設計基準強度150N/mm2の『超高強度コンクリート』材料性能評価を取得
三井住友建設(株)(東京都新宿区西新宿7-5-25 社長 宮田博之)は、東京エスオーシー(株)(東京都港区港南5-8-28 社長 高田信哉)ならびに住友大阪セメント(株)(東京都千代田区六番町6-28 社長 小田切康幸)と3社共同で開発した『超高強度コンクリート』(設計基準強度100N/mm2以上150 N/mm2以下、5N/mm2刻みの11段階の領域)の材料性能評価(性能評価番号GBRC-建評-05-06A―179)を、1月17日(財)日本建築総合試験所において取得しました。また、高強度コンクリートで問題とされる自己収縮を低減するために、膨張材を混入した超高強度コンクリート(設計基準強度100N/mm2以上145N/mm2以下、5N/mm2刻みの10段階)の材料性能評価を同時に取得しています。
これまでに、三井住友建設(株)と東京エスオーシー(株)は共同で設計基準強度33N/mm2から120N/mm2までの高強度コンクリートの材料性能評価を取得しています。(表-1参照)。今回の評価結果(表-2参照)を併せると、33N/mm2から150N/mm2までの高強度コンクリートを製造し、物件を限定することなく様々な建築物に使用することが可能になりました。また、今回の材料性能評価では、セメントと膨張材の生産者である住友大阪セメント(株)が加わることにより、使用する低熱ポルトランドセメントと膨張材についてより一層の品質安定性が保証されます。
新たに材料性能評価を取得した超高強度コンクリートは、水結合材比が極めて小さいため粘性が大きい傾向にありますが、スランプフローを75cmと大きくすることにより、高い流動性を確保し、施工性に優れたフレッシュ性状を付与しております。また、超高強度コンクリートで問題となる耐火性についても有機樹脂粉末を添加することにより爆裂低減を図っています。
今回の材料性能評価を受けるにあたり、通年使用を可能とするため、実際の構造物を模した試験体を春期、夏期、及び冬期に作製し、それぞれの試験体から取り出したコンクリートの試験を行ない、実強度180N/mm2 を確認の上、設計基準強度150N/mm2 を申請しました。
平均養生温度が低く強度発現の遅れが懸念される冬期施工については、型枠に簡易的な断熱を施すことにより設計基準強度150N/mm2を充分にクリアすることが可能であることを確認しています。
一方、超高強度コンクリートでは練混ぜ時間が長くなり、夏期にはコンクリート温度の上限値である35℃の規定を遵守できない可能性があることから、コンクリート温度40℃までの性状を確認し、上限温度は40℃までを適用範囲としています。さらに、実際の施工現場において高強度鉄筋を配置した実物大柱の施工性についても確認しています。
これら一連の試験結果に基づき、当社独自の管理手法を提案し、この管理手法の妥当性についても審査され、技術評価を取得いたしました。
■『超高強度コンクリート』の概要・特徴
今回材料性能評価を取得した超高強度コンクリートは、管理方法を工夫し、高度化することにより実現しました。
1) 結合材として、低熱ポルトランドセメント(L)とシリカフューム(SF)、さらに一部では膨張材(E)を使用しますが、すべてJIS規格適合品であり他に特殊な材料を用いません。
2) 水結合材比を14.0%(L+SF)ないし13.0%(L+SF+E)まで小さくしたコンクリートの製造技術を確立しました。
3) シリカフュームは新たに開発した分散剤を用いて予めスラリー(水溶液)を製造し、そのスラリーの濃度管理に独自の管理手法を確立しました。
4) 骨材の表面水の自動連続測定など、材料受入れから出荷まで一貫した製造管理システムを確立しました。
5) 圧縮強度の変動を小さくするため、コンクリートの単位水量を高精度で測定し、品質の安定を図ります。
6) 製造時期、使用条件などを考慮した施工管理・強度管理システムを構築し、構造体コンクリートの品質保証システムを確立しました。
7) 今回取得した材料性能評価には、コンクリートを東京エスオーシー(株)芝浦工場での練混ぜ開始から150分以内に運搬を終了する、という条件がありますが、東京都心部のほぼ全域で使用することが可能です。また、コンクリート温度は40℃までを適用範囲としており、夏期施工にも無理なく対応が可能です。
表-1 既評価における結合材種類と設計基準強度との組み合わせ
表-2 本評価における結合材種類と設計基準強度との組み合わせ
L+SF+E:低熱ポルトランドセメント+シリカフューム+膨張材
■超高強度コンクリートが創り出す世界
あらゆる分野で、材料の性能向上はその利用領域を拡大します。コンクリートの強度(圧縮強度)向上は、構造物で力が集中する部分に利用すると大きな効力を発揮し、新しい空間を生み出します。今回評価を受けた150N/mm2の『超高強度コンクリート』は、一般に使用されているコンクリートの5倍を超える圧縮強度を持っています。このため:
1) 下層階の柱の断面寸法を通常の建物と同程度に抑えた、「200m超級の鉄筋コンクリート造建物」の実現が視野に入る
2) 「PC(プレストレストコンクリート)」と組み合わせると、大スパン構造多層建物の柱の断面増大を抑えることが可能になる
3) 超高強度コンクリートを使用した「大スパン構造」と「免震」を組み合わせると、優れた免震性能を持ちながら平面計画に無理が生じない免震建物を実現します
4) 橋梁など土木構造物への応用が可能
<お問い合わせ先>
リリースに記載している情報は発表時のものです。
写真-1 東京エスオーシー芝浦工場(東京都港区)から三井住友建設㈱技術研究所(千葉県流山市)まで生コン車で運搬、模擬柱試験体の製作状況 |
写真-2 簡易断熱型枠への超高強度コンクリートの打込み状況 (流動性・施工性に優れ、ほぼ水平にコンクリートが流れている) |
写真-3 実際の現場にて、実際の建物と同様に鉄筋を配置した実大柱の施工性確認実験状況 (コンクリートが固まった後、試験体を切断して内部の充填状況および圧縮強度を確認) |