"トンネル用アラミド三軸メッシュ工法"を実用化
― 山岳トンネル覆工コンクリートの新しい剥落防止・高品質化工法 ―
■ 概 要
三井住友建設株式会社(東京都中央区佃2-1-6 社長 則久 芳行)は、これまで橋梁やボックスカルバートのコンクリート剥落防止対策として多くの実績を有する"砂付きアラミド三軸メッシュシート"を山岳トンネル覆工コンクリートに適用した"トンネル用アラミド三軸メッシュ工法"を実用化しました。
このたび2車線道路トンネルの実大試験体による実証試験を実施し、山岳トンネル覆工対応のアラミド三軸メッシュ工法が、要求性能を十分に満足することを確認しました。
今後、山岳トンネルにおける効果的なコンクリート剥落防止・高品質化工法として積極的に展開していく方針です。
■ トンネル用アラミド三軸メッシュ工法 とは
トンネル用アラミド三軸メッシュ工法は、型崩れしない"砂付きアラミド三軸メッシュシート"を覆工コンクリートの表面近くに設置することにより、コンクリートの剥落の恐れをなくし、耐久性を向上させる工法です。本工法は特許出願中です。
アラミド三軸メッシュ工法は、SAMM(Sandy Aramid Mesh Method)工法としてNETISに登録(KT-020020)されており、橋梁やコンクリート構造物などで多くの実績を有しています。
■ トンネル用アラミド三軸メッシュ工法 の特徴
(1)耐久性の向上
"砂付きアラミド三軸メッシュシート"はコンクリートの剥落を防止するだけでなく、コンクリート表面のひび割れ幅も制御できるため、覆工コンクリートの耐久性が向上します。(2)コンクリート表面の出来映え
"砂付きアラミド三軸メッシュシート"はコンクリート表面に露出しないため、仕上がりは通常のコンクリート表面と変わりありません。
■ 施 工
(1)施工範囲
砂付きアラミド三軸メッシュシートを、覆工コンクリートのひび割れ・剥落が発生しやすい目地部を挟んで幅約1 m(片側約50cm)、クラウン部120°の範囲に配置するのが効果的です(図-1)。(2)固定方法
砂付きアラミド三軸メッシュシートは、移動式型枠(スライドセントル)をセットした後に作業窓からスキンプレート上に固定できます(写真-1)。コンクリート打設中に移動しないように固定します。(3)固定治具
固定用治具は、脱型時に容易に切断できる形状、強度としています。
![]() 写真-1 アラミドメッシュシートの設置状況 |
![]() 図-1 アラミドメッシュシートの設置範囲 |
■ 実大試験体による実証試験
このたび、SMCコンクリート(栃木県下野市仁良川1700 社長 山田 晴雄)および岐阜工業(岐阜県本巣市十四条114 社長 北川 智秋)本社工場内において、トンネル覆工コンクリートクラウン部の実大型枠を利用したアラミド三軸メッシュ工法の実証試験を実施し、所定の性能を満足すること、適用性・有効性を確認しました。
(1)剥落防止性能
打撃試験を実施し、コンクリートの剥落防止性能を確認しました。砂付きアラミド三軸メッシュシート未設置箇所では大きなコンクリート片が落下したのに対して、アラミドメッシュシート設置箇所では大きなコンクリート片の落下はありませんでした。(2)施工性
標準的な覆工コンクリートの巻厚t =300mm程度の空間において、砂付きアラミド三軸メッシュシートの設置、固定などの施工性を確認しました。
また、アラミドメッシュシートの特徴を活かした固定方法により、コンクリートの打設によるアラミドメッシュシートのねじれやずれが生じないこと、および天端吹上げ口からのコンクリートの流下や圧入に際して、配置したアラミドメッシュシートが打設効率や作業性に悪影響を及ぼさないことを確認しました(写真-2)。(3)コンクリート表面の出来映え
コンクリート表面の出来映えは、砂付きアラミド三軸メッシュシート未設置のコンクリートと同様であり、表面強度も十分であることを確認しました(写真-3)。(4)コンクリート内部切り取り試験
砂付きアラミド三軸メッシュシートを配置したコンクリートの表面部分を切り取り、コンクリート内部を調査しました。所定の位置にアラミドメッシュシートが配置され、機能を発揮していることを確認しました。
写真-2
コンクリーの吹き上げ状況
写真-3
コンクリートの表面
■ 今後の展望
"トンネル用アラミド三軸メッシュ工法"は、トンネルの耐久性、安全性の向上を低コストで可能とする工法です。このたびの実大トンネル試験体を用いた実証試験により、山岳トンネル覆工向けのアラミド三軸メッシュ工法が、要求性能を十分に満足することを確認しました。
近年、トンネル内におけるコンクリートの剥落を防止することのみならず、トンネル本体の耐久性を向上させ、建設コストはもちろん、その維持管理、補修まで含めたライフサイクルコストの低減に繋がる新しい技術が求められていることから、三井住友建設では"トンネル用アラミド三軸メッシュ工法"を、総合評価落札方式発注での技術提案においても積極的に展開していく方針です。
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