『ICタグ車両運行管理システム』を開発

― わが国で初めて高速車両の通過検知に適用 ―

三井住友建設株式会社(東京都新宿区西新宿7-5-25 社長 五十嵐 久也)は、ICタグを用いて高速道路トンネル内でのダンプトラックなどの車両検知を行い、車両の接近を知らせるなどの運行管理を行う「ICタグ車両運行管理システム」を開発し、東日本高速道路株式会社の上信越自動車道さみずトンネル工事で導入しました。ICタグを用いて高速車両の通過検知を行うシステムは、わが国では初めての適用となります。

【背景】

上信越自動車道さみずトンネル工事では、供用中の高速道路本線を利用してトンネル掘削土を搬出するという特殊条件下で工事を行っており、工事車両用に仮設入口、出口を設置して車両の運行を行っています。
この仮設出口の手前には長大トンネルがあること、また一般車両が出口を誤ることのないようにすることから、ダンプカーの後方にペースカー※1)を配し、適正な車両間隔を確保するとともに、仮設出口における適正な誘導を行うべく誘導員を配置することとなっていました。
当社としては、逐次変化する車両位置を誘導員が確認可能となることで、さらなる安全性の向上が図れると想定されることから、リアルタイムで車両位置を把握するシステムの導入を検討しました。
従来、タクシーなど業務車両の運行管理システムにはGPS(全地球測位システム)を用いたシステムが汎用的に用いられていますが、GPS衛星からの電波が届かない長大なトンネル内では、システムの利用が難しく、車両の位置を誘導員へ送信する手段がありません。そこで、ICタグを利用した車両検知とトンネル内に設置したLANによって、誘導員にトンネル内での車両運行状況を知らせる運行管理システムを新たに開発することとしました。

【システム概要】

ICタグには無電池型(パッシブ型)と電池内蔵型(アクティブ型)とがありますが、本システムではリーダーからの検知距離が長いアクティブ型を採用しました※2)。電池内蔵型ICタグを工事用車両の運転席に装着し、車両番号を識別する情報を載せた電波を常時一定間隔で発信します(図1)。トンネル内の路側には受信装置としてアンテナ・リーダーを設置し、ICタグを装着した工事用車両がアンテナ設置部を通過するときに、電波を検知して車両番号を識別します。検知した情報は有線及び無線LANを介して工事用仮設出口ガードマンボックスのパソコンに伝送され、モニター画面によって工事用車両の接近情報を確認することができます(図2)。

【基礎実験・実証実験】

システムの構築にあたっては、ICタグを搭載した車両を時速40kmで走行させてリーダーで検知する基礎実験、さらに時速80kmで走行して検知する実証実験を実施し、本システムの有効性を確認しました。

【導入状況と効果】

本システムは平成18年5月から運用を開始し、現在順調に稼動しており、ダンプトラック12台にICタグを装着して運用しています。冬期を除き19年末まで運用の予定です。導入効果としては次の項目が上げられます。
(1) ダンプトラックの接近状況がリアルタイムにわかるため、誘導員は余裕をもって準備し、的確な誘導ができます。
(2) ダンプトラック及びペースカーの位置情報が把握でき、緊急時に状況に応じた誘導ができます。
(3) 車両の追加・変更等は電池式のICタグを車両に取り付けるだけなので、現場で容易に行えます。

【まとめ・今後の展望】

本システムを導入することで車両誘導の安全性が大きく高まりました。今後は、同様の工事への適用を図るとともに、工事現場内で手軽に運用できる汎用的な運行管理システムへ展開していく予定です。

※1) ペースカー
ダンプトラックの後方を走行し、ダンプトラックと後続する一般車両の間隔を十分にとるようにして、一般車両が誤って仮設出口に進入しないよう誘導する車両です。

※2) ICタグ
本システムで使用したICタグは314.5473MHz(微弱電波)でIDを送信するタイプであり、電源はコイン型リチウムイオン電池を使用しています。リーダーからの最大検知距離は20m程度です。

 

<お問い合わせ先>

三井住友建設広報室【お問い合わせフォーム】

リリースに記載している情報は発表時のものです。

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