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  4. #32 保津橋

橋をつくり続ける会社の橋好き女子、
その名も「橋ガール」!
「橋好き女子」が勝手に橋の魅力を紹介しちゃう
プチプロジェクト。
『お橋見』のためなら日本全国、
いや世界の果てまでいってきまーす!

#32 保津橋

~4月、ドキドキの新入社員支店挨拶の日~

ユーミン
「本日から、おおおお大阪支店配属になりました、新入社員のユーミンです!よろしくお願いします。生まれも育ちも関東なので、関西の色々なところに連れてってください!」(緊張で手が震えるぅぅ泣)
ヒヨリン
「よろしくお願いします!私、京都出身やから、京都案内してあげるね~」

~半年後~

ユーミン
「半年前の約束忘れてないですか?京都案内してくれるって言ったのに!も~」
ヒヨリン
「そのことね。忘れるわけないやん。ハカセ人気者やから、予定合わせるの大変やったんよ」
ユーミン
「ハカセがいらっしゃるということは!"お橋見"ですね。わーい!!行きましょ~」

今回の橋ガールは・・・

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~お橋見当日、京都府の亀岡駅にやってきた2人~

ユーミン
「つきましたね~!!ハカセも来てますかね」
ヒヨリン
「(キョロキョロ)あっハカセ~~~~~!お久しぶりです」
ハカセ
「久しぶりだね。ヒヨリンもすっかり先輩になってるね」
ヒヨリン
「そ~~ですかねぇ(照)。今日は新入社員のユーミンを連れてきました。今回は保津橋を案内してもらえるんですよね。よろしくお願いします」

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ハカセ
「はじめまして、ユーミン。今日はよろしくお願いします。では、さっそく行きましょう。亀岡駅からは歩いてすぐですよ」
ユーミン
「あっ、橋が見えてきましたよ。ハカセあれですか」
ハカセ
「そうです。これが保津橋です。手前に見えるのは、有名な保津川下りの船乗り場です」

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橋の概要

名称
保津橋
位置
京都府亀岡市保津町
構造形式
6径間連続PCエクストラドーズド橋
橋長
368m
架設方法
張出し架設工法、固定支保工架設工法
竣工年
2001年

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ハカセ
「ヒヨリン。保津橋はエクストラドーズド橋という構造の橋なのですが、前に橋ガールで一緒にお橋見した斜張橋の万博ゲート橋にどことなく似ていませんか?」
ヒヨリン
「ふふふっ」
ユーミン
「ヒヨリン先輩、なんですかその不敵な笑みは?」
ヒヨリン
「やはりそうきましたね。聞かれると思ってこれまでの橋ガールでちゃんと予習してきましたよ。国内では、小田原ブルーウェイブリッジ日生大橋。海外では、ガ・トゥ・ソ大橋ノンタブリ橋 が紹介されていました。エクストラドーズド橋は桁橋と斜張橋の中間みたいなもので、斜張橋よりも主塔が低いから経済的になるんですよね」
ハカセ
「その通りです。ヒヨリン、素晴らしい成長ぶりです。そしてこの橋では、斜材で主桁重量の一部を支持することで主桁の高さを小さくし、とてもスレンダーな主桁になっています。主塔の高さは10mでエクストラドーズド橋としては低いほうですが、斜材の傾斜が緩くなっていて、周辺のなだらかな山々の景色にとても調和していますよね」
ユーミン
「本当だ。遠くにある山のラインと同じような形になってますね」

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ハカセ
「でもこの橋の特徴はそれだけではないんです」
ユーミン
「ほかにもあるんですか?」
ハカセ
「まず、施工当時には日本一の広幅員の1室箱桁だったことです。一般的にこれくらいの幅員の場合、主桁断面を2室箱桁にするのですが、断面中央の中ウェブには斜材の張力が伝わりにくいので、斜材張力がウェブに効率的に伝わるように1室断面としています。これによって重量が軽くなり、施工もしやすくなります。そして斜材の定着を箱桁に内側にしています。その結果、箱断面の床版支間がとても大きく9.6mもあるんです」
ユーミン
「ちょっと不安な感じがするのですが、大丈夫なんですか?」
ハカセ
「橋を設計するときは道路橋示方書という設計基準に従って設計しますが、床版支間の適用範囲は6.0mまでとなっています。でもこの橋の床版支間は9.6mなので適用できません。そのため、有限要素法解析という当時としては、新しい設計手法を適用して設計されました」

