パイルド・ラフト基礎工法の設計技術を確立し、設計マニュアルを作成

パイルド・ラフト基礎工法共同研究会(安藤建設株式会社:幹事会社、西松建設株式会社、株式会社間組、三井住友建設株式会社)は、建物の沈下量算出プログラムの整備や構造実験の実施により合理的な基礎工法「パイルド・ラフト基礎工法」の設計技術を確立し、設計マニュアルを作成いたしました。特に本工法を用いた場合の水平力(地震力を想定)に対する挙動や杭頭接合部の影響については、金沢大学工学部松本樹典教授との共同研究によって、実験および解析による詳細な検討を行いました。
今後は研究会構成会社が本マニュアルを活用してパイルド・ラフト基礎工法の展開を図っていく方針です。

■背景

従来の建物基礎は、浅い強固な地盤(支持層)に直接支持させる直接基礎か、深い支持層の杭先端支持力と、中間層の杭周面摩擦力で支持させる杭基礎で設計されています。
直接基礎は杭が無いため基礎工事費は安くなりますが、一般的に建物の不同沈下を避けるために建物重量に対して支持力に余裕のある地盤が必要なため、利用範囲が限定されます。
杭基礎は利用範囲が広い反面、軟弱な地盤が深くまで存在する場合は、非常に長い杭が必要となるため、基礎工事費が高く、環境への影響が大きくなります。
パイルド・ラフト基礎工法は、ラフトと杭すなわち直接基礎と杭基礎の両者を用いることで、基礎工事費のコストダウン、環境負荷の低減を可能にする合理的な工法です。

■設計ツール

この工法では、ラフト部と杭部が地盤を介して影響し合うこと(相互作用)を考慮して沈下量を予測し、両者の支持力を最適に発揮させる設計が要求されます。
沈下量は、ラフト部と杭部の荷重の分担率に大きく影響され、またこの分担率は杭の仕様(杭径と長さ)と配置で変化するため、基礎設計の最適化には杭仕様と配置をパラメータとした解析が必要になります。
このような相互作用を考慮した鉛直荷重-沈下量関係を解析的に効率よく求めるプログラムとして、「PRAS+」(Piled Raft Analysis for Settlement)を作成しました。また、沈下量に加え水平力(地震力を想定)のラフト部・杭部における相互作用を考慮した変形と応力が算出できる「PRAB(金沢大学工学部土木建設工学科松本研究室作成)」(Piled Raft Analysis with Batter piles)を導入・整備し、検討段階に応じてプログラムを選択することで、短時間での最適な設計を可能にしました。

■構造実験

この工法では、水平力(地震力を想定)に対する抵抗機構においてもラフトと杭が影響しあいます。そのため設計にあたっては、支持力と同様に水平力がラフトと杭で分担される割合を求め、それぞれが負担する水平力に応じて耐震設計を行いますが、杭の負担を軽減するため、杭頭接合部の固定度を変化させることにも配慮する必要があります。
パイルド・ラフト基礎における杭頭固定度の違いが水平力に対する抵抗機構に与える影響を解明するため、金沢大学工学部土木建設工学科松本樹典教授指導のもと実験を実施しました。「杭頭剛接合」、「固定度をゆるめた接合(2ケース)」および「ピン接合」の4種類の接合方法で水平載荷実験を行い、その影響を把握しました。

■設計マニュアル

杭頭固定度を考慮したパイルド・ラフト基礎工法の抵抗機構の把握と、精度の高い沈下量や水平変位量が求まる解析プログラムの整備により、最適な基礎設計を短時間で行うことが可能になりました。これらをまとめて、パイルド・ラフト基礎工法の設計マニュアルを作成しました。
モデル建物での試算では、パイルド・ラフト基礎工法の基礎工事費は杭工法に比べて約20%低減されました。
本研究会構成各社は、今後この設計マニュアルを活用し、合理的で安全なパイルド・ラフト基礎工法を展開してまいります。

 

<お問い合わせ先>

三井住友建設広報室【お問い合わせフォーム】

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【図および写真】


各種基礎工法の概要図


模型杭の設置状況


載荷試験状況

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