減衰こまの高速試験(150cm/s)を実施、好成績を実証

三井住友建設株式会社と株式会社免制震ディバイスは、UCSD(米国カリフォルニア大学サンディエゴ校)内の振動台を使用して、同社の保有する粘性減衰装置「減衰こま」(※-1)の限界性能を検証する高速試験(※-2)(150cm/S)を行ない、減衰装置として非常に高い性能を保有していることを実証しました。

「減衰こま」は、従来型減衰装置(オイルダンパー)(※-3)とは異なる機構を持ち、これまで免震および制震装置として建物や鉄塔等の揺れ制御に用いられてきました。
従来、この減衰装置はその潜在能力が高いと考えられながら、それを実証する高速試験設備は少なく、最大速度(装置の変形速度)75cm/sの試験までしか行なわれていませんでした。
しかし実際の地震では、揺れの速さが100cm/sを超える場合が予想されます。 そこで、この装置の認定適用範囲を広げるために、最大速度150cm/sにおける「減衰こま」の性能試験をUCSDの装置を用いて行ないました。
免震用試験体は直径32cm長さ3m、制震用試験体は直径30cm長さ2.6mの「大型実物減衰こま」です。
一方、この試験体の150cm/s高速試験を行なったUCSDの振動台は、水平方向の最大加振力8900kN(㌔ニュートン)、最大速度±180cm/s、最大変位±122cmをつくり出す世界最大級の性能を有しています。

高速試験の結果、「減衰こま」を免震用減衰装置(※-4)として用いる場合は、最大荷重800kN、最大速度±150cm/s、最大変位±73cmの値(減衰性能)、制震用(※-5)として用いる場合は最大荷重2000kN、最大速度±50cm/s、最大変位±10cmの値を確認しました。

また、免震用については最大速度60cm/sから150cm/sまでの7ケースの試験を各々20分間隔で行い、総累積エネルギーが延床面積1万平方㍍を有する建物の地震時総入力エネルギーの約4倍に相当する約2.0×107J(ジュール)に達しましたが、粘性体の温度上昇は僅か30℃程度にとどまりました。同じ条件下で高温状態となる従来型減衰装置と比較し、繰返し使用時に温度上昇が少ないという特性を確認しました。

従来型減衰装置のデータが公表されていませんので、比較は困難ですが、「減衰こま」は非常に高い限界性能を持っていること、また短時間に変形を加えても発熱が少なく、極めて性能が安定していること等が実験によって実証されました。 
減衰装置の「限界性能が高い」ということは、減衰装置が「より大きな力、より大きな揺れ、より速い動きに対応できる」ことを意味し、強い地震や風に対する構造物の揺れ制御が可能になることを示します。限界性能が高い減衰装置が設置された構造物は、限界性能の低い装置を持つものよりも、より高い安全性を保つことができます。

今後、今回の高速試験結果によって得られた高い限界性能から、大地震時における「減衰こま」の有効性を再確認し、免震建物および制震建物への更なる適用を図ります。



(※-1)「減衰こま」は筒型の粘性減衰装置で、外筒と内筒との間に粘性材を封入し、地震や強風時に発生する軸変形をロータリーボールねじを介して内筒の高速回転変形に変換し、外筒との相対速度により粘性減衰力を発生させる減衰装置です。

(※-2)「減衰こま」など、速度により減衰力が変化する粘性ダンパーを超高層建物に用いる場合、120cm/s程度の地震の揺れ速度(安全余裕度レベルの大地 震で実際に発生する可能性が考えられる)の下での性能を確認する必要があ ります。高速域が150cm/s程度あれば大地震でも十分と考えられます。

(※-3)シリンダー内のオイルが狭い孔を通過するときに発生する抵抗力を利用 した減衰装置。水鉄砲や注射器と基本原理は同じ。

(※-4)免震装置として減衰装置を用いる場合、地震時で発生する構造体の大きな・速い・短時間の変形に追従する必要があります。

(※-5)制震装置として減衰装置を用いる場合、風揺れなどで発生する比較的小さな変形の下での性能が対象になりますが、免震用の装置として用いる場合とは異なり、繰り返し・長時間での性能を考慮する必要があります。


減衰こま構造見取り図

減衰こまテスト状況

 

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三井住友建設広報室【お問い合わせフォーム】

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