#26 ときめき橋
ある日の朝、電車で現場へ向かう二人。
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- 「今日は安全パトロールだね」
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- 「そうですね、女性の目線から現場を点検するのも大事なんですって。普段、工事に直接携わらないからこそ新鮮な目線で見て、現場サイドが意識しにくくなっている改善点を見つけることが私たちの役目でもあるんです!」
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- 「現場も、女性が働きやすい環境になってきてるよね! ...で、どこに行くんだっけ?」
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- 「もー、まいまい先輩、三重県亀山市にある新名神高速道路の橋の現場ですよ。開通はしたけど地上の残りの工事をやっているんです」
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- 「そうだった!現場は初めてだから少し不安だけど、頑張ろう!そういえば、名古屋に住んでいるけど、亀山にはまだ行ったことないな~」
名古屋から揺られること1時間...。
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- 「降りる駅、ここで合ってますか...??(どきどき)」
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- 「所長が車で迎えに来てくれてると思うんだけど...あ、あの車かな?」
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- 「お、二人ともいらっしゃい。遠いところからお疲れ様。今日のパトロールお願いしますね!」
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- 「はい!こちらこそよろしくお願いしまーす」
今回のレポーターはこの二人。
作業着に着替え、ヘルメットを着用して現場パトロールがスタート!
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- 「さて、ここからだと橋の全体が見えるよ。車から降りて見てみよう」


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- 「うわー、高っ!3つ並んでるけど、どれが新しく開通した橋なんですか?」
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- 「真ん中の一番大きな橋が 安楽川橋 で、高さが約75mもあるんだ。2019年3月に新四日市JCTから亀山西JCTの区間が開通したことは知ってるかな?」
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- 「はい!開通後は渋滞がすごく減ったとニュースで見ました」
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- 「そうだね。開通後は隣の池山高架橋に対して新池山高架橋と名付けられ、今はもう車がどんどん走っているよ」
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- 「工事中は真横の橋を通行する車に影響しないように、とても苦労をしたんだけど、なんとか無事に開通を迎えることができてほっとしているんだ」


(工事中の様子)
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- 「よし、パトロール終わりましたし、帰りましょうか。所長、ありがとうございました!」
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- 「あ、そうだ。この近くに当社が施工した橋があるから見にいってきたらどうかな?ちょうどハカセも来てるし。ほら、あそこ」
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- 「あ、ハカセ!!どうしてここに?」
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- 「偶然ですね、お二人は安全パトロールですね。私は竣工検査前の書類確認ですよ。打合せも終わってそろそろ帰るところでしたので、一緒に行ってみましょう」
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- 「ぜひ行きたいです! どんな橋なんですか?」
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- 「ここからすぐ近くの亀山サンシャインパーク公園に架かる歩行者専用の橋です。この公園は、亀山パーキングエリアと公園が一体になったハイウェイオアシスなんですよ」
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- 「オアシス!ということは、心と体をいやしてくれそう~」
というわけで、ふたりとハカセは亀山サンシャインパークへお橋見に。
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- 「ここは全体面積が約14.2haもあり、水と緑が織りなす総合公園として地元の人たちに親しまれています」
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- 「へ~、そうなんですね!」
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- 「あ、あそこに見えるのがときめき橋かな?」


橋の概要
- 名称
- ときめき橋
- 位置
- 三重県亀山市(亀山サンシャインパーク内)
- 構造形式
- PC自碇式吊床版アーチ橋
- 橋長
- 68.0m(吊床版支間23.0m)
- 架設方法
- 懸垂架設工法、固定支保工架設工法
- 竣工年
- 2001年

