「側壁盛替え工法による開削トンネルの構築技術」を開発

― 開削トンネル工事におけるコスト縮減と施工性の向上を実現 ―

阪神高速道路株式会社(大阪府大阪市中央区久太郎町4-1-3 社長 木下博夫)と三井住友建設株式会社(東京都新宿区西新宿7-5-25 社長 五十嵐久也)は、開削トンネルの構築方法として、「側壁盛替え工法による開削トンネルの構築技術」を共同開発しました。側壁盛替え工法は、従来採用されてきた内梁盛替え工法や切梁残置切断工法に代わる開削トンネルの構築方法であり、開削トンネル工事におけるコスト縮減・工期短縮・安全性の向上などが期待できる工法です。側壁盛替え工法の適用に当たり、躯体の設計手法としてコンクリートのクリープ特性を考慮した詳細な解析方法を導入することにより、側壁盛替え工法の実用化が可能となりました。本技術は、既に阪神高速道路株式会社発注の道路トンネル工事に適用しており、この新たな解析方法の妥当性ならびにコスト縮減効果や工期短縮効果を確認しています。

【背 景】

開削トンネル工事は仮設土留め工と本体構造物の構築が主たる工事でありますが、その中でも技術面・経済面において仮設土留め工の重要性は大きいため、仮設工も含めた合理的な開削トンネルの構築技術の開発が望まれています。

従来、開削トンネルの構築方法としては、(1)内梁盛替え工法や (2)切梁残置切断工法が多く採用されてきましたが、いずれも工費・工期の増大や品質の低下が発生する等、幾つかの問題点を有しておりました(図-1)。今回、これらの問題点を解決することを目的として、「側壁盛替え工法による開削トンネルの構築技術」の開発を行いました。


図-1 従来工法説明図

【技術の概要】

側壁盛替え工法は、切梁支保工が負担している反力を施工途中の片持ち梁状態の側壁で受け替えながら、切梁支保工を撤去して躯体の構築を行う方法です(図-2)。したがって、この工法の適用に当たっては、側壁盛替え時に発生する構造物の施工時応力に対する取扱いが非常に重要となります。

「側壁盛替え工法による開削トンネルの構築技術」では、この施工時応力を合理的に本体構造物の設計に考慮するために、"逐次的分離-クリープ応力緩和法"という概念を取り入れています。これは、側壁盛替え時に発生する施工時応力が構造物構築過程に伴うクリープ変形によって緩和する量を評価し、緩和後の残留応力を逐次的分離計算法によって本体構造物の設計に考慮する新たな設計法であります(図-3)。


図-2 側壁盛替え工法の施工手順例


図-3 逐次的分離-クリープ応力緩和法概念図

【技術の適用効果】

開削トンネル工事に本技術を適用することにより、以下の効果が期待できます。

(1)経済性の向上
従来、多く採用されてきた内梁盛替え工法と比較して、内梁の設置・撤去に要するコスト縮減および工期短縮が図れます。

(2)安全性および施工性の向上
内梁を設置する必要がないため、狭所・高所での重架設作業が無くなり、安全性の向上が図れます。また、躯体内部の作業スペースが広く確保され、本体構築作業の施工性の向上も図れます(写真-1)。

(3)品質の向上
切梁残置切断工法と比較して、側壁内に既設切梁を残置しないため、残置部におけるコンクリートのひび割れや漏水の発生が無く、品質の向上が図れます。


写真-1 施工状況写真

【今後の展開】

本技術は、開削トンネル工事におけるコスト縮減・工期短縮・安全性の向上を図る目的で開発したものです。しかしながら、開削トンネルと類似した施工手順で構築する地下構造物(換気所施設・地下駐車場施設等)についても適用可能であると考えられるため、今後はこれらの地下構造物に対しても本技術の適用を図っていく予定です。

 

<お問い合わせ先>

三井住友建設広報室【お問い合わせフォーム】

リリースに記載している情報は発表時のものです。

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