色が幻想的!」
さいぴー
「もっと近くで見てみよ~」
ふーみん
「え~、車からでも見えますよ・・・」

しぶしぶ降ろされる

ふーみん
「あっ、支店長が言ってた賞って、これじゃないですか?」

ふーみん
「何か書いてますよ。フムフム、fib?あの海外ドラマとかでよく見るマッチョな人たちが悪いことをした人たちを捕まえるやつ!?」
さいぴー
「えーっと・・・私もよくわからん。こんな時はハカセでしょ!」
ふーみん
「そうですね!じゃあいつものやついきますよ!せーのっ」
ふたり
「ハ~カ~セ~~!!」
ハカセ
お~寒い!寒い!呼ばれたと思ったら何ですか、この大雪は!
私が橋ガールに呼ばれるときは晴天のハズなんですが・・・どちらか雪女ですか?」
ふたり
「ハカセこんにちは。寒い日にありがとうございます!」
さいぴー
「私はだいたい晴れ女なんですけど・・・ふーみん?」
ふーみん
「いやいや、そもそも私はインドア派なんでこんな日には出かけません!」
さんにん
(・・・この雪は誰のせい?)


さいぴー
「ところでハカセ、fibって何なんですか?」
ふーみん
「何でアメリカの連邦捜査局が賞をくれるんですか?そんなスゴイことをしたの?」
ハカセ
「いやいや、それはFBI。FBIは賞なんてくれませんよ(笑)。よーく見てください。fibですよ。fibとは、国際コンクリート連合Fédération internationale du bétonの略で、コンクリート構造に関する世界最大の国際団体です。世界的に優れたコンクリート構造物に授与されるfib賞の最優秀賞をアジアで初めて取ったのがこの橋です」

さいぴー
「田中賞も取ってるみたいですよ!これらの賞を取ったことで、日本の橋梁技術が世界トップレベルにあることが認められたんですね。でもこの橋のかたち、どこかで見たような気が・・・」
ハカセ
「ひょっとしてこの橋じゃないですか?上路式吊床版形式の歩道橋ですね」
ふーみん
「ほんとだー。潮騒橋の一つ分に似てる。あと、中のオレンジ色の部分が少し違うけど」
ハカセ
「正しくはやまぶき色なんです。でも、この橋の違いはそれだけではないんですよ。最優秀賞をとるにはそれなりの理由があるんです。橋の下から見るといろいろな秘密が分かるので渡って降りてみましょうか」
ふーみん
「じゃあここからお橋見捜査といきますか!なんだか面白くなってきた♪」

ふーみん
「わ~!下から眺めると、また一段と迫力がありますね!」
さいぴー
「あれ?橋の下側に、PCケーブルが見えてるのって珍しいですよね」
ハカセ
「さいぴーさん、鋭いですね。その通り吊床版橋の多くは、PC鋼材を部材の中に配置していますが、これは部材の外にあるので外ケーブルといいます。外に露出しているのでPC鋼材が錆びないように何重にも防錆が施してあるんですよ。今見えている黒い部分はポリエチレンで、これも中のPC鋼材を保護しているものです」
ふーみん
「外ケーブルにすると何かいいことあるんですか?」
ハカセ
「それは、この橋の作り方と大きな関係があるんです。この橋は急峻な渓谷に架かる橋ですから、下から支えるような支保工は組み立てられません。そこでPCケーブルを張り渡し、その上にプレキャスト部材によるユニットを載せて橋をつくっていったんです。これがその時の写真です。外ケーブルだと部材をその上に載せるだけでよいので施工もしやすくなりますし、ケーブルの配置間隔も制約が減るのでユニットの下の吊床版部分を小さくできるメリットもあったんです」

さいぴー
これがPC工場で作られた製品なんですね。ずいぶん大きな部材なんですね」
ハカセ
「大きいと運搬が大変なので、小分けした部材を工場から運搬して、現地で間のコンクリートだけ打ってユニットにしたんですよ。ユニットの間を現地でコンクリート打設しているから、よーく見るとコンクリートの色が場所ごとに異なっているのがわかるでしょ」
ふーみん
「ほんとだ。コンクリートも縞模様みたいになっている」

ハカセ
「さらによくみると、やまぶき色の斜材の真下になる部分には、突起がついていてそこで黒い外ケーブルの上に載っているのがわかりますよ」
さいぴー
「大発見!!コンクリートがべたっり全体に載ってるんじゃないんですね」
ふーみん
「謎がいろいろ解けてきたぞ!ハカセ、まだまだあるんでしょ?」
ハカセ
「その通り。今度は横から見てみましょう」

