日本初のPC橋発破解体
― 旧不動橋撤去工事竣工 ―
三井住友建設(旧住友建設)は岐阜県下呂町において、旧不動橋撤去技術提案検討・評価委員会及び発注者である国土交通省中部地方整備局のご指導のもと、日本で初めてPC橋を発破により解体・撤去する工事を行い、工期を半減させ、解体コストを10%縮減し、かつ安全であることを確認し、このたび工事が竣工しました。
今後は、PC橋の老朽化に伴い更新需要が増大し、旧橋解体需要も増加する と考えられます。解体が必要な橋が、連続構造やラーメン構造の場合、橋梁規 模が大きくなるほど、従来の解体工法では困難になることが予想されます。P C橋の発破解体は、これを解決する簡便で有力な方法と期待されています。
通常、コンクリート構造物の解体工事は、大型機械などを用いてコンクリー トを少しづつ破砕、切断するのが一般的です。PC橋は緊張を加えながら少しずつ構築される場合が多く、このステップを逆に踏みながら解体すれば安全ですが、構造物の成り立ちを理解せずに大型機械で端から解体すると、橋の一部分を壊しただけで、全体構造が不安定な状態になります。これを防ぐためには、 橋全体を仮支柱や仮支保工などで支えた上で解体しなければなりません。大がかりな仮設物が必要になって、工費上昇の要因となります。また、仮設物の組立・解体に長期間の高所作業を必要とし、安全管理上の課題が発生することも 事実です。
■発破解体のメリット
これらの問題を解決すべく行なわれたのが、今回の発破によるPC橋の解体です。発破解体は、発破によって橋のすべてを粉々にするのではなく、橋を倒壊し、地上で大型ブレーカーなどを用いてコンクリートを細かく破砕し搬出す る方法で、安全性、経済性に優れています。不動橋では橋脚の基部及び主桁端部を発破し、上下部工全体を倒壊させました。発破のための準備作業は短期間 で行うことができ、発破自体は安価なものです。従来の解体工法と発破解体工法のどちらの方法も、河川内の築島(ちくとう)上での作業となりますが、発破により解体工期が半減し、築島の河川内設置期間を短縮できました。結果として今回、全体工程が半減し、大がかりな仮設備を必要としないことなどから、 コストを約10%程度縮減することが出来ました。
さらに、コンクリートの破片などの飛散もほとんど発生せず、従来の解体工法に比べ環境面から見ても河川などへの影響が少ないことを確認しました。
■発破解体の留意点
PC橋の発破解体では、発破時の安全確保が重要なポイントとなります。旧 不動橋では、国道、JR線が近接しており、発破時の安全確保が求められました。このために次の様な対策を取りました。
●発破防護
発破時のコンクリート片等の飛散を防ぐために、直接防護と間接防護の二重 の防爆設備を設けました。直接防護は破砕されたコンクリートの塊が飛び散るのを防止する設備で、間接防護は直接防護を突き抜けてくるコンクリート破片 等が重要物の方向へ飛散するのを防止するものです。 発破実施の結果、発破防護は十分に機能し、コンクリートの破片の飛散もほとんど見られず、国道、JR線への飛散物は全く見られませんでした。
●発破振動制御
JR線が近接しており、線路の安全確保のために発破による振動が制限され ていました。発破振動は、一回あたりの発破量に概ね比例します。今回は発破振動を抑えるために、一回あたりの発破量を分割する「段発」と呼ばれる手法 を用いて発破振動の低減を図りました。JR線における発破振動を計測した結 果、規定値を大きく下回ることを確認しました。
以上のように、今回のPC橋の発破解体について効率性、経済性、安全性を 実証できました。
■不動橋解体工事の概要
岐阜県益田郡下呂町三原地区内の一級河川木曽水系に架かる旧不動橋は、一 般国道41号線の一環として、昭和41年に建設されたPC橋です。その後、 平成14年に新不動橋が建設され、老朽化等により撤去することになりました。
本橋は、PC3径間ゲルバー桁橋で、中央径間吊り桁部はポステンT桁、側径間受け桁は支保工施工によるPC箱桁で構成され、端支点にはアップリフトを抑えるための鉛直PC鋼材が配置されています。
施工順序は、まず吊り桁をガーター及び横取り装置を用いて撤去します。次 に、橋脚基部及び主桁端支点部を発破を用いて破壊し、橋脚及び受け桁を河川内の築島盛土上に倒壊させ、解体撤去するものです。橋脚部については転倒方向を制御し、上流部へ正確に倒れる発破方法を採用しています。発破は2回に 分け、1回目のA1側を昨年12月5日に、2回目のA2側は1月16日に実施しました。
工事場所は一級河川飛騨川上空で、鮎の漁場となっている河川です。工事は渇水期施工となりますが、例年5月に鮎の稚魚が放流されるため、これ以前の3月末に河川内の作業を終了することが求められました。また、国道41号線、JR高山本線が近接しており、解体工事は河川の汚濁防止やコンクリート片の飛散防止が求められていました。さらに、発破を用いる場合はJR線の安全確 保のため発破振動が制限されました。結果はこのような状況を克服し、発破解体工事は無事竣工しました。
【工事概要】
発注者 :中部地方整備局 岐阜国道工事事務所
工事名 :平成13年度 41号旧不動橋撤去工事
工事場所:岐阜県益田郡下呂町三原
工 期 :平成14年2月2日~平成15年3月25日
旧不動橋概要:PC3径間ゲルバー桁橋、橋長106.9m(14.9+70.0+22.0m)、全幅員7.7m
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