震災後の復旧性に優れた新しい複合橋脚「P&PH橋脚」の開発

三井住友建設(株)(東京都新宿区西新宿7-5-25、社長 五十嵐 久也)は、震災後の復旧性に優れた新しいプレストレストコンクリート・鋼複合橋脚を開発しました。この新しい橋脚はP&PH橋脚(Precast & Prestressed Hybrid Pier)と呼ばれるもので、震災後の残留変位を可能な限りゼロにし、復旧性を重視するという設計思想を取り入れています。これは、従来のRC橋脚で行われている損傷を許容して靱性を重視した設計思想と異なり、予想最大損失率(PML: Probable Maximum Loss)を最小にして橋脚の資産価値を高めるものです。

■概要

P&PH橋脚は、橋脚を高さ方向に分割したプレキャスト部材と、中空断面の橋脚内部に配置した外ケーブルを組み合わせた構造です。プレキャストコンクリート部材は主鉄筋と内部型枠を兼ねた鋼殻と合成され、プレキャスト同士は鋼殻をメタルタッチで接合して、つなぎ材で連結しています。プレキャスト化によって高品質、高耐久性のコンクリートとなり、急速施工が可能となります。

■従来技術との比較

従来のRC橋脚では、大規模地震時にかぶりコンクリートの剥落やコンクリート内部の主鉄筋の座屈が想定されるため、震災後には比較的大がかりな補修や補強が必要となります。橋梁などの重要構造物では、震災後に速やかに通行を再開させる復旧性が求められますが、従来のRC橋脚では通行再開までに時間を要することが懸念されます。これに対してP&PH橋脚では、外ケーブルを配置して残留変位を抑えるとともに、震災時の損傷をつなぎ材およびプレキャストのつなぎ部分近傍に限定されるため、大規模地震後にはつなぎ材を取り替えることで震災後の早期復旧が可能となります。従って橋脚の早期再使用、再利用の面で優れています。

■施工性について

施工に際しては、プレキャスト部材の重量を抑えることで大がかりな荷役設備が不要となることと鋼殻に現場溶接が不要となることから施工性に優れています。プレキャスト部材を用いているために架設時には急速施工が可能となり、高さ15m程度の橋脚を2日で架設完了させることができます。都市内高架橋など上下部構造の急速施工が求められる場合にも有利となります。

■実証及び今後の展開

当社では技術研究所において1/3の縮小モデルによる正負交番載荷試験を実施し、P&PH橋脚が優れた耐震性、復旧性を有すること、さらには損傷後につなぎ材を取替えて再度行った載荷試験を通して再利用が可能となることを確認しています。
なお本構造については、独立行政法人土木研究所と共同研究を現在進めており、実用化へ向けて設計規準の整備などを進めています。

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