連層耐震壁を利用したタワークレーンのフロアクライミング工法を開発
― 板橋区に建設中の都市型板状集合住宅の工事に初採用 ―
三井住友建設株式会社(東京都中央区佃二丁目1番6号 社長 則久 芳行)は、高層板状集合住宅の施工に有効な、タワークレーンの荷重を連層耐震壁で支持するRC造フロアクライミング工法※1を開発しました。本工法は、従来困難とされていた板状集合住宅でのタワークレーンのフロアクライミングを、施工性、経済性を兼ね備えて実現するもので、株式会社サンケイビルと大和小田急建設株式会社発注による「ルフォン板橋区役所前」(東京都板橋区)の新築工事において初採用し、平成26年2月に上棟いたしました。
※1 特許出願中
図-1 フロアクライミング工法概要図
■ 背景
建替えや再開発などによる市街地型の住宅建設が増えている中、プランや有効率の面から板状集合住宅の優位性がうたわれています。板状集合住宅のように塔状比※2の大きい建物は、地震や風などの揺れに大きな影響を受けるため、高さは14階程度が限度でしたが、様々な技術の導入により更なる高層化が可能となり、それに伴い揚重性能が建築施工の生産性を大きく左右しています。
一方、労務不足などの社会的な状況変化によって、建設工事では、プレキャストコンクリート等の工業化施工を取り入れることが増え、相応規模の揚重機を設置する必要性が高まっているものの、市街地の工事現場では、敷地条件等により走行式や大型定置式揚重機を建物の外部に設置することが難しいのが現状です。また定置式揚重機を建物の内部に設置するフロアクライミング工法を採用する場合、タワークレーンを梁に載せて荷重を受ける方法が一般的ですが、耐震壁が垂直方向に連続している板状集合住宅では、タワークレーンを支持する場所がなく、フロアクライミング工法の採用は困難とされていました。
※2 建物幅(短辺)に対する建物高さの比率。アスペクト比ともいう。
■ 本技術の特徴
- タワークレーンの荷重は支持架台を介して連層耐震壁で支持します。
- 対向する耐震壁に、曲げモーメントを発生させないように構成された支持架台を設置するため、躯体補強は不要です。
- 支持架台は、先行して構築される躯体工事中にタワークレーンで設置できるため、タワークレーンクライミング時の特別な作業がなく、これまでのフロアクライミング工法に比べ作業性が大きく改善されています。
- タワークレーン開口に隣接する住戸の仕上工事は通常の工程通り施工することが可能です。
- 外建てマストクライミング工法と比べ、3割程度の仮設コストが削減できます。
- 都市型板状集合住宅の施工において、本工法を採用することにより、地上構造体のプレキャスト化が可能となり、工期短縮、品質向上が図れます。
![]() 図-2 平面図 |
![]() 図-3 A-A側面図(耐震壁受けの場合) |
■ 技術の詳細(手順)
支持架台の設置からフロアクライミングまでの手順は以下の通りです。
手順 1. 支持架台の先行地組み(製作工場内)
手順 2. 着床階の躯体施工開始前に、支持架台の設置
手順 3. 耐震壁の躯体工事(配筋・型枠・コンクリート打設)
手順 4. 型枠解体後に固定ボルトの締め付け
手順 5. フロアクライミング実施
![]() 写真-1 支持架台先行設置状況 |
![]() 写真-3 支持架台固定状況 |
![]() 写真-2 支持架台設置完了 |
■ 技術の実施例
物件名: ルフォン板橋区役所前
事業者名: 株式会社サンケイビル・大和小田急建設株式会社
設計監理: 株式会社SHOW建築設計事務所、三井住友建設株式会社一級建築士事務所
施工: 三井住友建設株式会社
建設地: 東京都板橋区
敷地面積: 1,524.25㎡
建設概要: RC造19階建住宅棟1棟・126戸 S造タワーパーキング1棟
竣工予定: 2014年9月
![]() 完成予想図 |
![]() タワークレーンのクライミング状況 |
初採用した本物件は、グリッドフレームとよぶアウトフレームと免震の組み合わせにより、板状集合住宅ながら20階~23階程度の高さを可能とする当社独自構法"Sulatto3(フリーノンビーム)"※3を採用しています。グリッドフレームを構成する柱、梁はプレキャストコンクリートとし、1フロア7連戸の中央スパンにタワークレーンを配置し、地上躯体工事を施工いたしました。敷地等の条件により、揚重機を建物外部に設置することが困難で、施工難度の高い工事でしたが、フロアクライミング工法とすることで、クレーンの小型化やクレーンの仮設杭・基礎削減など、施工性、経済性の向上に大きな効果を発揮しました。
※3 構造耐力上バランスのとれた最小限のグリッドフレームを連層耐震壁付ラーメン構造に構築することで、バルコニー側に大梁のない(フリーノンビーム)住空間を実現。さらに免震構造を採用し、超高層を実現した構法(平成26年3月現在19階2棟、21階1棟、22階1棟施工中)。
■ 今後の展開
本技術は、超高層化する板状集合住宅の躯体構築に適しており、当社で展開中の"SuKKiTシリーズ"*4の施工においても大きな効果を発揮します。本技術のさらなる技術開発を進め、汎用性の高い工法として確立し展開してまいります。
※4「SuKKiT(スキット)」とは、すまい(Sumai)快適(Kaiteki)きれい(Kirei)テクノロジー(Technology)をコンセプトに、「開放感」と「自由度」を「合理的」に実現する三井住友建設ブランドの新しい集合住宅設計システム。
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