ハカセ
「あそこに飛び出た部分がありますよね。あれが先ほど見たPCケーブルの端部です。あそこで定着されているわけです」

ふーみん
「はぁ・・・それがどうしたんですか?」
ハカセ
「張り渡したケーブルを1次ケーブルといいますけど、はじめはその後方の橋台の裏で定着されていたんです。架設に伴いそのケーブルの上にプレキャストの部材を載せていけば、ケーブルはどんどん力がかかっていきますよね。ということは定着した橋台が谷に落ちないようにしなくてはなりません。そこで山側の斜面に孔をあけて、1次ケーブルと反対の方向にグラウンドアンカーという別のPC鋼材を配置して抑えていたんです」
さいぴー
「そうか、抑えがなければ落ちてしまいますもんね。山側で抑えてもらっていたんだ」
ハカセ
「でもそのままでは、ずっと山にお世話になったままになってしまう。そこで橋が繋がったら、1次ケーブルの定着を橋台から橋の端部に移して、ケーブルの力を橋自身に圧縮を与える力、プレストレスに変換したんですよ。これで山に頼らなくて済むようになったんです」
ふーみん
「へー、自立しちゃってるってことですよね」
ハカセ
「そうなんです。自分にとめているということで、こういうのを自碇式といいます。一方、潮騒橋などは端部のグランドアンカーでとまっているので他碇式といいます。青雲橋は、この自碇式の構造を世界で初めて車を通す道路橋に用いた橋なんです」
さいぴー
「なんだか、すごさが分かってきました」
ハカセ
「ここでちょっとマメ知識。実はこの青雲橋の下に流れる川、「銅山川」っていうのですが、この川の源流は四国支店がある新居浜市の別子銅山なんです」
ふーみん
「新居浜市から流れてきている川がこんなところまで繋がってるんですね。そう考えると、青雲橋はもちろん、この山城町もなんだか身近に感じます」
さいぴー
「それじゃここまで来た記念にお決まりのお橋見ポーズいっときますか!」

ふーみん
「地元の人がめっちゃ不思議そうに見てましたね...」

さいぴー
「PC工場で作られた橋を無事に見たら、急にお腹が減ってきた――!!」
ハカセ
「じゃあ、ちょうどいい時間になったのでご飯にしましょう。徳島で有名な食べ物を教えてください」
ふーみん
「食べることなら任せてください!山城町周辺の祖谷地方ではお蕎麦が有名ですよ!あとはあゆの塩焼きに~、でこまわし!全部食べたいなぁ~」
ハカセ
「デコマワシ?なんだか変わった名前ですね。どんな料理なんでしょう?」
ふーみん
「とにかく、行ってみましょう!」

清流のそば処 祖谷美人 https://iyabijin.jp/

ふーみん
「着きました~!!あっ、店内であゆの塩焼きやあめごの塩焼きとでこまわし焼いてる!ハカセ、これです、これっ。地元特産のじゃがいもやそば団子、岩豆腐、こんにゃくの串焼きなんですけど、なんだか人形みたいに見えませんか?囲炉裏で焦げないようにくるくる回しながら焼く様子が、伝統芸能阿波人形浄瑠璃の木偶(でこ)人形をまわしているように見えたことからその名が付いたらしいですよ」

さいぴー
「さー、お蕎麦冷めないうちに食べましょー♪」
みんな
「いただきまーす!」
ハカセ
「美味しい!は~お腹いっぱい満足です。そういえば、徳島には有名な祖谷のかずら橋がありますよね。お橋見つながりで、ちょっと行ってみましょう」

ハカセ
「あっ、3年に一度の掛け替え工事のため立入禁止ですって」
ふたり
「がーん」
さいぴー
「せっかくここまで来たのにかずら橋渡れないなんて...」

さいぴー
「よく見たら、歩くところすき間だらけやん。これ渡るのめっちゃ怖そう...」
ハカセ
「昔は人々の大切な生活路として、祖谷川各所に同じ様な橋がいくつも架けられていたそうです。橋はシチクカズラという植物でできているのですが、今は観光用の橋としてケーブルで補強されているんです」
ふーみん
「ちゃんとケーブルで補強してあったんだ!ただでさえ怖いのにケーブルが無かった時代のかずら橋は怖さ倍増ですね・・・」

さいぴー
「こっちこっち!ここから橋の全景が見えますよ!」

ハカセ
「さて、徳島観光もできたことですし、そろそろ帰りますか。家に着くまでがお橋見ですよ!」
ふたり
「ハカセ、ありがとうございました!!」
さいぴー
「帰ったら、支店長に報告しなくっちゃね♪」

再び雪道乗り越え、無事に会社に戻ったふたりでした

ふーみんの絵日記

2018年1月24日 行った場所:青雲橋

「もう周りには頼らない!自分の力で自分を支えるオ・ト・ナ~♪な橋でした!」

  • ふーみん

―つづく

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