コンクリートで補剛した蝶型鋼板を用いるバタフライウェブ橋

― 世界初の複合橋技術を実用化 ―

三井住友建設株式会社(本社:東京都新宿区、社長:友保 宏)は、蝶型鋼板とコンクリートを組みあわせて橋桁部分を構成する、世界初の複合橋技術「バタフライウェブ橋」の実用化に目処をつけました。

◆背 景

道路整備の拡充を図る上で、橋梁建設費のコストダウンが一つの大きな課題となっています。PC橋梁分野では主桁の軽量化を目的に、波形鋼板や鋼トラス材をウェブ(上床版と下床版をつなぐ部分)に用いる複合化が進んでいますが、これら複合橋梁は、鋼製部材の製作が複雑であったり、現場溶接を要するなど、作業の簡素化に課題を抱えていました。
当社はこれらを解決するため、鋼板の加工を極力低減しながら、かつ、施工現場で鋼板の溶接が発生しない鋼コンクリート複合部材「バタフライウェブ」を考案し、耐荷力試験を実施してこれを用いる橋梁技術を可能にしました。

バタフライウェブ橋イメージ図


◆実験検証内容

バタフライウェブの要素モデルを作成し、せん断耐荷力試験を行いました。下図のような供試体に水平力を加え、得られた測定値と解析結果を比較したところ、蝶型の鋼板に斜材コンクリートを加えることにより:
① せん断耐荷力が2倍近くに増加すること、
② その耐荷力が解析値とほぼ同値であること
が明らかになりました。
この結果、バタフライウェブの挙動は解析により予測可能となり、設計が可能となりました。


◆バタフライウェブの概要および特徴

1) 鋼板の圧縮域をコンクリートで補剛する構造

バタフライウェブは、図のように蝶型に切断した平板鋼板を、斜め一方向にコンクリートで補剛するものです。蝶型の鋼板をウェブに用いると、ダブルワーレントラス (※)と同様に、外力が圧縮力と引張り力に分解されて伝わります。バタフライウェブでは、圧縮力を受ける部分にスタッド(コンクリート接合用アンカー)を設け、コンクリートと一体化して補剛します。この結果、鋼板とコンクリートの合成部材が形成されて、鋼板の面外変形(鋼板が波打つように変形すること)が抑制されると共に、せん断耐力が高まります。

2) 現場作業及び鋼板の加工が容易

蝶型鋼板と上床版および下床版コンクリートとの接合は、鋼板の上・下端に設けられた孔に鉄筋を差し込み、コンクリートを打設して行います。波形鋼板をウェブに用いる場合と同じ簡便な接合方法を利用します。
また、バタフライウェブは互いに離れた状態で配置されるので、波形鋼板をウェブに用いる場合に行われる溶接作業が不要になり、現場作業が簡略化されます。
一方、鋼板の加工は、切断、孔開け、およびスタッドの溶接のみとなり、非常に簡単な工場加工で済みます。
また、バタフライウェブを用いて主桁をプレキャスト部材化することや、鋼板に代わってウェブにプレキャストコンクリートを使用することも可能です。
このように、鋼板の加工や現場作業が非常に単純化・簡略化されるので、将来のコストダウンが期待されます。

3) 主桁重量の軽量化

バタフライウェブは、コンクリートウェブの20%程度の重量になるため、主桁の全体重量が10~20%程度軽量化できます。


◆バタフライウェブ今後の展開

当社は、詳細な設計方法を含めた設計技術を完成させると共にバタフライウェブ橋を今までの施工技術に応用して、橋梁建設費のコストダウンに貢献したいと考えています。

(※)ダブルワーレントラス
ワーレントラスを二重にした形のトラス。例えば図のような外力に対しては斜材が圧縮と引っ張りを受け持って抵抗します。

 

<お問い合わせ先>

三井住友建設広報室【お問い合わせフォーム】

リリースに記載している情報は発表時のものです。

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