『コンクリート構造物発破解体工法』確立へ鉄筋継ぎ手部の部分発破や防護方法を検証

三井住友建設(東京都新宿区荒木町13-4 社長 友保 宏)は、発破を用いた「コンクリート構造物解体工法」を体系化し1つの技術とするために、平成15年12月18日、社団法人 日本建設機械化協会 施工技術総合研究所(静岡県富士市)で試験発破を実施し、無事成功しました。
一般的に鉄筋が密に入ったコンクリート構造物に爆薬を装填し、これを倒壊させるには多くの装薬量が必要といわれています。今回の試験発破は、より少ない装薬量で効果的に構造物を倒壊させるために、鉄筋コンクリートの「鉄筋重ね継ぎ手部」に着眼して「部分発破」(※)により倒壊できるかや、その際の適切な防護方法をも合わせ検証するために実施したものです。

【背 景】
発破によりコンクリート構造物を解体する工法(発破で構造物を粉々にするのではなく、発破を用いてPC(プレストレストコンクリート)橋などの構造物を地上に倒し、足場のよい状態で解体・除去する方法)は経済的な解体方法として、特に米国で多く用いられています。しかし、我が国では研究を含め事例が少なく、その詳細は知られていません。
一方日本では、耐用年数の経過や荷重増、路線計画の変更などにより、解体・撤去が必要となる橋梁等のコンクリート構造物が増加すると予測されています。発破による解体工法は、第三者への安全性確保が懸念されることなどから国内における実施例は少ないものの、解体工事の経済性、安全性(高所作業の減少)、工期の大幅短縮など多くの利点があり、国内でも今後さらに適用範囲が広がるものと考えられます。
当社は、2002年12月と2003年1月に、日本で初めてPC橋の発破解体工事(発注者:国土交通省)を旧不動橋(岐阜県下呂町)で実施しました(参考資料-1参照)。今回の試験発破はこの実績に基づき、発破解体工法の適用範囲をさらに拡大するためにデータ取得を目的に行ったものです。

【試験発破の内容】
試験発破の調査項目は、「鉄筋重ね継ぎ手部」における「部分発破」の装薬量と位置の把握、防護工の効果、騒音や振動の計測、施工歩掛かりなどです。実際のコンクリート構造物を想定した、幅1.8m、長さ9m、厚さ1mの実物大のRC造柱に240tf(重量トン:力の単位)の
プレストレスを軸力として導入した供試体(荷重状態を再現した供試体)を作成し、これを地面に横に寝かせ、中央部約2.5mを「部分発破」により解体を行いました(写真-1参照)。
※部分発破:構造物の安定上重要な部分のみに装薬し、発破する方法。旧不動橋の解体も部分発破を行った。

■今回の試験発破により次の実証結果が得られました。
(1) 「鉄筋重ね継ぎ手部」に所定の装薬量と装薬位置で「部分発破」を行うことにより、コンクリート構造物内の応力伝達機能が失われ、確実に構造物を倒壊・落下させることができる。
(2) これにより、10m~数10mの高所にある構造物を地盤面で解体作業でき、解体作業時の安全性を確保できる。
(3) 発破箇所を限定することで、発破時におけるコンクリート片の飛散等に対する安全性確保と騒音・振動の抑制が容易になる。
(4) 適切な防護設備により、飛散物の方向と量のコントロールができる。
などです。

【今後の展望】
当社は、トンネル分野で培った発破技術とPC技術を組み合わせた「コンクリート構造物発破解体工法」をリニューアル分野に展開し、老朽化したコンクリート構造物の改修工事における中核技術とするために、さらに基礎的な試験を継続するとともに、今後の工事案件に対し積極的に営業展開していく方針です。

以  上


地上に寝かせた状態のRC造柱に発破をかけた瞬間
試験体は防爆シートで覆われている


写真-1 試験発破の状況


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<お問い合わせ先>

三井住友建設広報室【お問い合わせフォーム】

リリースに記載している情報は発表時のものです。

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