#39 新接岨大橋
~ 安倍川橋をお橋見した翌日 ~
- 「さあ、今日は気持ちを切り替えてタカ先輩にオススメしてもらった大井川水系でお橋見ですよ!とっても良い天気!」
- 「良い天気というか...陽射しが強すぎませんか?」
- 「確かに、橋の上は屋根も無いし日傘が欠かせないわ...あれ、あそこの日傘をさしてる人、ハカセじゃない?」
- 「本当だ!ハカセ!こんにちはー!」
- 「こんにちは。安倍川橋のお橋見は楽しめましたか?」
- 「はい、当社では珍しい鋼橋ということもあって、新鮮な気持ちでお橋見できました!」
- 「静岡市役所の堀井ハカセにたくさん説明をしていただいて、100年間市民の生活を支える偉大さをばっちり学んできました!」
- 「楽しまれたようで何よりです」
- 「ハカセも来ればよかったのに」
- 「私はコンクリート橋専門なので...と言いつつ今は木橋の上ですが。お二人とも、この橋で何か気がつくことはないですか?」
- 「気がつくこと...木造なので歩くと少し揺れますね、えいっ(軽くジャンプする)」
- 「わっ、やめてくださいよ...。それもありますけど、かなり長い橋ですよね。向こう側がずいぶん遠くに見えます」
- 「そう、よく気がつきましたね。この橋は『蓬莱橋』と言いまして、全長897.4mの『世界最長の木造歩道橋』としてギネス世界記録に認定されているんですよ」
- 「世界最長!」
- 「確かに、今まで歩きながら話していたけどやっと真ん中だって」
- 「ところでハカセ、もしかして今日のお橋見は蓬莱橋なんですか?大井川水系とは聞いていましたけれど」
- 「鋼橋の次は木橋ということ?」
- 「いえ、残念ながらこの橋は当社の施工では無いのですが、ぜひ紹介したかったので。それに、ここはお橋見スポットでもあるんですよ」
- 「えっ、橋からお橋見!?」
- 「ここから見える大井川橋は当社で施工したのですよ」
- 「このように大井川水系には当社施工の橋がいくつも架かっています。今日のメインはここからもっと内陸に架かっているのです」
- 「それなら早速お橋見に行きましょう!」
~ 移動中 ~
- 「さて、見慣れない駅につきましたけど...千頭駅?」
- 「ここに橋があるんですか?」
- 「いえ、ここから更にこちらの電車に乗ります」
- 「それではいざ、大井川鐵道に乗って!」
- 「しゅっぱーつ!」
~ 乗車 ~
- 「空調が無いって聞いてどうしようかと思ったけれど、走っていると窓から風が入ってきて気持ちいいね!」
- 「蓬莱橋の上から見た大井川とは雰囲気が変わったね、どんどん水の色が青くなってる!」
- 「さすが絶景スポットとして取り上げられるだけありますね。さて、実はこれから通るトンネルに、当社施工のものがあるんですよ」
- 「えっそうなんですか?」
- 「お橋見ならぬトンネル見ですね!」
- 「と言っても、走る電車の中からわかるんですか...?」
- 「外に設置されている銘板に書かれているはずです...!あっ!ここですよ!」
- 「あっ!見えた!」
- 「なんだか...普通に読めたね。ひらたトンネル?」
- 「なんだかスピードがゆっくりになっていない?私たちが銘板を見られるようにかな?」
- 「このトンネルは『平田(ひらんだ)トンネル』と言って、1988年に住友建設が施工しました。電車がゆっくり進んでいたのは、トンネル内部に飾られている沿線の写真をよく見てもらうためですよ」
- 「フォトギャラリーになってるんですね。そうやってトンネルを通るあいだも楽しめるように工夫してくれるのは有難いですね」
- 「トンネルも、いろいろな楽しみ方がありそうですね~」
- 「さて、次の駅がいよいよ目的地です」
- 「先ほどとは打って変わって、森の中ですね...」
- 「無人駅だ...」
- 「ここから歩いてすぐですよ」
- 「ねえ、さっき駅で見かけた貼り紙なんだけど...」
- 「元気よくおしゃべりしながら向かいましょう!!!」
- 「熊よけには、ひとの居ることを教える方法があるそうですからね(元気だなあ)」
- 「着きましたよ、ここが今日のお橋見のメイン『新接岨大橋』です」
- 「うわあ!大きい!」
橋の概要
- 名称
- 新接岨大橋
- 位置
- 静岡県榛原郡本川根町(旧)~ 静岡市
