GPS土工管理システムを用いた大規模造成工事が完成

― 第二東名高速道路静岡サービスエリア建設工事 ―

三井住友建設株式会社(本社:東京都新宿区、社長:友保 宏)は、日本道路公団と共同研究で開発した「GPSを利用した土工管理システム(盛土締固め管理システム)」を用いて、約240万立方㍍の土工事をほぼ完成しました。当工事を通じて同システムは改善され、信頼性・機能性の向上と共に、作業の安全性向上および締固め品質の確保に極めて有効であることを確認しました。

<GPSを用いた土工管理システム採用の背景>

第二東名高速道路の静岡サービスエリア建設工事(小瀬戸工事)では、大規模な造成工事をスピーディーにかつ経済的に行うために、大型重機を用いた厚層締固めなどの工法が採用されました。このため、工事の迅速化や一層毎の厚い盛土(当工事では従来の倍の60センチ)に対応する新たな締固め管理技術が必要となりました。

具体的には、盛土締固めに用いる振動ローラーにGPSを搭載し、リアルタイムで締固め箇所・転圧回数・転圧層厚などを把握できる盛土の締固め管理システムが、品質管理手法として認められたものです。
この技術は、品質管理の合理化を推進する道路公団との共同研究のもと、当社が開発したシステムに対し施工試験を各種行い、道路公団の求める技術基準を満たしていることを検証の上、今回の工事に当初から全面的に導入されました。

実施工を通じて得られた知見・改善事項など
このシステムは夏季、冬季を通じ大きなトラブルもなく順調に稼働しました。実際のシステム運用を通じ、品質管理の迅速化・省力化、安全性、さらにシステムの耐久性・操作性を次のように確認しました。

<品質管理の迅速化、省力化>

当システムは、報告の合理化および管理基準の明確化を目的として平成14年4月
より導入された日本道路公団の新帳票出力形式に対応しており、転圧管理の報告書作成にかかわる省力化が一段と向上しました。

<作業の安全性・品質確保>

作業の安全や品質向上を次のように確認しました。

◆安 全: 従来の品質管理手法(RI式水分密度計による密度測定等)は、日々重機の転圧作業エリアにおいて計測員が長時間の測定作業を行う必要がありますが、GPSを用いる当システムでは、転圧作業エリアに人員が立ち入る必要が全く無く、作業安全面で極めて優れた方法であることを確認しました。

◆品 質: 工事期間中の平成15年8月に静岡県内で観測史上最大の集中豪雨に見舞われ、周辺各地で斜面崩壊等の被害が生じましたが、本工事区間で造成中の盛土には全く被害が発生すること無く、当工法によって十分な締固め品質が確保されていたことが裏付けられました。

<システムの耐久性・操作性の向上>

約2年5カ月の長期運用を通じ、現場でさまざまな改善に取組み;
① 夏季炎天下の高温環境における機器の熱対策
② 過酷な振動下に置かれる機材の防振を考慮した設置法
③ 電子機器の防塵対策
④ システムの安定化・データ記憶媒体の強化
などの面でシステムの完成度を高めました。
工事最盛期には転圧機械2台が同時運転となり、平成15年2月から2号機が稼働を開始しました。2号機のシステムは1号機の運用で得られたノウハウを生かし、操作性やメンテナンス面でさらに機能的で軽快なものとなりました。

以上のように、今回採用された新技術の優れた効果が広く検証されました。

<今後の展開>

当社は、この「盛土締固め管理システム」と、別途開発済みのGPSによる三次元測量とCAD図面データの解析により出来形断面図作成、土量計算等を行う「道路土工管理システム」を統合し、IT活用土工管理システム「SEAMS-it」(Sumitomo-Mitsui Earthwork Management System using Information Technology)としてトータルな施工管理システムを構築し、各種の大規模造成工事への適用を図り、一層の品質向上とコストダウンを目指します。

【小瀬戸工事概要】
工事名称  :第二東名高速道路小瀬戸工事
発注者   :日本道路公団静岡建設局静岡工事事務所
工事区   :静岡西工事区 (工事長 中尾 祐)
施工会社  :三井住友建設(株)・(株)吉田組JV
施工場所  :静岡県静岡市小瀬戸地区
工期    :平成12年6月~平成16年9月
主な工事内容:高規格道路本線及びサービスエリア造成工事
切・盛土工 約240万m3、施工延長 1330m


写真-1 現場状況(1) 2003年6月撮影(盛土工事最盛期)


写真-2 現場状況(2) 2004年2月撮影(ほぼ完成)


写真-3 現場状況(3) 2004年2月撮影(ほぼ完成)

参考資料

【盛土締固管理システムの概要】
盛土締固め管理システムは、GPS受信機を搭載した盛土の転圧重機の走行位置を、正確に捕捉することにより、走行状況、転圧回数をリアルタイムに把握し、高い鉛直精度から盛土の層厚を算出して、盛土の締固め状況を面の情報として使用者に提供するシステムです。本システムは、図―1に示すように基準局、移動局及び管理局から成り立っており、RTK―GPS測位方式の機器を使用して、平面精度20㎜、鉛直精度20㎜が確保できます。転圧重機の走行軌跡、転圧回数がリアルタイムに転圧重機内モニター画面に表示され、同時に管理室モニターで同じ内容を確認できます。
三井住友建設が開発したシステムの特徴としては、あらかじめ現場の設計平面計画線や、原地形の等高線などの情報をCADデータファイルとしてシステムに入力しておけば、これらの情報が運転席モニター画面に同時に表示されるため、現在の重機走行位置がカーナビゲーション等と同様に直視的に確認できる機能を有しています。

図-1 盛土締固め管理システム概要

図-1 盛土締固め管理システム概要 【日常の管理の流れ】
日常の作業の流れとしては以下の手順の通りで、きわめて省力的に施工管理とその結果の報告書類作成が行えます。
①毎朝転圧作業の開始前に、初期設定情報の入ったメモリーカードを重機パソコンに挿入し、システムを稼働させます。
②転圧の状況はリアルタイムに画面に表示されると同時に、施工記録データとしてメモリーカードに保存されます。転圧回数の不足箇所が画面で認められた場合には、その部分の追加転圧を実施します。なお、システムには振動ローラーの加振機が作動していない状態で走行しても転圧と見なさない機能が追加されております。
③一日の作業終了後に施工記録が保存されたメモリーカードを回収し、事務所に持ち帰り各種の管理帳票(図―2参照)を必要に応じて出力します。なお平成14年4月からは、日本道路公団の帳票類の簡素化に伴い、より効率的な施工管理と管理基準の明確化を図るため、新しい盛土管理表(帳票)(図―3参照)を本現場から初めて導入しました。

【道路土工管理システム概要】
本現場に導入された「道路土工管理システム」は、土工管理の各段階において出来型測量を行い、その測量データとCAD図面データをパソコンで解析することで、工事の進捗状況を示す出来形横断図の作成、土量計算などを短時間に行うことが可能な、三井住友建設が独自に開発したシステムです。測量はGPSを利用した三次元測量を用います。
システムの特徴としては、任意点の測量で、指定位置の断面図が作成できるため、測量作業の大幅な省力化が可能となることや、土質の違いによる土量の変化が正確に把握できるので、土量計算の精度が高められるなどの利点が挙げられます。


図-4 出来型断面図出力例

 

<お問い合わせ先>

三井住友建設広報室【お問い合わせフォーム】

リリースに記載している情報は発表時のものです。

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