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ヒヨリン
「だからとても軽快でスッキリした感じに見えるんですね」
ハカセ
「2つめの特徴は、3つの橋脚にラーメン構造を採用していることです。主塔がある橋脚では主桁と橋脚が一体化してますよね。この橋では、主塔のある2橋脚だけでなく、隣の橋脚もラーメン構造になっています」

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ヒヨリン
「ふむふむ。形が違うことは分かるんやけど...。ハカセ、それがどうかしたんですか?そもそもラーメン構造って分からないです」
ハカセ
「ラーメン構造とは、橋梁の場合は主桁と橋脚が一体化した構造のことを言います。主桁と橋脚が一体化しているので地震に対して強く、高価なゴム支承を使わないので経済性もよくなります。また、ゴム支承には金属製の部品も使われているので、その維持管理が不要になるメリットがあります。ちなみに、ラーメンという言葉は、ドイツ語で「額縁」を意味するRahmen(ラーメン) からきているそうです」
ユーミン
「ハカセ。そのラーメン構造が地震にも強くて安いのなら全部の橋脚をラーメン構造にしたほうがいいじゃないですか」
ハカセ
「そうなのですが、実際はそうもいかないんです。コンクリート橋は、乾燥収縮や温度変化、地震時の水平力とかで伸縮したり移動したりしますが、主桁を支える橋脚の支持点では、その動きに対応する必要があります。そのため移動量が大きい端部付近ではほとんどの場合ゴム支承が用いられます。また、橋脚高さが低いと地震時の水平力の負担が大きくなるので、ラーメン構造は比較的、橋脚が高い橋に採用されることが多いです」
ユーミン
「え。でもこの橋の橋脚の高さって低いですよね」
ハカセ
「そう見えますよね。実は見えている部分は橋脚の上側だけで、橋脚を支えている基礎は土中の深いところにあるんです。見えてない部分をいれると結構、高さがあります」

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ユーミン
見えていないところにも秘密が隠れてるんですね」
ハカセ
「構造的な特徴が分かってもらえたでしょうか。施工方法でも世界初の方法が使われているんです。まだまだ話したいのでついて来てくださいね」
ヒヨリン
「まだあるんですか!そろそろお腹いっぱいです」
ハカセ
「まあそう言わずに。この橋は張出し架設工法で施工されたのですが、世界で初めて主桁鉄筋を大規模にプレファブ化したんです。通常の張出し架設工法では、移動作業車を使って鉄筋を組み立てていて、保津橋より前に施工された国内にある約1500橋は40年間その方法で施工されてきました」
ユーミン
「プレハブ小屋とかは聞いたことあるんですが、プレファブ化というもの同じようなものなんですか?」
ハカセ
「あらかじめ製作しておくという意味のプレファブリケーション(prefabrication)からきているので、プレファブとも、プレハブとも言ったりします。ユーミンが言っているプレハブ小屋は、工場でつくった小屋を現地に運んできて組み立てる建物ですね。あらかじめ製作しておくという意味では同じです」
ユーミン
「微妙には合ってるんですね。主桁鉄筋のプレファブ化ってどんな方法だったんですか?」
ハカセ
「施工状況の写真を見てもらったほうがいいですね。あらかじめ主桁鉄筋の1ブロック分を丸ごと組み立てておき、それを移動作業車の中に取り込んで、その後、コンクリートを打設するんです。これによって施工サイクルが短縮でき、施工期間を短縮することができました。現地での作業を最小限とするために、継手方法、加工形状を工夫して組み立てる主桁鉄筋の95%をプレファブ化しています。世界初の施工方法でしたので、施工に携われた方々もとても誇らしかったと思います」

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ヒヨリン
「へぇ~!いろいろなことが初挑戦だったんですね。一つの橋に沢山の技術が使われてるんですね」
ユーミン
「20年前につくられたと聞いていたので綺麗で今時なデザインにびっくりしました!」
ハカセ
「橋のことがわかって貰えたところで、せっかくなので橋を渡って対岸に行ってみましょう」

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ユーミン
「一体どんな方が施工されたんでしょうね」
ヒヨリン
「20年前の施工ならまだ会社にいらっしゃるかもね。ハカセはご存知ですか?」
ハカセ
「それはだね。実は二人とも知ってる方で...」
ユーミン
「ハカセ!ヒヨリン先輩!紅葉もみじの前に誰かいますよ。私たちもレッツゴー♪」
ヒヨリン
「マイペースか。...ん?あの後ろ姿なんか見たことあるような気が...」

