『トンネル覆工巻き厚管理システム』を開発

― 3次元レーザースキャナをトンネルの施工管理に適用 ―

三井住友建設(東京都新宿区西新宿七丁目5番25号 社長 五十嵐 久也)は、トンネル工事において、トンネル形状の3次元レーザー計測により得た掘削形状データから、覆工巻き厚の過不足判定や打設コンクリート量算定を行うことが可能な「トンネル覆工巻き厚管理システム」を開発しました。本システムは、国土交通省近畿地方整備局発注の「一般国道8号敦賀バイパス鳩原トンネル工事」において、施工全線に亘る覆工巻き厚管理に採用され、その有用性を確認することができました。

【背 景】

トンネル施工において、覆工コンクリートの巻き厚を精度よく管理することは、品質確保の点から非常に重要です。現状のトンネルの施工管理方法は、「土木工事施工管理基準及び規格値」(国土交通省)や「トンネル施工管理要領」(日本道路公団)等によって規定されていますが、覆工コンクリートの巻き厚については、5~10mごとに1断面当たり数箇所を計測することとなっています。
主たる工法である発破掘削では断面形状が一様にはならないことから、この方法では計測位置によっては巻き厚が異なってしまう恐れがありました。
そこで当社は、3次元で形状を捉えることが可能なレーザースキャナを用いた「トンネル覆工巻き厚管理システム」を新たに開発・実用化しました。従来の計測手法では困難だった覆工前のトンネル形状を3次元連続形状計測によりデータ化(図化)し、覆工コンクリートの巻き厚を高い精度で評価・判定することが可能となりました。

【システムの概要】

本システムは、短時間で360°の形状計測が可能な3次元レーザースキャナを用いてトンネル壁面を計測し、そのデータを可視化するものです。高密度で取得した3次元連続データを任意の視点から表示するほか、任意区間の巻き厚の平面展開コンター図、断面図および一覧表を表示・出力することができます。

1. 計測方法
3次元レーザー計測は、トンネル中心に設置したレーザースキャナから壁面にレーザー光を照射しながら高速かつ細密に走査させることにより、壁面の3次元点データを非接触で迅速に取得する計測技術です(写真1)。レーザー光が壁面とスキャナの間を往復する時間の計測値から距離を計算し、これとレーザー光の方向の計測値から3次元座標を計算します。

2. 計測データの表示・出力方法
1.の計測データを設計図(断面図)と重ね合わせることにより、巻き厚を判定します。次いで、今回新たに開発した解析システムで処理することで、任意位置での巻き厚断面図や平面展開コンター図を作成することができ、巻き厚不足等の異状箇所を、覆工施工前に迅速かつ視覚的に把握することが可能です(図1、図2)。
本システムは、従来からの管理手法である
(1)覆工型わく設置位置計測調書(図3)に加えて、断面11箇所の巻き厚データを任意の間隔で表示する
(2)一覧表(図4)、および3次元レーザー計測により取得した内空形状データを解析処理することで作成される
(3)巻き厚コンター図(図5)から構成されます。
これらの帳票により、用途に合わせた出力が可能になります。
従来の巻き厚管理では、セントル(コンクリート型枠台車)にある検査窓を開けて、壁面との距離から11箇所の巻き厚を計測していました。このため、2次元の断面から過不足を判定しましたが、本システムにより非接触で広範囲の巻き厚を計測することが可能となりました。

【システムの特長】

(1) 高速で3次元形状を把握することが可能です。
(2) 暗所においても精度良く形状計測が可能です。
(3) 連続的な立体として形状を捉えるため、覆工巻き厚の不足箇所の把握が容易です。
(4) 計測結果を平面展開コンター図、断面図および一覧表で表示でき、視覚的な覆工巻き厚管理が可能です。
(5) 詳細な3次元内空形状データから打設コンクリート量を施工前に算出することで、高精度な数量管理と経済的な施工が可能です。

【システムの活用例】

1. 長期的維持・管理面への活用
本システムにより作成した各帳票に加えて、さらに定期的な3次元レーザー計測の実施により、トンネル変位の経時変化を把握することも可能です。
従来のトータルステーションによる計測では、あらかじめ設定した特定の測点の動きのみの観測に限定されましたが、3次元レーザー計測を実施することでトンネル全体の動きを把握することができ、変形発生箇所の範囲の特定と長期監視が可能となります。

2. 解析への活用
変形発生箇所について解析・検討の必要が生じた場合には、3次元計測データをそのまま解析モデルとして使用することが可能です。トンネル変形の経時データを比較することで、全体の詳細な変形量を把握することが可能であり、変形量から応力を算定し、今後の変形量を推定することも可能です。

【今後の展開】

当社は、今後、全国の山岳トンネル工事を対象に、本システムを積極的に提案し、品質のさらなる向上に貢献してまいりたいと考えています。

以  上 

 

<お問い合わせ先>

三井住友建設広報室【お問い合わせフォーム】

リリースに記載している情報は発表時のものです。

 

〔添付図・写真〕


写真1 レーザー計測状況

写真2 レーザー計測の流れ

図3 トンネル壁面の3次元形状データ

図3 覆工型わく設置位置計測調書


図4 一覧表

070401_05.png
図5 巻き厚コンター図(右は50m区間をまとめたコンター図)

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