お城の石垣の調査、解析、修復、維持・管理をサポート-『城郭石垣修復トータルシステム』を開発-

三井住友建設株式会社(本社:東京都新宿区、社長:友保 宏)は、城郭石垣の現状調査から、解析修復工事の施工、修復後の維持・管理までをサポートする「城郭石垣修復トータルシステム」を開発しました。

【背 景】
近年、地方都市の活性化、市民の憩いの場創出、歴史遺産保護などの機運が高まりをみせる中、城跡に往時の天守閣や櫓を復元し、これらをシンボルとした公園を整備する構想が全国各地で
具体化しています。それに伴い、城郭の基礎となる石垣修復のニーズも高まり、当社はこれまで駿府城、金沢城など5件の石垣修復工事を行ってきました。「城郭石垣修復トータルシステム」は、こうした施工実績を通じて蓄積された石垣修復のノウハウをもとに開発した技術です。

【システムフロー】
「城郭石垣修復トータルシステム」のフローは、1.調査、2.解析、3.修復、4.維持・管理の4つのステップからなります(図1参照)。

【1.調査段階】
まず、調査段階では、解析に必要な現状の石垣の表面形状、内部構造、背面地盤性状といった情報を、石垣を傷つけることなく調査します。 
・石垣表面形状の計測には「三次元レーザー計測技術」を活用し、石垣表面の三次元データを非接触で迅速に収集します(写真1、2参照)。このデータを瞬時に処理して、任意の位置における断面図や石垣表面の等高線図(図2~3参照)を自動作成し、リアルタイムに石垣のはらみ箇所を把握します。
・石垣内部の構造調査にはレーダー探査技術を活用し、石垣の控え長さやその背後に裏込め材として配置されている栗石層の厚さを非破壊で把握します。
・また、石垣背面地盤性状の調査にはレイリー波探査技術を活用し、地盤の硬さ、埋設物や空洞の有無などの性状を非破壊で把握します。

【2.解析段階】
解析段階では、調査段階で入手したデータをもとに解析モデルを作成し、「個別要素法(DEM ※-1)」を用いて石垣の安定解析を行います(図4参照)。この解析手法は当社が独自に確立して既に実用化しているもので、(1)不連続な粒状要素を扱うため、要素の離散、回転を表現でき、石垣石や裏込め栗石の挙動を表現するのに適している、(2)時刻歴の各要素の変位、速度、接触力等を視覚的に把握できる、(3)崩壊に至る大変形までの解析が可能である、(4)静的解析だけでなく動的解析も可能である、といった数々の特徴があります。これらの調査・解析結果をもとに現状の石垣の健全性を判定し、修復の必要性を判断します。

【3.修復段階】
修復の施工段階では「二次元デジタル写真計測技術」を活用し、石垣現況図の作成や出来形管理等の業務のIT化を図りました。
施工前の石垣現況図の作成は、従来、現地測量結果と写真をもとに手作業で行っていましたが、本システムによりデジタル写真計測データを処理するだけで作成可能になりました(写真1、2図5、6参照)。また、この現況図に各施工段階の写真データを合成し、画面上でリアルタイムに出来形確認を行うことも可能になりました。こうした施工管理業務のIT化により、従来に比べ作業の省力化が図れるほか、迅速かつ精度の高い出来形管理が可能となりました。

【4.維持・管理段階】
維持・管理段階では、調査段階と同様の三次元レーザー計測を定期的に実施し、データを比較して石垣の三次元的な動きを非接触で迅速に把握します。従来の測量方法では、ある「点」の動きしかわかりませんでしたが、本システムでは石垣面全体の動きがリアルタイムに把握でき、迅速で高精度な動態観測が可能となりました。

【システム開発の効果】
当社が修復施工を行った金沢城において、レーザー計測およびデジタル写真計測による石垣の試験計測を行い、システムの有効性を下記のように確認しました。

■時間短縮
・幅70m程度の石垣の場合、従来の方法では10m毎の断面図作成に約4日を要し、等高線図作成は不可能であったのに対し、三次元レーザー計測を活用した本システムでは、約3時間で計測から等高線図、任意断面図の出力までを行うことができます。
・また、1,400㎡の石垣の測量から立面図作成まで、従来の方法では約21日を要するのに対し、本システムでは二次元デジタル写真計測を活用して約7日で行うことができます。
・さらに、700㎡におよぶ修復後の石垣の測量から出来形確認まで、従来の方法では約2日要するのに対し、本システムでは二次元デジタル写真計測を活用して約2時間で行うことができます。

■費用低減
調査費用は、上記の調査段階、修復段階における計測・作図作業のいずれも、従来の方法に比べ10~20%程度費用が低減されます。

■精度
1測点の計測誤差は、三次元レーザー計測の場合3~4mm、また、二次元デジタル写真計測の場合3~4mm(計測距離10m)で、いずれもノンプリズム型トータルステーション(※-2)とほぼ同等の精度を得ています。

【今後の展望】
当社は今後、全国各地で増えると予想される城郭復元案件を対象に、本システムを積極的に提案し営業展開を行うとともに、石垣修復工事に本システムを活用し、工期短縮とコスト削減を図る方針です。

※-1:個別要素法
個別要素法(DEM)とは、解析対象の構造体を円形要素または円の集合体にモデル化し、時々刻々の移動・回転を解析する手法です。要素同士が不連続であるため、要素の回転や要素同士の離散が可能で、崩壊に至る大変形まで解析が可能です。個別要素法では、石垣を構成する石垣石や栗石をあるがままの形状でモデル化できるため、石垣の挙動を解析するのに適しています。

※-2:ノンプリズム型トータルステーション
トータルステーションは、測定ポイントにレーザを照射し、反射して戻ってくるまでの時間を測定してポイントまでの距離を測る器械で、距離を測定する方法として最も一般的です。ノンプリズム型は、測定ポイントにプリズム(トータルステーション専用の反射ミラー)をターゲットとして設置せずに測距する器械です。

※本件へのお問い合わせは下記にお願いいたします。


図1 城郭石垣修復トータルシステムフロー

写真1 レーザー計測状況

写真2 レーザー計測状況

図2 石垣等高線

図3 石垣等高線

図4 石垣解析モデル例

図5 石垣立面図

図6 石垣立面図

 

<お問い合わせ先>

三井住友建設広報室【お問い合わせフォーム】

リリースに記載している情報は発表時のものです。

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