『削孔検層システム』を開発し、トンネルの合理的施工を実現

― 東九州自動車道津久見トンネル工事に本格導入 ―

三井住友建設株式会社(本社:東京都新宿区 社長:友保 宏)は、ドリルジャンボに搭載した油圧削岩機による削孔時の油圧データから、トンネル切羽前方に加えてトンネル外周部も含めたトンネル周辺地山性状を推定する新しい『削孔検層システム』を開発し、日本道路公団東九州自動車道津久見トンネル工事(延長1085m)に本格的に導入し、システムの実用性と信頼性を実証しました。

【背 景】

近年情報化施工技術の発展はめざましく、山岳トンネル施工現場においても各種情報機器が導入され、成果を上げつつあります。その一環として、油圧削岩機の作動状況から地質性状を推定する削孔検層装置が開発され、一部は市販に供されています。

NATMトンネル(※)では、地山性状を的確に判断して設計・施工にフィードバックすることが重要です。このために日常的に各種計測・切羽観察が実施されており、施工管理に利用されています。また切羽前方の地山性状を確認するために弾性波探査や先進ボーリングなどによって切羽前方探査を行うことがあり、前述の削孔検層装置も切羽前方探査に利用されています。

いっぽうNATMトンネルの施工では、油圧削岩機はロックボルト孔や発破孔の削孔に日常的に利用されており、これらの削孔データを利用することができればトンネル周辺の地山性状をトータルに評価し、設計・施工にフィードバックすることが可能となります。

そのためには、あらゆる削孔データを用いて切羽前方のみならずトンネル周辺地山も含めた地山性状の評価が可能な『削孔検層システム』の開発が必要となりました。

【削孔検層システムの概要・特長】

今回開発した『削孔検層システム』は、数多くの削孔データを効率的に処理するために可能な限り自動化を進めています。
油圧削岩機の打撃圧・回転圧・フィード圧・フィード長をドリルジャンボに搭載したデータロガー(データ蓄積解析装置)で記録します。記録開始/停止のタイミングはドリルジャンボ搭載油圧モータのオン/オフに連動し、作業員の操作なしで自動的にデータが記録されます。記録されたデータはドリルジャンボに搭載した無線LANアクセスポイントから、トンネル坑内に構築した無線LAN網を通じて現場事務所のデータサーバーへ転送されます。現場事務所では生データから必要部分を切り出し、削孔データベースへ登録します。(図-1)

ロックボルト孔、発破孔の削孔データはトンネル周辺地山の地山性状や壁面近傍のゆるみ領域を三次元的に評価するために用いられるほか、トンネル軸方向に整理することによって縦断方向の地山変化を把握することができます。また切羽前方探査を行なった場合これら既施工区間の削孔データと比較することによって切羽前方地山の性状を定量的に評価することが可能となります。
地山評価指標としては、岩盤の硬軟の指標である削孔エネルギーと亀裂の発達度合いを表すトルク抵抗を用い、多角的に地山性状を評価できます。

【津久見トンネルへの導入事例】

この削孔検層システムを、津久見トンネル工事に導入し、トンネル全線を対象に地山評価を実施しました。実工事における運用を通じ、システムの実用性と信頼性を次のように実証しました。

  • 1日15分程度の作業で膨大な削孔データを処理することができました。
  • ロックボルト孔削孔時の削孔エネルギーが、切羽評価点ならびに施工パターンと非常に良い対応を示しました。
  • 切羽前方探査時とロックボルト孔削孔時の削孔エネルギーが良い対応を示しました。また実際の切羽地質を適切に表現でき、支保パターン変更のための地山性状予測が可能であることがわかりました。

津久見トンネル工事概要
工事名称:東九州自動車道津久見トンネル工事
発注者 :日本道路公団九州支社
施工者 :三井住友建設(株)・松尾建設(株)JV
施工場所:大分県津久見市大字下青江~大字津久見
延  長:1085m
工  期:平成14年8月~平成17年5月
地  質:秩父帯小園層の砂岩・粘板岩・チャート・石灰岩

【今後の展開】

さまざまな地質に対して有効性を検証し、実績を積み重ねて信頼性の向上に努めるとともに、基礎地盤等の山岳トンネル以外の分野へも適用を図る予定です。

(※)NATMトンネル:
NATM(New Austrian Tunneling Method)ロックボルト、吹付けコンクリート等の支保工によりトンネルの周辺地山が本来有する支持力を積極的に活用して、トンネルを掘っていく工法。

 

<お問い合わせ先>

三井住友建設広報室【お問い合わせフォーム】

リリースに記載している情報は発表時のものです。


図-1 削孔検層システム概念図


長孔削孔による切羽前方探査の状況


周辺地山の評価(削孔エネルギーの三次元分布)


切羽前方探査に基づく支保パターン変更

一覧ページへ