#40 陣ヶ下高架橋
~ ある日の社内にて ~
- 「みやちゃん、さっきから何を読んでるの?」
- 「あ、きたちゃん! 大野美代子さんの作品集を見ているんです。おしゃれでスタイリッシュで素敵ですよね~」
- 「大野美代子さんって、全国各地の橋を設計してきた橋梁デザイナーだよね。
あ、この表紙は当社が施工した鮎の瀬大橋(#33)じゃない?他にも小田原ブルーウェイブリッジ(#3)も載っているね」
- 「当社施工の橋もたくさん設計されていますね。いいな~、私もお橋見行きたいです!」
- 「さっきまで打合せしてたから、ハカセはまだこの辺りにいるんじゃないかな」
- 「なんてグッドタイミング! ハカセ~!!」
- 「びっくりした! みやちゃんときたちゃんでしたか。どうしました?」
- 「大野美代子さんのデザインした橋を見てみたくて、お橋見に連れていってくれませんか?」
- 「お、そういうことでしたら連れていきたいところがありますよ。ここなんてどうですか」
- 「...巨大キノコ?!」
- 「面白い橋脚でしょう。横浜市にあるので場所も近いですよ」
- 「横浜?!横浜といえば港のイメージですけど...こんなに緑豊かな場所があるんですか?」
- 「そう、秘境のような場所ですよ。明日、最寄り駅で待ち合わせしましょう」
- 「やったー!楽しみです!」
~ 今回の橋ガールはこの2人 ~
~ お橋見当日 神奈川県横浜市の西谷駅前にて ~
- 「ハカセとの待ち合わせ場所ってホントにここで合ってます? 周りは住宅街ですけど...」
- 「写真で見たような森は見当たらないね...」
- 「2人とも、お待たせしました!」
- 「ハカセ遅いですよ~。待ち合わせ場所間違えたかと思いました」
- 「橋はどこにあるんですか?」
- 「ここから少し歩いたところに陣ヶ下渓谷公園という自然公園があって、橋はその中を通っています」
- 「渓谷!? 私たちこんな軽装備で大丈夫ですか??」
- 「横浜市では唯一の渓谷ですが、ハイキングコースもあるので大丈夫ですよ。さぁ、さっそく向かいましょう!」
- 「あれ、住宅地のなかに橋が見えて来ましたよ」
- 「これは横浜市の環状2号線の高架橋です。目的の陣ヶ下高架橋もこの路線の高架橋ですが、実はこの橋も当社の施工なんですよ。せっかくなので少し見ていきましょう」
- 「この橋脚のかたち、カクカクしていてロボットの足みたいでなんだか格好いいですね」
- 「そうですね。これから見に行く陣ヶ下高架橋とは対照的な角ばったデザインですが、これはこれで住宅地のなかにある高架橋としては、周囲の環境に配慮したデザインになって結構いいですよね」
- 「高架橋の下も公園として使われて住民のよい憩いの場となってそう」
- 「あれ、そういえばさっきからきたちゃんがいないような...?」
- 「ハカセ、きたちゃんいましたよ。もう、何してるんですか?!」
- 「あっ。つい遊具を見ると遊びたくなってしまって」
- 「あはは。楽しんでいますね。それでは、気を取り直して目的の橋に向かいましょう。すぐ近くですよ」
- 「ここから先が陣ヶ下渓谷公園です。先に進んでみましょう」
- 「すごい!住宅街を抜けると、突然森が現れましたね!」
- 「うわ~!緑の中にコンクリートの巨大建造物...なんだか神秘的でアニメの世界みたい」
- 「そうですね。北陣ヶ下高架橋と南陣ヶ下高架橋とがあって、今、見えているのが当社が施工した北陣ヶ下高架橋です」
橋の概要
- 名称
- 北陣ヶ下高架橋
- 位置
- 神奈川県横浜市保土ヶ谷区川島町
- 構造形式
- 連続ラーメン中空床版橋
- 橋長
- 外回り215.0m、内回り164.0m
- 架設工法
- 固定支保工架設工法
- 竣工年
- 2001年
- 「よく見ると、橋脚に木目の模様がついていますね」
- 「いいところに気付きましたね。杉板を使った型枠にコンクリートを流し込んでつくられているので、杉の木の木目がコンクリートに転写されているんです」
- 「ほんとだ。触ってみると木の表面のようなザラザラ感がありますね」
- 「わ~見て見て!こっちの橋脚は蔦が絡んで、大自然と一体化してる!」
- 「杉板の木目によって表面が粗くなるので、橋脚に蔦が絡みやすくなって、より周囲の景色との調和がとれるんですよね。この渓谷はとても自然豊かで、多くの動植物が生息しています。その生息環境を守るために、外回りと内回りの橋の間を大きくとって、雨水や太陽光が橋の下にも届くようになっています」
- 「確かに!見上げたときに隙間から差し込む光もキレイ...!」
- 「自然と調和することを重視してつくられたんですね。柔らかい丸みのある形が素敵で、森の中に溶け込んでますね」
- 「橋の上にも行ってみましょうか。二人とも、こっちこっち!」
- 「はぁ、はぁ...。ハイキングってこんなに大変でしたっけ?」
- 「あともうちょっとですよ。頑張ってください!」
- 「ここから橋の上に出れるみたいですよ」
- 「上に出てみると一見普通の道路なので、この下に幻想的な橋脚があるなんて想像がつかないですね」
- 「見てください。ちょうどあの辺りから照明が変わっているのが分かりますか?」
- 「透明な壁のあたりから街灯みたいな照明がなくなっていますね。光源はどこにあるんでしょうか?」
- 「道路の上側の少し低いところに緑色の部材が伸びているのがみえますか。あれが道路の照明になっています。先ほど通ってきた公園にはさまざまな生き物が住んでいるので、高いところに照明があると光が橋の下に漏れてしまって、夜行性の生物の生息に影響してしまいます。そのため、この辺りはライン照明になっているんですよ」
- 「生き物にも優しい設計なんですね! 周辺の豊かな自然環境といかに共生するか、色々な工夫が感じられますね」
- 「ちょうど公園の入り口に戻ってきたし、"恒例のアレ" やろうか!」
- 「周辺の環境にどこまでも配慮しながら、さらに自然と一体化することで荘厳な風景をつくりだしているところがこの橋の魅力ですね。では、そろそろ帰りましょうか」
- 「はーい。今日はありがとうございました」
2024年8月2日
行った場所:陣ケ下高架橋
気分は森の小人?
観と自然を守る巨大キノコ橋
―つづく