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- 「!?橋がうねうねしてる!平らじゃないけど、大丈夫なんですか?重さで形が変になっているわけじゃないですよね...?」
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- 「大丈夫ですよ。この橋はアーチと吊床版とをあわせた構造で、歩道部分が吊床版になっているから、大きく波打っているんです」
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- 「橋の上に立ってもうねうねしているのがわかります!こういう歩行者専用の橋を見るのは初めてかも!」
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- 「この公園にはバーベキュー場や滑り台などの遊具もあってね、この橋も子供たちの遊び場になっているらしいですよ。だから橋の上でジャンプすると吊り橋みたいに揺れるんですよ。ほら」
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- 「ぎゃ、ぎゃーー。やめてぇぇ」
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- 「ふぅー、急に揺らすからびっくりした。けど、こんなに揺れるとは。子供はここだけでも楽しめそう♪」
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- 「ところでハカセ、アーチと吊床版をあわせた構造とはどういうものですか?」
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- 「橋の下にいって近くで見てましょうか」
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- 「はい!!(揺れないようにそろりそろり...)」


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- 「橋の端部で土に埋まっているところに、斜めのコンクリート部材があるのはわかりますか。これは「斜材」といって、この橋の構造の重要なポイントです」
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- 「これが重要なポイントというのはどうしてですか?」
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- 「アーチ橋は自重や歩行者などの重量をアーチ基部に圧縮力として伝えるので、アーチが外側に開こうとするのを止めるために、強固な地盤や大きな土台が必要になるんです」
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- 「なるほど!でも、もう一つの吊床版橋とはどんな関係があるんですか?」
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- 「吊床版橋 は、橋台間に張り渡したPC鋼材を薄いコンクリート部材で巻き立てて床版とした構造の橋です。吊床版からは両端部に大きな引張力が作用するので、大掛かりなグラウンドアンカーが必要になります。この引張力とアーチ橋の圧縮力をこの斜材で伝達させているんです」
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- 「そうか、それでこの斜材で接続して圧縮力と引張力のバランスをとっているから、橋を支えるための強固な地盤や大きなグラウンドアンカーがいらなくなるんですね!」
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- 「へぇー、それぞれの力をこの斜材で支えあってるんだ!」
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- 「アーチの力強さと吊床版のしなやかさの両方の特徴をもっていて、柔らかな曲線が、湖面上の情景によく調和していますよね。それに、歩道分が薄い床版だけの柔らかい構造になっていて、揺れやすいという特徴があります」

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- 「景観に配慮し、橋としての美しさもあって、しかも公園施設としての遊びの要素も兼ね備えた橋ってことですね。この橋の面白さが分かってきました!」
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- 「けいちゃん!じゃあいつものポーズいくよ!せーのっ(パシャッ!)」

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- 「こうやって話を聞くと、さっきはすごく揺れて怖かったけどぴょんぴょん飛び跳ねても全然大丈夫ですね」
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- 「ハカセの説明を聞いて橋が頑丈なことも分かったし、あそこまで競争しよ!」
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- 「よーし!望むところです!」

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- 「いや~、はしゃいだらお腹がすいちゃった~。お橋見もしたことだし、そろそろ一休みしよう!」
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- 「賛成!この公園のすぐそばにサービスエリアがあるから、買いにいきましょう!ハカセはここでちょっと待っててください!」
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- 「お待たせしました!」

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- 「お、みたらし団子じゃないですか!タレがたっぷりでおいしそうですね」
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- 「(にやり)」
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- 「...!!か、かたい!なんですかこれは?」
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- 「ふふふ、ハカセ、まんまと騙されましたね!実はこれローソクなんですよ。亀山といえば、ろうそくの国内シェアの約半分を占める カメヤマローソク が有名なんです」
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- 「これはすごいですね、焦げまでリアルにつくられています!本当に食べちゃうところでしたよ」


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- 「公園のすぐ近くのパーキングにあるお店には、食べ物シリーズの他にもいろいろな形のローソクがあるよ。どれもすごく忠実に再現されているよね」
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- 「想像していたローソクと違ってお部屋に置いておくだけでインテリアになりそうですね!」
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- 「見てたらますますお腹すいちゃったよ~」
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- 「じゃあ、食事をしながら帰りますか。パトロールの報告書もお願いしますね」
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- 「はーい!!ハカセ、今日はありがとうございました!!」

2019年10月28日 行った場所:ときめき橋
ちょっと飛び跳ね
揺れるドキドキ、ときめき
遊べる橋 GOOD!!!
―つづく