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さんにん
「んんんん!!??会長!!??」
ヒヨリン
「会長、お疲れ様です。どうしてここにいらっしゃるんですか?」
ハカセ
「いやいやヒヨリン!まさに会長が、この橋を施工したときの現場所長なんだよ!」
会長
「ははは。そうなんだよ。ちょうど京都に用事があって、懐かしくなって保津橋を見に来たんだよ」
ユーミン
「そうなんですね!わぁ~会長にお会いできるなんて私幸運です~~~☆彡」
ハカセ
「どうしてこの紅葉もみじを眺めてたのですか?」
会長
「この紅葉もみじ保津橋の完成記念として植えてもらったんだよ。秋に綺麗に色づく紅葉もみじにしたかったんだけど、一年中色づく紅葉もみじを植えられちゃったから今は色が悪いんだよ」
ヒヨリン
「一年中色づくってことは、周りの桜が緑でも、この紅葉もみじが色づいているってことですね。素敵ですね~初めて見ました」
会長
「そうかね。この紅葉もみじのこと誰も知らないからみんな覚えておいて」
さんにん
「はい!!覚えておきます!!!」
会長
「橋ガールの取材をしてくれてるんだってね。ハカセはちゃんと説明してくれているかな」
ヒヨリン
「はい!色々と教えてもらいました」
会長
「私もちょうど駅のほうに戻るから、一緒にいこうか」

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ヒヨリン
「この斜材についているものは何ですか?」
会長
「LEDライトだよ。Red、Green、Blueの三色のライトだから、白から全て色の表現が出来るんだ。夏はトンボとか、冬はクリスマスとか。季節に合わせて16パターンの光り方が出来たんだよ。21世紀を祝う年越しカウントダウンの時に初めて点灯したのだけど、当時としては新しかったんだよ」
ヒヨリン
「キレイですね。ライトが付いてるとこ見たかったなぁ」

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会長
「今は点灯してないようで残念だけど、またいつかイルミネーションが点灯するといいけどな。あと、歩道を照らすライトを低位置照明にしたのは、イルミネーションがあるからライン照明にしたいという市役所の要望に応えたんだ」
ハカセ
「なるほど、通常はポール照明ですよね。その心遣いのおかげでイルミネーションがより際立ちますね」

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ユーミン
「そんな工夫もあるんですね。会長!歩道の手摺が珍しい形になっているのですが、これも何かあるんですか」
会長
「亀岡は竹が有名だから、たけの節をモチーフにして作ってあるよ」

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会長
「新世紀のカウントダウンでは、21発の花火を打ち上げて、僕の田舎のラーメンを取り寄せて、地元の方と支店の応援を得て、地元の人に500食を振る舞ったんだ」
ユーミン
「年越しラーメンを食べて、イルミネーションと花火を見ながら年を越せたら最高ですね」
ヒヨリン
「そうやな~。"ラーメン橋"やからラーメンを振る舞ったんですか??」
ハカセ
「ヒヨリン面白いね~(笑) さすが関西人。ほらみて保津川下りをしてるよ。修学旅行かな、手振ってみたらどう?」
ふたり
「おーーーい!いってらっしゃ~い」

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ユーミン
「おお!手振り返してくれましたね。私もあの船に乗ってみたーい!」
会長
「ここの名物だよ。保津川下りは、今から400年前の江戸時代の初期に角倉了以が保津川を整備し、木材を嵐山に運ぶことから始まったんだ。せっかくだから保津川下りを体験して帰ったらいいよ」
ふたり
「やったー!!楽しんできます!!(嬉)」
会長
「それじゃあ私は次の予定があるからこの辺で失礼するよ」
ユーミン
「もうお別れですかぁ・・・もっとたくさん会長からお話お聞きしたかったです。まだまだ話足りません~~~(;_;)」
ヒヨリン
「ユーミン駄々こねないの!会長、20年前の一コマにお付き合いさせていただきありがとうございます!」

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会長
「久々にゆっくり保津橋を見ることができてよかったよ。ハカセ、あとは頼んだよ。おっと。その前に恒例のアレ、やらないのかい?」
ヒヨリン
「わお!楽しすぎて忘れていました!会長、見守っててくださいね」
ふたり
「せーのっ!橋ガール!!(パシャリ)」

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2021年10月21日
行った場所:保津橋

 

今年の大晦日は、ラーメン橋で、
 年越しラーメン!!
   人と人を結ぶ橋

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―つづく

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