#38 安倍川橋
- 「あっ、ハカセ~。棚にこんなものがあったんですが、これって何ですか?」
- 「これは、鋼橋の構造について、小学生の子供たち向けの説明で使用した道具ですね」
- 「鋼橋?当社ってコンクリート橋の施工実績は多いですが、鋼橋もあるのですか?」
- 「かなり前ですけどね。しかも100年前・・・」
- 「えええええっ、ひゃっ、ひゃくねん!!!」
- 「そ、そうです(汗)。(大声でビックリしたな~)静岡市にある橋で、ちょうど今、記念のイベントも開催されているみたいなので、お橋見されたらどうですか?」
- 「はい、行ってきま~す!」
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- 「きたちゃ~ん、こっちこっち!」
- 「こんにちは~。今日はよろしくお願いします!」
- 「当社が100年前に施工した鋼橋があると聞いて来たのですが、ホントですか!?」
- 「本当ですよ!当社の前身の一つである"勝呂組"が建設しました。静岡市を流れる安倍川に架かる橋で、これが完成時に作られた絵ハガキです」
(提供:静岡市)
- 「お~!!!」
- 「当時から変わらない姿で、今も静岡市民の生活を支える橋として利用されていて、ちょうど今年で100歳になりました。早速、お橋見に行ってみましょう!」
~ というわけで、今回のレポーターはこの三人です ~
橋の概要
- 名称
- 安倍川橋
- 位置
- 静岡県静岡市
- 構造形式
- 鋼橋(ボーストリング・トラス橋)
- 橋長
- 490.9m
- 竣工年
- 1923年
- 「着きました!あれっ?今日は、ハカセはいないんですか?」
- 「ハカセはコンクリート橋専門ですからね~」
- 「と言うことで、今日は安倍川橋のことを誰よりも知る静岡市役所の堀井ハカセにお願いをしました!もうすぐ来ると思うんだけどな~」
- 「あっ、自転車に乗った人が来ましたよ!」
- 「堀井さ~ん!」
- 「お待たせしましました。きたちゃん、つかちゃん、初めまして」
- 「今日は、宜しくお願いします!」
- 「タカ先輩からお聞きかもしれませんが、この安倍川橋は今年で完成から100年を迎え、様々なイベントをとおして地域の皆さんと盛り上げています」
- 「三角と四角の枠を使った鋼橋の構造を小学生に説明したと聞きました」
- 「はい、安倍川橋の特徴であるボーストリング・トラス橋を理解してもらうために、タカ先輩にも協力してもらって出前講座を行ったんですよ」
- 「ぼーすとりんぐ・とらす?」
- 「トラス橋の構造の名称で、実際に見てもらうと分かりますが、横からの形が弓(ボウ)と弦(ストリング)になっているのが分かりますよね。トラスは三角形を基本単位として構成する橋の構造形式のことで、少ない部材で強い構造になるというメリットがあります」
- 「四角形は力を加えると変形するけど、三角形は加えられる力に耐えるんですよ。実際に模型を押してみた様子を見ると分かるよ」
- 「お~、ホントだ。三角形は押しても動かない!!」
- 「安倍川橋は長さが491mあり、日本最大級で現役のボーストリング・トラス橋として、国の登録有形文化財としても登録されているんです」
- 「橋ができるまでは、どうやって安倍川を渡っていたんですかね? あと、100年前ってことは大正時代ですが、当時これほどの大きい橋って必要だったのかな...」
- 「いい質問ですね。今架かっている安倍川橋は3代目で、その前までは木造の橋で安水橋という名称でした」
(提供:静岡市)
- 「大正8年(1918年)に道路法(旧道路法)が制定され、これに対応するために安倍川橋の架け替え工事が大正11年に始まりました。こちらが完成直後の写真なのですが、今と大きく異なることってわかりますか?」
(提供:静岡市)
- 「う~ん、橋の形は同じに見えるけど...。でも、自転車と人だけで、車が写っていないですね...」
- 「正解です!! 建設当時はほとんど車が通ることはありませんでした。自家用車は戦後の高度成長期に爆発的に増えたのですが、安倍川橋は将来を見据えて車が通れる橋としてつくられたんです」
- 「100年前にそんなことが考えられてたんですね!!」
- 「ちなみに、これだけの量の鉄骨はどこから持ってきたんですか?」
- 「当時の日本は鉄鋼の製造が安定していなくて、安倍川橋では海外製の鋼材が使用されています。あそこ、分かります?イギリスの鋼材メーカーの刻印が刻まれています」
- 「ホントだ~。よく見ると『ENGLAND』って書かれてますよ」
- 「堀井さん、刻印の傍にある丸いでっぱりって何ですか?」
- 「よく見ると、いっぱいあるよ!」
- 「あれはリベットですね。頭部がついた棒状の金属を重ねた部材の孔に差し込んで、頭部が無い側の端部を専用の工具で変形させて頭部を作って接合する方法で、当時は鋼部材を接合する方法でよく使われていました」
- 「作業されていた方の服装がおしゃれですね~」
- 「当時の図面が残っているのですが、英語表示なので、恐らく作業を指導するためにイギリスから専門技師が来日していたのではと思います。作業服も海外の方の影響を受けたのかもですね」
- 「でも、100年間も形を変えずに使われているってすごいよね~」
- 「100年もの間、地元の人々に利用され続けている橋ですが、生活スタイルの変化や車・人の増加に合わせて実は少しずつ手が加えられているんですよ」
- 「先ほどリベットの話をしましたが、交通量の増加に対応するための補強では、リベットではなくボルトが用いられている箇所があり、その部位を確認することができます。また、自動車の増加によって、歩行者や自転車が安心して利用できるように、歩道橋が今から54年前に拡幅するかたちで増設されました」
- 「また、西岸側の宅地開発が進んだことにより人口が増え、安倍川橋を使用する自動車による渋滞が頻繁に発生するようになりました。そこで、道幅を広げて右折レーンを設けるために橋の一部を架け替える工事を32年前に行いました。一番奥の部分が違うのがわかりますか?」
- 「確かにトラスの大きさと幅が違いますね!」
- 「利用する人たちの安全や安心、時代のニーズに合わせて進化させた安倍川橋。これが100年経っても活躍している理由なのですね、スゴイです!!」
- 「堀井さん、今日は有難うございました~」
- 「最後に、夕方からになりますが、ちょうど今、100周年記念イベントとして地元の小学生が製作してくれた竹あかりでライトアップしています。あと全国的にも有名な、安倍川餅のお店が近所にあります。江戸時代から受け継がれる名物なので、是非食べていってください!」
- 「はい!有難うございました!!」
(次の予定がある堀井さんとタカ先輩とはここでお別れ)
(堀井さんお勧めの安倍川餅を目指す二人)
- 「あれっ?」
- 「あれれ~、閉まってるよ~(涙)」
- 「あ~ん、食べたかったな~」
- 「つかちゃん、楽しみは次回に持ち越しましょう!! 元気出して最後に安倍川橋の周りを散策して帰りますか!」
- 「こうして見える景色が100年前と同じって考えると感慨深いよね~」
- 「う、う~ん...」
- 「(安倍川餅ロスのショックが大きいな...)さぁ、元気出して!」
(タカ先輩のオススメで大井川水系のお橋見を翌日に備えて安倍川橋を後にする二人なのでした)
2023年7月19日
行った場所:安倍川橋
「暮らしに寄り添いまだまだ現役!
チョコレート色、白色、緑色...
こまめなオシャレも長寿の秘訣?」
―つづく