低コスト・短工期のアンダーパス構築工法「リングアンダーパス工法」を開発

― リングシールドの技術を地下立体交差工事に適用 ―

近年、大都市部を中心として、道路交差点や鉄道横断部の交通渋滞解消を目的に、様々な地下立体交差が検討されています。この中には、延長100mを超える大規模なアンダーパスや、曲線施工が必要なもの、高水圧下で密閉型での掘削が必要なものなど、従来の施工法では困難な工事が含まれています。

リングシールド工法研究会〈五洋建設(株)、(株)錢高組、東急建設(株)、日本国土開発(株)、不動建設(株)、三井住友建設(株)、住友金属工業(株)、三菱重工業(株)、旭化成ジオテック(株) 〉は、外殻先行型シールド工法であるリングシールド工法の技術を応用して、鉄道や道路の地下立体交差を非開削で施工する「リングアンダーパス工法」を開発しました。

本工法によると、交差部周辺環境への影響を軽微なものに抑える他、従来工法に比べ、低コスト、短工期で、アンダーパスを効率的に構築することが可能となります。

【工法概要】
本工法は、L字形状の1台の掘進機を作業坑が矩形構築物の四隅にくるように配置し、発進立坑と到達立坑間を往復しながら、順次躯体を構築します(施工手順図参照)。さらに、外郭部の躯体構築が完了したら、内部土砂を掘削してアンダーパスを完成します。本工法の掘進機は、泥水式または土圧式の密閉型を基本としており、セグメントが中空となっている作業坑部とその他の一般部とで構成されます(掘進機構造図参照)。シールド掘進された残土の搬出や、セグメントの搬入は、作業坑部を通して行われます。また、一般部のセグメントは、作業坑から一般部に押し出しながら組み立てられます。

【工法の特長】
1. 急速施工:従来工法と比べて、工種が少なく、大規模なアンダーパスの急速施工が可能です。
2. 経済的:掘進機は、全断面掘削タイプに比べて小型なうえ、転用できます。また、補助工法を軽減できるため、経済性に優れます。
3. 環境負荷の低減:覆工部だけをシールド掘進するため、建設汚泥を低減できます。内部地山は普通土として取り扱うことができます。
4. 地山の安定:密閉型であるうえ、シールド掘削断面が小さく、地山が安定しやすい。このため、低土被りの場合でも、補助工法を軽減できます。
5. 任意形状:作業坑部と一般部を組み合わせることで、矩形だけでなく、躯体にふくらみを持たせるなど、構造的に有利な様々な任意形状が可能です。


【リングアンダーパス工法イメージ図】


【リングアンダーパス工法掘進機概要図】


【リングアンダーパス工法 施工手順図】

【工期・工費】

従来工法と比較して、以下となりました。
工費:15%程度のコストダウン
工期:40%程度の工期短縮
(検討条件) 構造物断面;外寸 19m×7.5m(2連ボックス)
施工延長:100m

【今後の展望】

本工法は、前述の通り大規模なアンダーパス工事に対し、様々な優位性が期待できるため、リングシールド工法研究会の各社では、関係事業者に積極的に技術提案していく考えです。

 

<お問い合わせ先>

三井住友建設広報室【お問い合わせフォーム】

リリースに記載している情報は発表時のものです。

参考【リングシールド工法の概要】

リングシールド工法は「リングシールド工法研究会」として平成4年から開発を開始、平成5年~7年にかけて各種性能確認実験※を実施し、その開発を完了しています。
その特徴は「外殻先行掘削」によって、(1)任意の大断面施工、(2)建設汚泥の低減、(3)トンネル周辺地盤の安定確保、経済性を実現したところにあります。
※これまでに実施した主な性能確認試験および解析
1. マシンテール部を再現した事物大セグメント組立試験
2. 本体およびセグメント継手曲げ試験
3. リング継手せん断試験
4. 土層を用いた模型掘削実験
5. X線可視化実験(本工法での周辺地盤影響低減の検証)
6. DADS(Dynamic Analysis & Design System)によるシールド機の3次元動力学解析

一覧ページへ