- 構造形式
- RC固定アーチ橋
- 橋長
- 215.0m
- 架設工法
- メラン併用張出し架設工法
- 竣工年
- 2000年
- 「というか、開けた場所に来たからわかったけど、すごく山の中!!」
- 「ここは接岨峡といって、新接岨大橋はこの渓谷を挟んだ140mというかなり広い支間が特徴のアーチ橋なんですよ」
- 「ハカセ、こんなところにどうやってアーチ橋を架けるんですか?」
- 「このアーチ橋はメラン材を併用した張出し架設で施工されています。橋台上にある橋脚からPC鋼材で斜めに吊りながら移動作業車を使用してアーチリブを施工します。ある程度のアーチが出来たところで、軽量な鋼部材のメラン材を用いてアーチを閉合して、その後はアーチリブをコンクリートで巻き立てたらアーチリブの完成です。」
- 「これが施工中の写真です。閉合部のメラン材を架設しているところで、左右に見えるアーチリブを吊っているのが斜吊り材です」
- 「こんな山奥ですごい施工方法で作られたのですね。普通にコンクリートを打つことだけでも難しそう」
- 「確かに。コンクリートで打つときは当然、固まってないじゃないですか。アーチリブの斜めのところはコンクリートを打っても流れてしまいそうだけど、どうやって作ってるんですか」
- 「それはですね、アーチの部分をよく見てください。アーチリブの上面に薄っすら線があるのが見えませんか?」
- 「ところどころに線のようなものがあるのがわかりませんか?」
- 「あ、本当だ!」
- 「あの線はアーチリブの上側に型枠を使用した名残りです。打設するときのコンクリートは固まってないので、勾配が大きいアーチリブの施工では上側にも型枠を使って施工しています」
- 「あの線があるところは、上側に型枠を使ってたのですね」
- 「そうです。では実際に、橋を渡ってみましょう」
- 「うわー!いい眺め!」
- 「あっ、この橋、市境でもあるんですね」
- 「この橋は"新"接岨大橋と呼ばれているように、もともと「接岨大橋」があったんです。しかし、下流にダムが出来たことにより、接岨大橋が将来水没する可能性が生じました」
- 「ダムって、さっき電車の中から見えたところだよね」
- 「はい、そして接岨大橋は、当時この静岡市井川地区と本川根町とを結ぶ唯一の道路でもありました」
- 「それは無くしたらダメだ!」
- 「そこで、架け替えと同時に連絡時間の短縮をはかるバイパスルートとして整備されることになったんです」
- 「なるほど、より多くの行き来を見込んでの大きさでもあるんですね」
- 「ところで、元の接岨大橋は本当に沈んでしまったんですか?」
- 「いえ、まだ残っているんですが、橋に向かう道自体が落石の危険があって通行止めになっています」
- 「どちらにせよ、新接岨大橋があって良かったんだ...」
- 「紅葉の絶景スポットだったそうなので、残念ですね」
- 「紅葉と新旧接岨大橋のお橋見、したかった~!」
- 「でもこの橋の上からでも充分絶景だよ!」
- 「確かに、さっき下から見上げたときも緑とアーチ橋がよく映えてたね」
- 「新接岨大橋のかたちは、接岨峡が観光名所であることも考慮されたんですよ」
- 「丈夫さと美しさを兼ね備えたのが新接岨大橋ということですね!」
- 「100年現役の安倍川橋のこと、時代に合わせて進化した橋だと思いましたが、時代に合わせて架け替えられることもまた「進化」ですね!」
- 「そうやって、橋はさまざまなかたちで私たちのより良い暮らしを守っているんですよ」
- 「初めてのお橋見でしたけど、とっても勉強になりました」
- 「私たちも進化していかないと!」
- 「それではそろそろ帰りましょうか」
- 「そういえばこの辺り、温泉もあるんですね」
- 「はい、接岨峡温泉ですね。なんでも"若返りの湯"だとか...」
- 「えっ!早く教えてくださいよ!」
- 「あ~~通りすぎちゃった~...」
- 「(進化するんじゃなかったのかな...)」
- ※今回登場した大井川鐵道井川線は2024年4月現在、鉄道施設点検のため閑蔵駅を含む接岨峡温泉駅~井川駅間の運転を見合わせ、千頭駅~接岨峡温泉駅間での折返し運転を行っております。
運行情報などの詳細は大井川鐵道公式ホームページをご確認ください。
―つづく