#27 青春橋
-ある日の広報室-
- 「できたーーー!!!」
- 「ええっ?!どうしたんですか?(急に大きい声だすからびっくり...汗)」
- 「見て見て!ついに新しい"会社案内"が完成しちゃったんだよね~♪」
- 「会社案内って、学生さんやお客さまに渡して、会社の事業とか実績を紹介するための冊子ですよね。私も就活のときに読みました!」
- 「そうそう。でも今回はそれだけじゃなくて、当社がものづくりの仕事を通じて実現していることを、"つなぐ"っていうテーマでストーリー風に紹介してるところがポイントなの。会社案内は当社のことを知ってもらって、たくさんの人に好きになってもらうための大切なツールなんだよ」
- 「なるほど!特にこのページ、生い茂る緑と元気よく走る後ろ姿が素敵ですね!これって当社がつくった橋ですよね!こうやって私たちの仕事が皆さんの役に立っていると思うとうれしいな~」
- 「中学校と運動場をつなぐ橋で、青春橋っていうんだよ。この写真を撮影した日は全生徒が参加するマラソン大会があって、そのあとに校舎に向かってみんなが橋を渡っていく姿を撮影したの」
- 「ま、まぶしいーっ!なんですか、このアオハルな写真は!!」
- 「エネルギーいっぱいの走りと応援する様子がほんとに青春で、私も若返った気持ちになったよ~。全員が無事完走できて、頑張ってる姿に感動しちゃった!仕事だったけど、この日はたくさんパワーをもらえて、いい1日だったな~」
- 「う~ん、この橋はまさしく青春真っただ中の子供たちが渡る橋...。思い出の1ページになっているんだなぁ...(しみじみ)。センパイ、私もあの頃の気持ち、取り戻したいです!」
- 「でしょ~そう言うと思った!実は、完成のご報告とお礼もかねて学校の先生と生徒の皆さんに会社案内をお渡しする約束をしているの。せっかくだからすーさんも一緒にいこうよ、ハカセも誘ってあるんだ♪」
- 「さっすが準備万端!橋ガールの出番ですね、レッツゴー!」
というわけで、今回は広報室の2人が初登場。
軽井沢から車で約1時間の群馬県嬬恋村にある青春橋へ向かいます
- 「ハカセー、おはようございます!」
- 「おはようございます。さすが冬の軽井沢、雪が積もっていますね。冷えますから、さぁ早く車に乗って向かいましょう」
- 「ところですーさん、会社案内だけど、数ある当社施工の橋からどうして青春橋が選ばれたか知ってる?」
- 「それはもちろん、中学生と"青春"橋っていう組み合わせがフレッシュだからじゃないんですか?」
- 「えーっ!すーさん、もしかして青春橋と嬬恋中学校のアノ話、知らないの?!」
- 「青春橋ができる前、中学校と運動場は深い谷で分断されていて、運動場に行くのに1.5kmもの山道を迂回しないといけなかったんです。生徒のなかには車いすを使う子もいてね、高低差のある道をみんなで押し上げて行っていたようですよ」
- 「橋ができたおかげでその苦労がなくなったんですね!学校と運動場をつないだだけじゃなくて、人々の想いも"つなぐ"ことができたんだ、ん~感動(涙)。こういうストーリーがあったからこそ、今回の会社案内で紹介しているってことですね!」
- 「そうそう、小さな橋でもそれを利用する人にとってはかけがえのない存在になっているって、すごく嬉しいね。ところでハカセ、特殊な立地だからかなり珍しい構造の橋だって聞いたんですけど本当ですか?」
- 「そうなんです、実際に橋を見ながら説明しますね。もうすぐ着きますよ」
橋の概要
- 名称
- 青春橋
- 位置
- 群馬県嬬恋村
- 構造形式
- 二重張弦桁橋
- 橋長
- 60.1m(支間長57.5m)
- 架設方法
- 懸垂架設工法
- 竣工年
- 2006年
- 「あったあった!これが青春橋ですね!今は枯れ木だけど、会社案内で見たとおり!...って、下をのぞいてみたら谷だ!ひぃ~こわい...ゼッタイ押さないでくださいよ!まじで!ゼッタイ押さないでくださいよ、フリじゃないんで!」
- 「(もしかしてダ〇ョウ倶楽部?...スルーしていいかな)...ハカセ、こんなに深い谷に橋を架けるのって相当大変だったんじゃないですか?」
- 「そうなんです。この場所は急峻なV字谷で、両岸や河川内の使用制限がありました。また車いすの生徒のことを配慮して、バリアフリーの面で緩やかな勾配にする必要もあったんです。そこで、二重張弦桁橋という構造を世界で初めて採用しました」
