フローティング基礎工法の設計ガイドラインを共同作成

―合理的で環境負荷の小さいフローティング基礎工法の設計を標準化した設計ガイドラインを共同作成、設計工程を大幅に短縮可能に―

フローティング基礎研究会(幹事会社:三井住友建設)では、合理的で環境負荷の小さい基礎工法であるフローティング基礎に関して、設計の標準化を目指して3年間の共同研究を実施、このたび「フローティング基礎の設計ガイドライン」の共同作成を完了しました。設計時に詳細な検討を必要とするフローティング基礎の設計指針が示されたことにより,大幅な設計期間の短縮,建築主や確認申請機関への迅速な対応が可能になりました。今後、各社においてこのガイドラインを活用して、同工法の適用機会の増大を目指していきます。

 

研究会構成会社

株式会社 青木建設

西松建設 株式会社

株式会社 熊谷組

株式会社 間組

株式会社 錢高組

株式会社 ピーエス三菱

戸田建設 株式会社

三井住友建設 株式会社(幹事会社)

飛島建設 株式会社

りんかい日産建設 株式会社

 

研究指導

関西大学工学部建築学科 伊藤淳志 助教授・工博

 

設計ガイドラインの概要

フローティング基礎は、建物重量と基礎根入れ部分の掘削で排除する土の重量をバランスさせることにより、基礎下地盤の地中応力を増加させることなく、有害な沈下障害等の発生を防ぐことができる基礎形式です。特に軟弱地盤や地下階を有する建物等の条件では、杭基礎等の他の基礎形式に比べて合理的な工法となりうるもので,環境負荷の低減にもつながります。しかしながら、フローティング基礎の設計を対象とした指針類などについては、これまでまとめられたものが無く、個々の設計者の判断にゆだねられることが多い状況でした。設計のよりどころとなるガイドラインの作成を目的として、平成12年4月に建設会社10社による共同研究が開始され、3年余りの活動によって、本文(12章)および参考資料編(6編)合わせて約180頁の冊子がこのたび完成しました。ガイドラインの作成にあたっては、関西大学工学部建築学科伊藤淳志助教授のご指導をいただき、内容の充実度・完成度を高めています。また、ガイドラインに付随して、各種基礎形式とフローティング基礎のコストを比較する「基礎コスト試算ソフト」および、設計計算の中心となる即時沈下量の算定について「沈下量算定ソフト」等のツールを整備しました。ガイドライン冊子およびこれらのソフトウエアーを用いることにより、概略検討から、詳細設計に至る業務の迅速化・省力化が期待されます。

 

本ガイドラインの特長

今回のガイドラインの作成にあたっては、3つの事項に重点をおいた検討が行われました。それぞれの課題に対応する検討ワーキンググループが組織され、掘り下げた検討が行われ、その成果がガイドラインに盛り込まれました。

[1] フローティング基礎の適用可能条件・成立可否の諸条件の明確化

敷地条件、周辺条件、地盤条件、建物条件等による適用性・制約等を整理して、適用可否が迅速に判定できる適用性検討フローを作成しました。併せて、建設コストを考えた、杭基礎等の他工法との経済性の比較検討を諸条件の下で行っています。

[2] 合理的な沈下算定手法の検討

ガイドラインで推奨する格子梁+連成ばねモデル注1)による沈下計算手法について、根入れ効果や山留め壁による拘束効果等について、3次元FEMモデル注2)を用いた精密解との比較を行い、その計算精度が充分であることを検証しました。

[3] 液状化地盤における適用性の検討

液状化の可能性がある地盤では、液状化対策を行うことを原則としますが、液状化を許容した設計法についても適用範囲とする設計検討手法を提案しています。目標性能に応じた経済的な基礎の提案が行えます。

注1)
「連成ばねモデル」 基礎の沈下を求める際に、地盤の変形特性をばねとしてモデル化を行いますが、それぞれの荷重作用点下のばねが、他の位置の荷重作用の影響も受けることを考慮して求めるものが連成ばねです。

注2)
「3次元FEM」 地盤・構造物の応力・変形特性を計算する手法として、解析対象物(地盤・構造物)を小さな解析要素に分割した有限要素法解析(FEM)が用いられます。この手法で特に対象物を立体的にモデル化した精密な解析を3次元FEMと呼びます。

 

今後の展開

研究会構成各社では,本ガイドラインの有効活用により,合理的で環境負荷の小さいフローティング基礎の適用拡大を図るとともに,実施施工を通じてガイドラインの一層の高度化を目指して行く予定です。

 

各社問い合わせ先

(株)青木建設
研究所 建築研究室 日高 徳弘
TEL 029-877-1112
(株)熊谷組
技術研究所 建設技術研究部 地盤基礎研究グループ 渡辺 則雄
TEL 03-3235-8721
(株)錢高組
環境エンジニアリング室 環境エンジニアリング部 岩崎 則夫
TEL 03-5210-2805
戸田建設(株)
技術研究所 構造グループ 基礎構造プロジェクトチーム 伊勢本 昇昭
TEL 03-5785-1521
飛島建設(株)
建築本部 建築設計部 松本 裕二
TEL 03-3288-6543
西松建設(株)
技術研究所 技術研究部 建築技術研究課 武内 義夫
TEL 046-285-7101
(株)間組
建築事業本部 生産技術グループ 八重樫 光
TEL 03-3405-1157
(株)ピーエス三菱
建築本部 建築部 古澤 顯彦
TEL 03-4562-3056
三井住友建設 (株)
技術研究所 土木研究開発部 地盤基礎研究室 三上 博
TEL 04-7140-5201
りんかい日産建設(株)
建築本部 建築技術部 渕川 正四郎
TEL-03-5476-2071

 

添付図表・写真等

フローティング基礎概念説明図

「フローティング基礎」とは、べた基礎による直接基礎形式であるが、有害な沈下障害の原因となる地中応力の増加を防ぐために、建物重量が地下階などを構築する際に掘削排出される土の重量以下となるような基礎構造形式である。

 

沈下量算定ソフトウエア

Microsoft-Excelのワークシート上で可動する

液状化地盤での適用性検討

FEM解析による液状化時の基礎沈下比較検討例


直接基礎


フローティング基礎

 

<お問い合わせ先>

三井住友建設広報室【お問い合わせフォーム】

リリースに記載している情報は発表時のものです。

一覧ページへ