アンカーを使用しないPC桁用吊り足場工法を開発
― PC桁橋を対象とした吊り足場システムを完成 ―
三井住友建設株式会社(東京都中央区佃2-1-6 社長 則久 芳行)と、グループ会社であるSMCテック株式会社(千葉県流山市駒木593 社長 井出 覚)は、アンカーを使用せずにPC桁橋に吊り足場を設置・撤去することのできる"PC桁用吊り足場工法(Clip Hanger工法)"を開発しました。本工法をPC上部工補強工事に適用し、効率的な施工性と十分な安全性を確認しました。施工実績は首都高速道路補修工事の2件です。
この工法の開発によって、既設PC桁の維持管理において、PC桁に損傷を与えることなく、橋梁の点検・調査から対策工の設計・施工までの一貫した作業を効率的かつ安全に行うことが可能になりました。今後は工法の普及を図るため、SMCテックを通して製造・レンタルおよび導入支援を行う予定です。
■ 技術開発の背景
高度経済成長期に建設されたコンクリート橋は、供用開始後40~50年を経て老朽化しつつあり、適切な維持・管理が必要とされています。これらのコンクリート橋のなかでもPCT桁形式が最も多く、点検・調査から補修・補強工事を行うために吊り足場を設置する必要があります。従来の吊り足場はPC桁に削孔してアンカーを取付け、これを支持部材として足場材を吊り下げる構造です。PC桁に削孔をする際には、内部に配置されている鉄筋やPC鋼材を傷める可能性があるため、施工前にはRCレーダー等による鉄筋探査が必要でした。慎重に事前調査を行っても、内部鋼材に接触して削孔位置を修正したり、時には内部鋼材を傷つける事例も報告されています。
こうした背景のもと、PC桁に損傷を与えることなく、効率的かつ安全に吊り足場の設置・撤去を行える足場工法が必要とされています。
■ "PC桁用吊り足場工法(Clip Hanger工法)"とは
このたび開発した"PC桁用吊り足場工法(Clip Hanger工法)"は、PC桁を挟み込むように支持金具を取付けて足場材を吊り下げる工法で、PC桁に削孔する必要がありません。このため、足場設置前の鉄筋探査が不要になるとともに、吊り足場の設置・撤去作業が効率的に行えます。
支持金具はPC桁の形状に合わせて調節が可能で、ほとんどのPCT桁に対応できます。また、支持金具は十分な耐荷性を有しているため、従来工法に比べて支持金具の配置間隔を大きくする事ができ施工性が向上します。図-1にPC桁用吊り足場工法(Clip Hanger工法)の概要図を示します。
■ 技術の特徴
- PC桁を挟み込むだけで吊り足場支持金具を簡単に設置できるため、工期短縮が図れます。
- 支持金具用アンカーを使用しないため、鉄筋探査が不要でPC桁を傷めることもありません。
- 吊り足場支持金具の載荷試験により高い耐荷性・剛性を確認しており、安全性が向上します。
- 吊り足場支持金具は複数回の転用が可能で経済性が向上します。
- 吊り足場支持金具の配置箇所が従来工法に比べて半減するため、足場内での作業性が向上します。
図-1 PC桁用吊り足場工法(Clip Hanger工法)概要図
![]() 吊り足場支持金具取付け状況 |
![]() 吊り足場全景 |
写真-1 PC桁用吊り足場工法(Clip Hanger工法)施工状況
撮影協力:首都高速道路株式会社
■ 載荷試験
吊り足場支持金具には、載荷荷重に対して十分な安全性が要求されます。そこで実際に使用する支持金具の設計荷重に対して2.5倍の荷重を載荷して耐荷性能試験を行いました。試験の結果、支持金具は十分な耐荷性能と剛性を有していることが確認されました。
![]() 吊り足場支持金具組立状況 |
![]() 支持金具載荷試験状況 |
写真-2 吊り足場支持金具載荷試験
■ 今後の展開
本工法の確立により、PC桁の維持管理に必要な吊り足場工を効率的かつ安全に施工するが可能になりました。
三井住友建設は、これから増加するPC桁の点検・調査から補修・補強までの一貫した維持管理業務に最適な工法をご提案してまいります。
SMCテックは、PC桁用吊り足場工法(Clip Hanger工法)用支持金具の製造・レンタルと併せて、橋梁の維持管理現場への導入支援事業を展開し、本工法を広く普及させていく予定です。
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