- 「えっと・・・、にじゅうちょうげん・・・っていったい何ですか?」
- 「まず張弦桁橋というのは、あゆみ橋 のように主桁の下側にPCケーブルを張って主桁を支える構造の橋です」
- 「うーん、今は木々が生い茂っていて見えないですね。橋の下側はどうなっているんだろう?」
- 「これが完成時の写真です。下側に黒色のケーブルがありますが、これがPCケーブルです。その上にV字型の緑色の鋼管があって主桁を支えていますよね。このような橋を張弦桁橋といいます」
- 「なるほど。でも青春橋は"二重"張弦桁橋ですよね、どういうことですか?」
- 「上側の主桁の横に黄色のケーブルがありますよね。黒と黄色の2つのケーブルで二重に支えているので、二重張弦桁橋といわれています」
- 「それで、どうやって橋を架けたんですか?」
- 「はじめは工場で分割してつくった主桁の部材をこのケーブルの上に置いていきます。そうすると主桁の重さによってケーブルがたわみながら引っ張られます。その引張力を橋の端部で支持するために、アンカーブロックとグラウンドアンカーで一時的に固定しておくんです。そして主桁がつながったらその引張力を主桁に移し替えることで、プレストレスとして主桁に圧縮を与えて自立させています」
- 「あ、それって 青雲橋 でも採用されていたような?」
- 「その通り。自碇構造といって、橋だけで自立しているので、橋を支持している地盤の負担が小さい構造です」
- 「ところで、橋の側面に丸い窓みたいなのがたくさんあるのが特徴的ですよね。ここから覗いたらさっきのケーブルが見えますよ」
- 「橋の側面には歩行者が落下しないようにこのような壁があって、これを高欄といいます。一般的に高欄は、橋がつながったあとに設置して自重や歩行者の重量は負担しないのですが、この橋では高欄部分までを主桁にしているんです。丸い窓は、自重を少なくして、風を受ける面積を小さくするためにあけられているんです」
- 「すごい!デザイン性だけじゃなくて軽さも追求しているんですね」
- 「高欄を一体とした剛性の大きい主桁を、黄色と黒色の2つのケーブルで二重に支えているのがこの橋の構造的な特徴です。吊り橋とかと違って、歩行者の重さや風による揺れが小さくなるので、中学生が大勢で走ってもほとんど揺れないと思いますよ」
- 「なるほど~、この急な地形に合っていて、元気な中学生が使う橋としてうってつけというわけですね!じゃあお橋見記念に、恒例の写真撮りましょうよ!ハカセ、シャッターお願いします!」
- 「青春橋を下から支える張弦ケーブルをイメージして...はい、ポーズ!」
- 「あっ、もうすぐ約束の時間だよ!このまま橋を渡って学校に向かおう♪」
- 「すっかりお橋見に夢中になっちゃいました!中学校なんて久しぶりだからわくわくするな~」
- 「ここが学校ですね。下駄箱とか教室とか、なんだか懐かしい気分!」
- 「本当だね。あ、先生と生徒の皆さんいらっしゃったよ。行こう!」
- 「こんにちは~!」
撮影に協力いただいた教頭先生と生徒の皆さんに会社案内を見ていただきました。
橋ガールから青春橋がつくられたエピソードやこの橋の特徴などを紹介中
- 「中学生とは思えないくらいみんなしっかりして礼儀正しい子たちでしたね!出来上がった会社案内も喜んでくれてよかった~」
- 「実は青春橋は、あの田中賞を受賞しているすごい橋だってこととか、学校の卒業生が命名したことを伝えたらみんな驚いてたね!普段の学校生活にすごく溶け込んでいるけど、今回お話ししたことで青春橋のことをもっと好きになってもらえるといいね」
- 「私たちがつくった橋を日常生活で実際に使ってくれる皆さんに話を聞ける機会ってほとんどないですから、今回こうして直接会うことができてすごく貴重でした」
- 「そうですね。私も橋の設計者としてとてもうれしく思いました。これからもたくさんの人が安心してつかえる橋、人々の想いもつなげるような橋をつくっていきたいですね」
- 「そういった当社の想いをこの会社案内でも伝えることができたら、広報としてこれ以上うれしいことはないです!」
- 「生徒の皆さん、明るくてキラキラ輝いていて元気もらっちゃいましたね。なんだか仕事へのやる気もますますわいてきたな~」
- 「皆さんにもらったパワーを糧に、明日からもがんばりましょう!二人とも、おつかれさまでした」
- 「ありがとうございました!」
2020年1月23日 行った場所:青春橋
みんなと青春を運ぶ橋!
素敵!!
―つづく